梁山泊の人々
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インタビュアーは三連続公演中「少女仮面」「ロミオとジュリエット」
の二作品に出演の有栖川ソワレさんです。
1991年生まれ。父唐十郎のDNAを受け継ぎ、「少女仮面」では二度目のヒロインを演じる美仁音さん。
―――俳優を志したきっかけとは?
ずっと美術とか芸術的な事は好きだったんですけど、中々人前に立ったりするのが苦手で。
女優になろうとは全然思ってなかったんですけど、でも高校二年の春の時に深夜番組で
状況劇場の時の「ジャガーの眼」が再放送されていまして、それをたまたま観たんですよ。
それが余りにも素晴らしすぎて、もう心も人生も全て持っていかれてしまって(笑) 観終わった後には放心する位に衝撃を受けてしまって。
で次の日になって お父さんに「あの作品は素晴らしかったから是非やって欲しい」って言ったんですよ。
お父さんもそれは考えてくれて、実際に高2の秋やる事になって。
その時出てきた「ヤスヒロ君」ていう少年の役があったんですけど その役が特に好きで、年齢的にもぴったりだなあと思って。
あの役やりたいなぁって言ったら、そうか、じゃあ出てみるかって言ってくれて、 その時初めて赤テントに立ってしっかり演技をしたんです。
それがすごく楽しくって、こういう芸術的な表現もあるんだなって、
これはやらないと人生損するな、と思ってやり始めたのが役者やろうと思ったきっかけでした。
―――じゃあ初めてが少年役ですか?
でも実際、梁山泊の金さんの演出で中学一年生のときに「ガラスの使徒」で少女役をやったんですけど。
ま、それがちょっとした初めての演技ではあったんですけど。その時はまだ女優になろうとは思ってなくて。 その後ですね。
―――「ジャガーの眼」はテレビだったんですか?
テレビだったんですよ。
―――じゃあすごい運命的というか。
そうだったんですよ。見る前から、その頃たまたまその作品が気になってて、そしたら偶然テレビでやってて。
見なきゃ見なきゃと思って見たら、もう予想以上のインパクトで。 私三歳位からお父さんの作品は見ていて、ずっと大好きで
話はわからないんですけどでも、あの空気感とか世界観とか 全部自分の肌に合うっていうか、すごい好きだったんで、
父には感謝しております(笑)
―――じゃあ心に残る作品は「ジャガーの眼」が一番ですか?
そうですね、でも「ジャガーの眼」の前に、梁山泊でやった「少女都市」とか
「風の又三郎」とか、それを小さい時にみたんで、その時は意味がわかなかったんで
すけど、でもすごく印象に残ってますね。大好きです、その二つは。 父の作品の中でも三本指に入る位好きで、いつか絶対その二つのヒロインを
やりたいって思いますね。
―――舞台以外では?
舞台意外だと私、洋画が結構好きで「ショーシャンクの空に」とか感動しましたね。
いいですよね。あと「ノッティングヒルズの恋人」っていうジュリア・ロバーツが主役をやっている 恋愛コメディーの映画がすごく好きです。
あと本だと「ギリシア神話」がすごく好きで。
―――いつ頃好きになりました?
中学二年生位から好きでした。世界観がすごく好きで、例えばアキレス腱が何でアキレス腱と呼ばれるようになったかの由来とか
お話がすごく面白いなと思います
―――ギリシア神話を読むようになったきっかけは?
父の作品でよくギリシア神話のちょっとした話が出てきたりとか、神話の登場人物の名前を使っていたりする事があって。
その名前やお話が面白いなと思って、で読んでみようと思ったのがきっかけでした。
―――今回の「少女仮面」での役「貝」はどのように捉えていますか?
一番最初に「少女仮面」を見た時は、「貝」よりも女性なのに男装の麗人という「春日野」の印象がすごくて。
一場の最後でやっとゆっくり階段から降りてきて登場するって、すごい印象的で。
で「貝」ちゃんはすごく純粋な少女かな?って、まぁ普通に純粋な少女というイメージしかなかったんですけど
実際やってみるとむちゃくちゃ難しい役で。
「貝」はなんか、純粋だけど「純粋すぎる恐ろしさ」を持っていて、色んな事を受け入れて飲み込んで行くんですよ。
で、最後の最後には春日野をも騙くらかす、というか引っ繰り返しちゃう。
芝居の中で大人になっていって、最後は引っ繰り返すっていう、普通に可愛いってだけじゃなく
したたかな所とか怖い面も持っている所があって。そういう所をちゃんと演技できるように したいなと、考えながらやってます。
―――初めて「少女仮面」をご覧になったのはいつですか?
中学1、2年の時ですね。多分文学座です。
―――「貝」役は何度もやってらっしゃるんですか?
「貝」は二回目です。前回は俳小(劇団・俳小)さんでやらせて頂いて、その時にいろいろと沢山発見して
で、又梁山泊で金さんっていう違う演出家で、周りの役者さんも違うので、違う視点から見る事が出来たり、
新しい発見が出来て、更にパワーアップした「貝」が出来るといいなって思ってます。
―――「少女仮面」で印象深いシーンは?
(舞台を観ていて)一場の春日野が登場するシーンはやっぱり印象深いですね。「おっ!」と思っちゃいますね。
演じていて印象的な所は、三場の最後の方の「貝」が急に「うへへへ」って変な笑い方をして、で春日野が
「お前それ演技でやってたの?」って「演技指導じゃなかったの?」っていう所がすごく怖くて印象的ですね。
―――あそこで急に「貝ちゃんどうしたの?」って(笑)
そうですね(笑)
―――難しいと思う所はありますか?
沢山あって、一場は大丈夫なんですけど、三場は春日野がお稽古してる普通の時と急に演技に変わる時とかがあって、
そういう所は私的に演じ分けずらいというのと、お父さんの作品は論理的に筋が通ってる所とそうじゃない所があって
「何でこれ、こうなるの?」って読んでて思う所が結構あるんですけど。分からない所だらけですね(笑)。
「捨てたパンツ」とか。あと春日野に「肉体って何よ」って言った後に、「あれをご覧」て話になって
その「肉体」の話が普通の肉体の事じゃないんですよね。それがまずどういう事なんだろうって。
あと、最後の(春日野を)引っ繰り返す所も難しいですね(笑)。しっかりその前まで固めておかないと引っ繰り返せないなと思います。
―――「少女仮面」という作品について
「少女仮面」は、こういうお話だとは言えないんですが・・・。
父の作品で初めて主役をやる作品で、しかもこんなに難しいとは思ってなかったんで(笑)
いい役でとっても深くて、キーパーソンなんでしっかりちゃんと出来ればいいなって思ってます。
初めて主役やる作品なんで、(作品に対する)愛情があります。 岸田戯曲賞を取った作品で、すごくいい作品だなって、やってて思いますし。
全然そこらにあるような作品とはまた違うんで、それを自分で分かった上で、しっかり表現できればいいな、と思います。 ―――
役について、お父様とお話されたりしますか?
余んまりしないですね。余んまりお父さんに相談とかしなくって、でも周りの人と違って
「こういう役だよ」っていうのを(お父さんから)聞いたりする位で(笑)
―――前回やった時と違いますか?
大分違いますね(笑)前は春日野とかボーイ主任が男女逆転してたんですよ。だからもう相当違いましたね。
演出やられてた加納さんも唐十郎の作品を演出するのが初めてで、唐十郎にとらわれず自分の価値観で演出されてたので
それはとても面白かったんですけど。だから今回とは全然違います。 正統派の「少女仮面」は初めてです。いい作品なんで、大事に大事に、
ちゃんとお客さんに伝わるようにやりたいと頑張ります。
時に大きな身振りを交えて熱く語って頂いた美仁音さん。 演じる事の楽しさが伝わってくるお話ぶりでした。
美仁音さん、ありがとうございました。