3.言い方に関する問題

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(正)(許)(△)(誤)のしるしの基準

(正)

規範的、標準的、一般的な形   国語表記の本則

(許)

現代仮名遣い・送り仮名の付け方など、国語表記の許容

(△)

やや一般的でない形  やや適切でない形  

(誤)

表記・用法上の間違い

 

(さ)

(157)(正)さいさき(幸先)がよい /(正)さいさきが悪い

(正)海外旅行の一日めからかばんが壊れてしまうとはさい先が悪い

(コメント:「さいさき(幸先)」は、「何かよいことが起こりそうな兆(きざ)し」という本来の意味からすれば「さい先のよいスタートを切る」などがぴったりする。しかし、現在では、単に「前ぶれ」の意で「さい先が悪い」とも使われる。なお、「幸」の「さい」は常用漢字表の音訓欄にない読み。)

 

(158)(正)采配(さいはい)を振(ふ)る /(△)采配を振るう

(△)新部長が采配を振るうようになってから、営業部の成績は徐々に伸びていった。

(コメント:最近の国語辞典の中には「采配を振るう」の形を用例に示すものもあるが、「采配を振る」が本来の言い方である。意味は、昔、戦場で大将が采配(=紙などで房を作り、柄(え)を付けたもの)を手に持ち、それを振って兵を指揮したことから、「指図する。指揮する」ということ。「振るう」は、多く「刀を振るう」「筆をふるう」などと使われる語。なお、「采」は常用漢字でない。追記―平成22年11月告示の新しい「常用漢字表」には「采 サイ」が追加された。)

 

(159)(正)財布(さいふ)の底(そこ)をはた(叩)く /(△)財布をはたく

(△)とても気に入ったネックレスがあったので、財布をはたいて買ってしまったわ。

(コメント:財布をひっくり返して底をはたくということから、「持っている金を使い尽くす」意となる。したがって、「財布の底をはたいて」が標準的な言い方であろう。しかし、現在、「財布をはたく」の語形を付記する国語辞典も見られる。なお、「叩」は常用漢字でない。)

 

(160)(正)先取(さきど)りする /(誤)先取る

(誤)時代を先取るわが社の新製品をぜひお試しください。

(コメント:「時代を先取りする」が正しい。「先取る」という動詞はまだ一般的には認められていない。なお、「先乗り」「先払い」「先回り」なども「する」を付けて使われるが、「先乗る」「先払う」「先回る」といった語はない。)

 

(161)(正)策士(さくし)(さく)におぼ(溺)れる /(誤)策士策に敗(やぶ)

(誤)「相手は頭からぶつかってくるなと感じたので思いっきり横にとんだら、じっくり見て立たれ、体勢の崩(くず)れたところを押し出されてしまった」「策士策に敗るだな」。

(コメント:「策士策におぼ(溺)れる」と言い、「策士策に敗る」とは言わない。「策略をめぐらすのがうまい人は自分の策略に頼りすぎて、かえって失敗するものだ」の意。なお、「溺」は常用漢字でない。追記―平成22年11月告示の新しい「常用漢字表」には「溺 デキ おぼれる」が追加された。)

 

(162)(正)(さけ)を酌(く)み交(か)わす /(△)(さかずき)を酌み交わす

(△)男たちは工事が無事に終わったことを祝って杯を酌み交わした

(コメント:「酒を酌み交わした」が一般的。意味は、「杯をやりとりしながら(互いに杯をつぎ合って)いっしょに酒を飲む」こと。「杯を酌み交わす」の形を載せる国語辞典も皆無ではないが、「杯」の場合は、「杯を交わす」という言い方で使われることが多い。なお、「酒を飲み交わす」の形も耳にするが、熟した言い方とは言えない。)

 

(163)(正)沙汰(さた)の外(ほか)(正)沙汰の限(かぎ)

(正)無断で三週間も会社を休み海外旅行をしていたとは沙汰の限りだ。首もやむをえまい。

(コメント:「沙汰の限り」と「沙汰の外」とは、語形の上から見ると対義語である。前者は「是非・善悪の判断を下すことのできる限度内」、後者は「是非・善悪を論じる範囲を超えてひどいこと」の意である。しかし、実際には、「沙汰の限り」は「沙汰の限りに非(あら)ず」の意、つまり「沙汰の外」と同意で使われることが多い。なお、「沙」も「汰」も常用漢字でない。追記―平成22年11月告示の新しい「常用漢字表」には「沙 サ」「汰 タ」がともに追加された。)

 

(164)(正)(さっ)する /(△)察しる

(△)娘を亡くした彼女の気持ちを察しると心が痛む。

(コメント:「察する」はサ変、「察しる」は上一段活用である。ただし、現在のところ「察しる」「察しれ(ば)」は標準的な言い方でない。「察しる」も使われなくはないが、「感じる(感ずる)」「信じる(信ずる)」ほどには一般的でない。「接する(接しる)」「達する(達しる)」「発する(発しる)」なども、上一段化への途上にある動詞とされる。)

 

(165)(正)(さば)を読む /(誤)鯖を言う

(誤)あの女性がまだ五十前だって。だいぶ鯖を言っているようだ。

(コメント:「鯖を読んでいるようだ」が正しい。「だいぶ年をごまかして(言って)いるようだ」であれば「言っている」も使える。「鯖を読む」の語源については、魚市場で大量の鯖などの魚を数えるとき、さっさと数を読み上げていくうち、自然ごまかすことも多かったことからという。また、鯖はいたみやすいので、数えるときに特に急いで数え、実数をごまかすことが多かったことからともいう。なお、「鯖」は常用漢字でない。)

 

(166)(正)さびしい(寂しい) /(正)さみしい

(正)娘が嫁(とつ)いで行き、老夫婦だけのさみしい家庭になる。

(コメント:「さびしい(寂しい)」も「さみしい」も使われるが、標準的な言い方は「さびしい」である。「さむしい」「さぶしい」は一般的でない。なお、「さびしい」は、「(1)頼りになる人がいなくて、また、あればいいと思うものがなくて、満たされない気持ちである。〈さびしい生活。ふところがさびしい。〉(2)人声や物音がしないで、心細い。ひっそりしている〈さびしい山道。〉」の意をもつが、「さみしい」は、(1)の場合に多く使われる傾向がある。)

 

(167)(正)三十(さんじゅう)にして立つ /(誤)四十(しじゅう)にして立つ

(誤)四十にして立つと言いますから、わたしもしっかりとした気持ちで仕事に立ち向かい、一日も早く自分の店が持てるよう頑張りたいと思います。

(コメント:「三十にして立つ」が正しい。「論語(ろんご)」<為政(いせい)>に、「吾(われ)十有五(じゅうゆうご)にして学(がく)に志(こころざ)す。三十にして立つ。四十にして惑(まど)はず。五十にして天命を知る。六十にして耳(みみ)(したが)ふ。七十にして心の欲(ほっ)する所に従へども矩(のり)を踰(こ)えず」とある。ここから、「志学(しがく)」は十五歳、「而立(じりつ)」は三十歳、「不惑(ふわく)」は四十歳、「知命(ちめい)」は五十歳、「耳順(じじゅん)」は六十歳、「従心(じゅうしん)」は七十歳を指すようになった。)