3.言い方に関する問題

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(正)(許)(△)(誤)のしるしの基準

(正)

規範的、標準的、一般的な形   国語表記の本則

(許)

現代仮名遣い・送り仮名の付け方など、国語表記の許容

(△)

やや一般的でない形  やや適切でない形  

(誤)

表記・用法上の間違い

 

(き)

(104)(正)ぎごちなくて /(誤)ぎごちがなくて

(誤)彼の手つきはどうもぎごちがなくて見ていられない。

(コメント:「ぎごちない」(「ぎこちない」とも)は、「まだ慣れていないために、動作・表現などが滑らかでない。ぎくしゃくしている」の意を表す形容詞である。冒頭例のように「ぎごちがなくて」と「が」を挟(はさ)んで言うのは誤りである。「ぎごちなくて見ていられない」が正しい。)

 

(105)(正)(きじ)も鳴かずば撃たれまい /(誤)雉も飛ばずば撃たれまい

(誤)彼、余計なことを言ったばかりにすっかり彼女に愛想尽(あいそづ)かしをされてしまって…。雉も飛ばずば撃たれまいに、ちょっと軽率(けいそつ)だったな。

(コメント:「雉も鳴かずば撃たれまい」(「雉」は「雉子」、「撃たれまい」は「打たれまい」とも書く)は、「(甲高〈かんだか〉い声で鳴いたばかりに、雉はその居場所を知られ、撃たれてしまった。鳴かなければ、そんな目に遭わずにすんだものを、の意から)無用の発言をしなければ、災いを招かずにすむことのたとえ」をいう。「雉が鳴く」には「人がものを言う」意が掛けられている。冒頭例のように「雉も飛ばずば…」とは言わない。なお、「雉」は常用漢字でない。)

 

(106)(正)旗幟(きし)を鮮明(せんめい)にする /(△)旗色(はたいろ)を鮮明にする

(△)開発を重視するか、自然保護を第一に考えるか、市民たちは旗色を鮮明にして激論をくり返した。

(コメント:本来、「旗幟を鮮明にして」が正しい。「旗幟」は「合戦などで敵と味方を区別するために立てたはたとのぼり、旗じるし」の意。「旗幟を鮮明にする」は、「ある物事に対する自分の主義・主張・態度などを、表立ってはっきりと示す」ことをいう。一方、「旗色」は「(戦場で、旗の翻(ひるがえ)るようすから戦況を判断したことから)戦争や試合などの勝敗の成り行き。形勢」の意。多く、「味方の旗色が悪い」「相手の旗色をうかがう」などと使われる。しかし、国語辞典の中には、「旗色(はたいろ。きしょく)を鮮明にする」を掲げるものもあり、冒頭例も誤りとは言えない。なお、「幟」は常用漢字でない。)

 

(107)(正)きずな(絆)を強める /(△)きずなを深める

(△)家業の思わしくいかなくなったことが、かえって家族のきずなを深める結果をもたらした。

(コメント:「きずな(絆)」は、「(馬・犬・鷹(たか)などの動物をつなぎとめる綱(つな)の意から)家族・同僚・友人などの結び付きを離れがたくつなぎとめているもの。ほだし」の意。「綱」に縁のある言い回し「きずなを強める」がおさまりのよい表現と言える。他に、「きずなを強くする(太くする。切る)」「きずなが強い(太い。切れる)」などが一般的な言い方である。しかし、「きずな」に「綱」の意識が薄れている現在、冒頭例のように「きずなを深める」と言ってもそれほどおかしくない。(「関係」の場合は、「関係を深める」「関係が深まる」が一般的。)「絆」の仮名遣いについては、「きずな」が本則、「きづな」が許容。なお、「絆」は常用漢字でない。)

 

(108)(正)期待外(きたいはず)れ /(誤)期待倒れ

(誤)県大会での記録がすばらしかったので、全国大会でも彼の三位以内は確実だと思ったが、期待倒れに終わってしまった。

(コメント:「期待外れ」が正しく、「期待倒れ」とは言わない。意味は、「こういうふうになればよいと心待ちにしていた事柄が、そのとおりにならないこと」。例、「期待外れの試合」「今年の新人は期待外れだった」。一方、「倒れ」は、「評判(ひょうばん)倒れ」「看板(かんばん)倒れ」などと使われる語。例、「評判倒れの芝居(しばい)」「看板倒れの四番バッター」。)

 

(109)(正)木に竹を接(つ)ぐ /(誤)竹に木を接ぐ

(誤)話がまずい方向に進展しそうになり、彼は急遽(きゅうきょ)別の話題を持ち出したが、竹に木を接いだようなぐあいになってしまった。

(コメント:「木に竹を接いだようなぐあい」が正しい。「木に竹を接ぐ」は、「(木と竹のように性質の異なった物をつなぎ合わせることから)前後の調和がとれないさま。前後のつじつまが合わないさま」を意味する。これを、冒頭例のように「竹に木を接ぐ」とは言わない。)

 

(110)(正)きば(牙)をむく /(誤)歯をむく

(誤)業界の生き残りは熾烈(しれつ)をきわめ、各社が、明日(あす)にも他社が歯をむいてくるのではなかろうかというおそれを抱(いだ)いていた。

(コメント:「きば(牙)をむいてくるのではなかろうか…」が正しい。「牙をむく」は、「動物が怒って、相手を攻撃しようとしたり威嚇(いかく)しようとしたりして、牙をあらわに出す。転じて、相手を害しようとする。危害を加えようとする。敵意を露骨(ろこつ)に示す」の意を表す。例、「虎(とら)が牙をむいて突進してきた」「山のような大波が牙をむいておそいかかった」。「歯をむく」は「感情をむきだしにしておこる」意で使われることもあるが、冒頭例の場合は適切でない。なお、「牙」は常用漢字でない。追記―平成22年11月告示の新しい「常用漢字表」には「牙 ガ・ゲ きば」が追加された。)

 

(111)(正)決められる /(△)決めれる

(△)あそこでトライを決めれなかったことが負けにつながったな。

(コメント:「決(き)められなかった」が本来の形。「決めれない」は標準的な言い方ではない。)⇒ら抜き言葉について

 

(112)(正)(き)やしない /(正)こやしない

(正)近ごろいちだんと出不精(でぶしょう)になった彼のことだから、今度の会合にもたぶんこやしないよ。

(コメント:「き(来)はしない」から転じた「きやしない」が本来の形(「き」は連用形)。しかし、「こ(来)ない」の類推で生じたと思われる「こやしない」も広く使われている(「こ」は未然形)。他の語の例、「しはしない→しやしない」「見はしない→見やしない」「取りはしない→取りゃしない」。)

 

(113)(正)脚光(きゃっこう)を浴(あ)びる /(誤)脚光を集める

(誤)地球のほぼ三分の二が海である。将来、今以上に海洋開発が脚光を集める時代が来るであろう。

(コメント:「脚光を浴びる時代」が正しい。「脚光」は 英語 footlights(フットライト)の訳語で、舞台の最前部の床に一列に取り付け、俳優を下から照らし出す照明をいう。その光線を全身に受けることが「脚光を浴びる」であり、「俳優が舞台に立つ。転じて、目立つものとして人々から注目される。世間の注目の的となる」の意が生じた。一方、「集める」は、「注目を集める」「視線を集める」「関心を集める」などと使われる語である。なお、「フットライトを浴びて主役が登場した」「リゾートとしてスポットライトを浴びた山麓(さんろく)」(英語 spotlight は、舞台の一点だけを特に明るく照らし出す照明。スポット。)などのように、「フットライト」や「スポットライト」に「浴びる」が付く言い方もある。)

 

(114)(正)九死(きゅうしに一生(いっしょう)を得る /(誤)十死(じっしに一生を得る

(誤)わたしたちの釣り船が転覆(てんぷく)した時、通りかかった貨物船に救われて十死に一生を得ました

(コメント:「九死に一生を得ました」が正しい。十のうち九分までが死という非常に危険な状態から、辛(かろ)うじて生きのびることを意味する。(この「九死」を「くし」と読んでは誤り。)なお、四字熟語には、「九死一生」とともに、それをさらに強めた語「十死一生」もある。)

 

(115)(正)着られる /(△)着れる

(△)和服が独りで着れるようになるには、かなりの練習が必要だ。

(コメント:「着られる」が本来の形。「着れる」は標準的な言い方ではない。)⇒ら抜き言葉について

 

(116)(正)(きわ)め付(つ)き /(△)極め付け

(△)君に、安い料金で極め付けのフランス料理を食べさせてくれる店を紹介してあげよう。

(コメント:「極め付き」は、「(1)刀剣・書画などで鑑定書の付いていること。また、そのもの。(2)高い評価を得ていること。優れたものとして定評があること」の意を表す。例、「極め付きの正宗(まさむね)の名刀」「大女優の極め付きの芸に見とれる」。近年は、「極め付きの不良(大酒飲み・まずい店)」など、悪い意味で使われることもある。しかし、もともとはよい意味で用いる語である。冒頭例の「極め付け」は本来は誤用であるが、最近はこう言う人も増えている。)

 

(117)(正)(き)をてら(衒)う /(誤)奇をねら(狙)う

(誤)ありのままの自分を作品に表現すればよいのだ。何も奇をねらうことはない。

(コメント:「奇(き)をてら(衒)う」が正しい。意味は、「わざと普通とは違うことをしてみせ、人の注意を引こうとする」こと。(「てらう」は、「学識・才能などがあるかのように見せびらかす。また、学識・才能などを見せびらかして誇らしげにふるまう」の意。)例、「彼には、言うことなすこと奇をてらう性癖(せいへき)がある」。冒頭例は、「てらう」を「ねらう」と誤ったもの。「奇抜(きばつ)さをねらう」であれば、「ねらう」でもおかしくない。なお、「衒」「狙」は常用漢字でない。追記―平成22年11月告示の新しい「常用漢字表」には「狙 ソ ねらう」が追加された。)

 

(118)(正)金的(きんてき)を射止(いと)めた /(誤)白羽(しらは)の矢を射止めた

(誤)そのドラマの主役の候補には五、六人の名が挙がったが、その中で白羽の矢を射止めたのは十七歳の無名の少女だった。

(コメント:冒頭例は、「金的を射止めた(=だれもが欲しがっていながらなかなか手に入れられないものを自分のものにした)」などが適切。(「金的」は、直径1センチほどの金色の弓の的のこと。)「白羽の矢」は、「白羽の矢が立つ(白羽の矢を立てる)」の形で、多くのものの中から特に指定して選び出される、ねらいをつけられること。本来は犠牲者(ぎせいしゃ)として選ばれる場合に使われたが、現在ではよい意味で使われる場合もある。例、「先方との交渉役で、彼に白羽の矢が立った」。)