月之精, 顧兔生。 三五盈, 揚光明。 友墨卿, 宣管城。 浴華英, 規而成。 乾隆御銘■ |
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裏面 |
倣宋 玉兎 元に朝するの硯 三字令
月の精,
兔生 顧(かへりみ)る。
三五 盈(み)ちて,
光明を 揚ぐ。
墨卿を 友として,
管城に 宣(の)ぶ。
華英に 浴して,
規して 成る。
乾隆御銘■
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倣宋玉兎朝元硯 この上に置いた少量の水は丸く溜まり、そこで墨をする。 伊勢丘人先生所蔵・釈文
◎ 私感訳註:
※倣宋玉兎朝元硯三字令:宋代の様式の模した風合いの乾隆御銘玉兎紋硯。箱の裏は、「此是端渓之青石而發墨甚佳底面之雕琢古雅精巧可以併賞也眞是文房之一小奇玩一見欣賞遂題之 己卯之六月 原齋間人(此(これ)は是(こ)れ端渓の青石にして發墨 甚(はなは)だ佳(よ)し。底面の雕琢 古雅精巧にして以って併せて賞す可(べ)き也。眞(まこと)に是(こ)れ文房の一小奇玩にして一見欣賞して遂に之(これ)に題す。己卯(1759年:乾隆二十四年:寶暦九年)の六月 原齋間人)」とある。伊勢丘人先生所蔵・釈文。 ・倣宋:宋代の様式の模した風合い。 ・玉兎:月に棲むといわれるウサギ。白兔(搗藥)の紋様。 ・朝元:まるい月に向かう。 ・朝:朝拝する。向かう。 ・元:まるい(月)。 ・硯:すずり。木の輪切りのような円形をしたすずりで、硯池は無く平面になっている。直径は約10センチ3ミリ、高さは2センチ4ミリ。輪切りの横に、「倣宋玉兎朝元硯」と彫られている。 ・三字令:三字句による韻文。填詞の『三字令』と比べると、(標準の双調ではなくて、)単調。
※月之精:月の精(を)。『嫦娥奔月』『呉剛伐桂』の嫦娥や呉剛。「月之精,顧兔生」顧の主語は、兎生。絵柄でも兎が月を振り返って見ている。本来は「兔生顧月之精」とすべきところを、押韻の為に主語と動詞を逆にして「月之精,顧兔生」としたもの(伊勢丘人先生)。
※顧兔生:ウサギさんがかえりみている。 ・顧:かえりみる。 ・兔生:ウサギさん。玉兎さん。李白の『把酒問月』に「靑天有月來幾時,我今停杯一問之。人攀明月不可得,月行卻與人相隨。皎如飛鏡臨丹闕,綠煙滅盡淸輝發。但見宵從海上來,寧知曉向雲閒沒。白兔搗藥秋復春,娥孤棲與誰鄰。今人不見古時月,今月曾經照古人。古人今人若流水,共看明月皆如此。唯願當歌對酒時,月光長照金樽裏。」とある。 ・-生:他人に対する尊称。
※三五盈:十五夜(の月)が満ちて。 ・三五:十五。十五夜のこと。3×5=15。九九で数値を表現する。中唐・白居易の『八月十五日夜禁中獨直對月憶元九』に「銀臺金闕夕沈沈,獨宿相思在翰林。三五夜中新月色,二千里外故人心。渚宮東面煙波冷,浴殿西頭鐘漏深。猶恐清光不同見,江陵卑濕足秋陰。」とある。九九を使った表現の例としては、陶淵明の『責子』に「白髮被兩鬢,肌膚不復實。雖有五男兒,總不好紙筆。 阿舒已二八(=16歳),懶惰故無匹。阿宣行志學,而不好文術。雍・端年十三,不識六與七。通子垂九齡,但覓梨與栗。天運苟如此,且進杯中物。」
とあり白居易の『勸酒』「昨與美人對尊酒,朱顏如花腰似柳。今與美人傾一杯,秋風颯颯頭上來。年光似水向東去,兩鬢不禁白日催。東鄰起樓高百尺,
題照日光相射。珠翠無非二八人(=16人),盤筵何啻三千客。」
や李清照の『永遇樂』「落日熔金,暮雲合璧,人在何處?染柳烟濃,吹梅笛怨,春意知幾許。元宵佳節,融和天氣,次第豈無風雨?來相召,香車寶馬,謝他酒朋詩侶。 中州盛日,閨門多暇,記得偏重三五(=15夜)。鋪翠冠兒,撚金雪柳,簇帶爭濟楚。如今憔悴,風鬟霜鬢,怕見夜間出去。不如向、簾兒底下,聽人笑語。」
、「二八女郎」(16歳の妙齢の少女)とい表現もある。 ・盈:満ちる。
※揚光明:明るい光を放っている。 ・揚:あげる。発揚する。 ・光明:明るい光。光輝。
※友墨卿:墨卿(の墨)を友として。 ・友:友とする。 ・墨卿:字号で、唐・段文昌、清・伊秉綬等。ここでは、「墨」を擬人化するための表現。
※宣管城:管城(の管)=筆をのべあきらかにしている。 ・宣:あきらか。通す。のべる。 ・管城:県名、城名。ここでは、「管」(「筆」の意)を擬人化するための表現。
※浴華英:光輝を浴びて。 ・浴:あびる。浴する。 *月光を浴びる。皇帝(乾隆帝)の聖徳に浴する。相関の語(かけことば)。 ・華英:光。輝き。
※規而成:円形になっている。 ・規而成:円形を画く。円くなる。 ・規:円形を画く。「天道成規」:天は円形に動く。
◎ 構成について
2007.10.25 10.26 10.27 |