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花非花,霧非霧。
夜半來,天明去。
來如春夢幾多時?
去似朝雲無覓處。
花非花
花にして 花に 非ず,
霧にして 霧に 非ず。
夜半に 來たりて, 天明に 去る。
來たること 春夢の如く 幾多の 時ぞ?
去るは 朝雲に似にて 覓(もと)むる 處 無し。
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◎ 私感註釈
※白居易:中唐の詩人。772年(大暦七年)〜846年(會昌六年)。字は楽天。号は香山居士。官は武宗の時、刑部尚書に至る。平易通俗の詩風といわれるが、詩歌史上、積極的な活動を展開する。晩年仏教に帰依する。
※花非花:白居易の恋心を歌ったもの。この作品に基づいて『花非花』という詞牌が生まれた。
※花非花:花のようであって、花ではない。
※霧非霧:霧のようであって、霧ではない。
※夜半來:夜半にやって来て。
※天明去:空が明るくなったら、去っていく。
※來如春夢幾多時:(その人)が来るときは、春の夢のようで(はかなく)、どれほどの時間になろうか。(短いものだ)。
※去似朝雲無覓處:去っていくときは、朝雲のようで、探しようが無い。 ・朝雲:朝の雲であるが、前出の「霧」や「雨」「雲」「朝雲」は、男女の交情、異性を暗示する言葉。宋玉『高唐賦』によると、楚の襄王と宋玉が雲夢の台に遊び、高唐の観を望んだところ、雲気(雲というよりも濃い水蒸気のガスに近いもの(か))があったので、宋玉は「朝雲」と言った。襄王がそのわけを尋ねると、宋玉は「昔者先王嘗游高唐,怠而晝寢,夢見一婦人…去而辭曰:妾在巫山之陽,高丘之阻,旦爲朝雲,暮爲行雨,朝朝暮暮,陽臺之下。」と答えた。婉約の詩歌でよく使われる。「巫山之夢」。 ・無覓處:もとめていくところがない。もとめようがない。(漂い、やがて消えてゆくガスのような雲なので、)探しようがない。 ・覓:〔べき;mi4〕もとめる。
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◎ 構成について
換韻。韻式は、「aaa」。韻脚は「霧去處」で、詞韻第四部去声七遇。この作品の平仄は次の通り。
○○○,●○●。(韻)
●●○,○○●。(韻)
○○○●●○○,
●●○○○●●。(韻)
2003.6.8完 2016.5.4補 |
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