誰人功畫麒麟閣,
何客新投魑魅鄕。
兩處榮枯君莫問,
殘春更醉兩三場。
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夢得(ぼうとく)に 酒を 勸む
誰人か 功ありて 畫(ゑが)かる 麒麟閣(きりんかく),
何の客か 新たに 投ぜらる 魑魅(ちみ)の鄕。
兩處の榮枯 君 問ふこと 莫(なか)れ,
殘春 更に 醉へ 兩三場。
◎ 私感註釈 *****************
※白居易:中唐の詩人。772年(大暦七年)~846年(會昌六年)。字は楽天。号は香山居士。官は武宗の時、刑部尚書に至る。平易通俗の詩風といわれるが、詩歌史上、積極的な活動を展開する。晩年仏教に帰依する。
※勸夢得酒:劉禹錫に酒を勧める。「動詞+賓語・賓語」「動詞+補語+目的語」「…する …に …を」の構文。 *左遷されて、失意の内に旅立つ劉禹錫への詩。 ・勸:すすめる。「勸夢得酒」の句では、兼語文の働きをする。また、目的語を「夢得」「酒」の二つとるともいえる。「夢得」と「酒」との語順は換えられない。 ・夢得:〔ぼうとく;Meng4de2●●〕劉禹錫![]()
の字。中唐の詩人。晩年、白居易の詩友となる。中山の人。進士に及第し、王叔文の党に属するも、失脚連座して左遷された経緯がある。後世、日本・明治初期の前原一誠は『逸題』「汗馬鐵衣過一春。歸來慾脱卻風塵。一場殘醉曲肱睡。不夢周公夢美人。」
で、同じ苦しみを詠う。
※誰人功畫麒麟閣:誰かは、功績があって彰せられて麒麟閣に(肖像画を)描かれることであろう。読み下し文は倒置なので「…畫かる麒麟閣に」の助動詞「る」は、終止形。 ・誰人:だれ。 ・功畫:功績があって彰せられて(肖像画を)描かれる。 ・麒麟閣:漢の宣帝が功臣十一人の像を描いた建物。『漢書・李廣/蘇建・蘇武』に「甘露三年,單于始入朝。上思股肱之美,乃圖畫其人於麒麟閣,法其形貌,署其官爵姓名。凡十一人,皆有傳。」とある。 ・麒麟:〔きりん;qi2lin2○○〕聖徳の仁政の世に現れるという霊獣。想像上の動物。キリン。『呂氏春秋・有始覽』「夫覆巣毀卵,則鳳凰不至。刳獸食胎,則麒麟不來。乾澤涸漁,則龜龍不往。物之從同,不可爲記。」『孟子・公孫丑』「上麒麟之於走獸,鳳凰之於飛鳥,泰山之於丘垤,河海之於行潦,類也。」中国で、蛇足になるが、アフリカに棲むジラフ(きりん)にの意を寓したのはいつごろからか、興味深い。なお現代語では“長頸鹿”という。
※何客新投魑魅鄕:どこへかの旅人は、新たに遠ざけられて僻陬の地に赴こうとしている。 ・何客:だれ。どこ(への)旅人(か)。 ・新投:あらたに遠ざける。 *「…新たに投ぜらる魑魅鄕に」起句と承句を揃えた。 ・投:遠ざける。送る。至る。 ・魑魅鄕:僻陬の地。僻遠の地。 ・魑魅:〔ちみ;chi1mei4○●〕山や沼にいる化け物。人面獣心で人を迷わせるという。
※兩處榮枯君莫問:両者(「麒麟閣」に絵姿を留めたり、「魑魅鄕」に任官したりする人の世)の栄枯盛衰は、兄(けい)よ、聞きなさるな。(愚痴は、やめなされ。) ・兩處:両者。双方。ここでは、「麒麟閣」と「魑魅鄕」とのことになる。 ・榮枯:栄えることと、衰えること。盛衰。本来は、草木の生い茂ったり、枯れたりすること。 ・君莫問:兄(けい)よ、聞いてくださるな。
※殘春更醉兩三場:(それよりも)過ぎ行く春の(名残の酒を飲んで)もう二、三回、酔い潰れようではないか。 ・殘春:盛りを過ぎた春。 ・更醉:もっと酔う。 ・兩三:二、三。 ・場:回。量詞。演劇や、夢などを数えるときに使う。
◎ 構成について
韻式は「AA」。韻脚は「鄕場」で、平水韻下平七陽。次の平仄はこの作品のもの。
○○○●○○●,
○●○○○●○。(韻)
●●○○○●●,
○○●●●○○。(韻)
2006. 4.30 5. 2 5. 3完 2009. 7.30補 2009.12.29 |
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