浪淘沙
            

            
        宋 陸游
丹陽浮玉亭席上作

綠樹暗長亭。
幾把離尊。
陽關常恨不堪聞。
何況今朝秋色裏,
身是行人。


淸涙羅巾。
各自消魂。
一江離恨恰平分。
安得千尋橫鐵鎖
截斷煙津。



    **********************

            浪淘沙
          
丹陽の浮玉亭 席上の作

綠樹  長亭に 暗く。
幾たびか  離尊を 把る。
「陽關」  常に恨みて  聞くに 堪へず。
何ぞ 況んや  今朝 秋色の裏
(うち)
身は 是れ 行人なり。


淸涙  羅巾を 
(うる)ほし。
各自  消魂し。
一江の 離恨  恰
(まさ)に 平分す。
(いづく)んぞ  千尋の 橫ざまなる 鐵鎖を得て,
煙津を  截斷せん。

             ******************

◎ 私感訳註:

※浪淘沙:詞牌の一。詳しくは「構成について」を参照。
※丹陽浮玉亭席上作:陸游が鎭江を去るとき、丹陽の町の浮玉亭での送別の宴席で作った。 ・丹陽:江蘇省の長江南岸の都市名。鎭江(京口)の南隣。 ・浮玉亭:送別の宴を開いた亭の名。
※綠樹:緑の葉が生い茂った樹木。
※暗:暗くするほど(生い茂っている)。
※長亭:漢代、十里毎に置かれた駅亭。旅人の休憩所。ここでは、作者陸游の餞別の宴が行われた。李白の「菩薩蛮」に「何處是歸程,長亭更短亭。」
※綠樹暗長亭:緑の木の葉が長亭を暗くする(ほど生い茂り)。
※幾把:幾たびか(酒杯を)手に持ち。
※離尊:別れの杯。送別の酒。離宴。別杯。 王昌齡の「別皇甫五」「浦潭陽隔楚山,離尊不用起愁顏。」や杜甫の「別李義」「關中新月對離尊,江上殘花待歸客。名宦無媒自古遲,窮途此別不堪悲。」という具合に使われている。  ・尊:酒器。杯。
※幾把離尊:幾たびか別れの酒杯を手に持ち。何回か別離の「乾杯」の杯を持ちあげ。
※陽關。:「陽関三畳」のこと。送別の際、王維の「送元二使安西」「渭城朝雨輕塵,客舎靑靑柳色新。勸君更盡一杯酒,西出陽關無故人」を三度繰り返してうたい、惜別の情を表した。後に、送別の曲として位置づけられた。その場合の名称が「陽關(三疊)」である。
※常恨:。
※不堪聞:聞くのが(つらくて)がまんできない。
※陽關常恨不堪聞:。
※何況:(白話)まして…においては、なおさらである。
※秋色裏:秋の気配のなかで。秋の景色のなかで。
※何況今朝秋色裏:ましてや、今朝のように(悲傷の)秋の気配の漂う時においてはなおさらのことである。
※身:自分自身。みずから。
※是:…は…である。主語の後に付く。「A是B」(AはBである)。
※行人:旅行者。
※身是行人:この身は、旅人である。
※淸涙:清らかな涙。
:うるおす。ぬらす。
※羅巾:うすぎぬのハンカチ。
※淸涙羅巾:清らかな涙でうすぎぬのハンカチをうるおす。
※各自:それぞれ。
※消魂::感極まって呆然とする。うっとりとする。・消魂:気分が過度の刺激によって、ぼんやりすること。うっとりすること。落胆すること。李淸照の李淸照の「醉花陰(薄霧濃雲愁永晝)」「莫道不消魂,簾捲西風,人似黄花痩。」。或いは李煜の「到處消魂感舊遊(「柳枝詞」(風情漸老見春羞))ということ。
※各自消魂:それぞれが感極まって。
※一江:満江。:(長江の)川いっぱいのながれ。この「一」は、「一山」(=満山、全山)、「一杯」(=満杯)、一面(=満面、全面)、一家(=全家、家族全員)のように「全て」を云う。李煜の「虞美人」「問君能有幾多愁。 恰似一江春水 向東流。」に同じ。
※離恨:別離の恨み。別離の名残惜しさ。
※恰:ちょうど。まさに。あたかも。まるで。
※平分:折半にする。分ける。
※一江離恨恰平分:川いっぱいの別離の恨みを、ちょうど等しく分かち合って。
※安得:どこに求められようか。いづくにか…を得ん。いづくんぞ…なるを得んや。
※千尋:極めて長いこと。一尋=八尺。
※橫鐵鎖:鎖を横ざまに張って。「晋書巻四十二・王濬伝」の「呉人於江險磧要害之處,並以
鐵鎖橫截之,又作鐵錐長丈餘,暗置江中,以逆距船。」
※安得千尋橫鐵鎖:どこかで千尋の長さの鎖を横に張ることを求められようか。
※截斷:(白話)さえぎる。
※煙津:霞んでいる港。
※截斷煙津:(何とかして長い鎖を横に張って、)霞んでいる港に(横ざまに鎖を張って、船での出立を)遮ることができようか。



◎ 構成について

      双調。五十四字。平韻一韻到底。韻式は「AAAA AAAA」。 前後の韻式は同じ。 韻脚は「亭尊聞人 巾魂分津」で、第六部平声十一真(人)、十二文(聞分)、十三元(尊魂)。
           
 
●●○○,(A平韻)
●○○。(A平韻)
●●○○。(A平韻)
○○●●,
●○○。(A平韻)


●●○○,(A平韻)
●○○。(A平韻)
●●○○。(A平韻)
○○●●,
●○○。(A平韻)

    
2002.5.14
     5.15完
  
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