Li Yu ci
liyu LiYu 漢詩
 

    

  采桑子


轆轤金井梧桐晩,
幾樹驚秋。
晝雨如愁,
百尺蝦鬚上玉鉤。


瓊窗春斷雙蛾皺,
迴首邊頭。
欲寄鱗游,
九曲寒波不溯流。



******

采桑子
             
轆轤(ろくろ) 金井(きんせい)  梧桐(ごとう)の晩(くれ)
(いくばく)の樹か 秋に驚く。
晝の雨は 愁ふるが如く,
百尺
(ひゃくせき)の蝦鬚(かしゅ)  玉鉤に 上ぐ。


瓊窗
(けいさう)に 春は 斷たれて  雙蛾(さうが) 皺(ひそ)む,
邊頭を 迴首す。
鱗游に 寄せんと 欲するも,
九曲
(きうきょく)の寒波に  溯流(そりう)せず。

                **********



◎私感注釈

※采桑子:詞牌の一。この作品、作者は或いは女性の身になって詠ったものかも知れない。

※轆轤金井梧桐晩:日暮れに、井戸の水汲み用のろくろが静かな邸内に響いて来て、立派な井戸の傍に植えてあるアオギリは。 ・轆轤:〔ろくろ;lu4lu2●○〕井戸の水汲み用のろくろ。滑車。詩詞では、御殿やお屋敷など、街中で静かなさまを表現するのに使う。張籍(姚月華)の『楚妃怨』に「
梧桐葉下黄金井,橫架轆轤牽素。美人初起天未明,手拂銀秋水冷。」とあり、「轆轤」や後出「金井」は一種の詞語とも謂えるもの。 ・金井:井戸の枠が美しく装飾されている立派な井戸。 ・梧桐:〔ごとう;wu2tong2○○〕アオギリ。落葉喬木。庭木で秋早くに落葉するため、秋の季節の訪れを告げるものとして、また場合によっては凋落を表す語として、また葉が大きいために雨音がよく分かるので、雨の描写にもよく使われる語。盛唐・王昌齡の『長信秋詞』に「金井梧桐秋葉黄,珠簾不捲夜來霜。熏籠玉枕無顏色,臥聽南宮清漏長。」とあり、晩唐~・温庭の『更漏子』「玉爐香、紅蝋涙。偏照畫堂秋思。眉翠薄、鬢雲殘。夜長衾枕寒。   梧桐樹。三更雨。不道離情正苦。一葉葉、一聲聲。空階滴到明。」 や、李清照の『聲聲慢』「尋尋覓覓,冷冷淸淸,凄凄慘慘戚戚。乍暖還寒時候,最難將息。三杯兩盞淡酒,怎敵他、曉來風急。雁過也,正傷心,却是舊時相識。   滿地黄花堆積,憔悴損,如今有誰堪摘。守着窗兒,獨自怎生得黑。梧桐更兼細雨,到黄昏、點點滴滴。這次第,怎一個、愁字了得。」 井戸端にも植えられるのか。 ・晩:日暮れ。作詞した時刻が日暮れでもあり、同時に梧桐の凋落、葉が黄ばんで落ちかかっている感じをも謂う。

※幾樹驚秋:何本の木が(凋落の時季である秋が来たことに)驚き警戒していることだろうか。 ・幾樹:何本の木が。 ・驚秋:凋落の時季である秋が来たことを(樹木が)驚き警戒する。『長歌行』「青青園中葵,朝露待日晞。陽春布德澤,萬物生光輝。常恐秋節至,焜黄華葉衰。百川東到海,何時復西歸。少壯不努力,老大徒傷悲。」 このページの詩や前掲の詩は、詩の作者が秋の訪れに驚いているのではない。作者が秋の訪れに驚いているのは、蘇の『汾上
驚秋』「北風吹白雲, 萬里渡河汾。心緒逢搖落,秋聲不可聞。」 などになる。ここは、「經秋」ともする。その場合は「秋を経る」の意になる。

※晝雨如愁:(秋の)昼の雨には(木にとっても、わたしにとっても)愁いがあるようだ。 *「舊雨新愁」ともする。そのばあいは「(秋雨は)昔ながらの変わることもない雨だが、わたしの心には新たな愁いが生じてくる」になる。 ・晝雨:昼の雨。ここは、「舊雨」ともする。その場合は「昔ながらの雨」の意で、「新愁」と対になる。 ・如愁:ここは、「新愁」ともする。

※百尺蝦須上玉鉤:長い御簾を巻き上げて、玉(ぎょく)で作ったかぎ(に御簾を留めた)。 ・百尺:〔ひゃくせき;bai3chi3●●〕人の作った建物の高さなどでとても永いことの形容。31.1メートル。「百尺樓」等。陶潜『擬古九首』其四に「迢迢百尺樓,分明望四荒。暮作歸雲宅,朝爲飛鳥堂。山河滿目中,平原獨茫茫。古時功名士,慷慨爭此場。一旦百歳後,相與還北。松柏爲人伐,高墳互低昂。頽基無遺主,遊魂在何方。」、 ・蝦鬚:〔かしゅ;xia1xu1○○〕御簾(みす)。窓のすだれ。窓のカーテン。字義はエビの鬚(ひげ)。 ・上:ここは、「在」ともする。その場合は、より静的な表現になる。 ・玉鉤:玉(ぎょく)で作った御簾をとめるかぎ。後世、北宋・蘇軾の『吉祥寺賞牡丹』に「人老簪花不自羞,花應羞上老人頭。醉歸扶路人應笑,十里珠簾半上鉤。」とある。

※瓊窗春斷雙蛾皺:(嘗て、)紅い宝玉の飾りのある美事な窓(のあるここで、女性との愉しかった一時があったが、その)春は断たれてしまって(突然の別れの時が来た。その時の)彼女の眉を顰(ひそ)めた悲しげな顔(が思い出される)。或いは、女性の身になって詠っているとすれば、愛しい人が旅立っていったままで、帰ってこないので、愁いに沈んで眉を顰めている。 ・瓊窗:〔けいさう;qiong2chuang2○○〕紅い宝玉の飾りのある美事な窓。 ・春斷:春は過ぎ去ってしまった。季節の春と、作者・李煜にとっての女性との麗しい関係を謂う春が断たれてしまった。ここは、「夢斷」ともする。その場合は「(女性との甘い)夢も断たれてしまった」の意になる。 ・雙蛾:女性の左右の眉。 ・皺:(眉根に)皺(しわ)寄せる。

※迴首邊頭:(彼女のいる)辺りを思い返し。 ・迴首:ふり返る。振り向く。ここでは、「回想する」という意で使われている。 ・邊頭:畔。水辺。辺。また、辺疆。

※欲寄鱗游:手紙を鯉魚に托して届けてもらいたいものだが。 ・欲:…たい。 ・寄:手紙を出す。手紙を寄こす。 ・鱗游:魚。ここでは、鯉魚のことになる。鯉の腹の手紙の故事をいう。 ・鱗:魚類。

※九曲寒波不溯流:曲がりくねった冬の厳しい川の状況では、遡って(目的地まで)届けてもらえまい。 *愛しい人がいるところは遠く離れていて、または、事情があって容易(たやす)く手紙が出せるところにはいないということ。 ・九曲:曲がりくねった。曲折のある状態をいう。黄河を謂う。盧綸の『送郭判官赴振武』「
黄河九曲,繚繞古邊州。鳴雁飛初夜,羌胡正晩秋。淒涼金管思,迢遞玉人愁。七葉推多慶,須懷殺敵憂。」。ここは、「九月」ともする。 ・寒波:冷たい水。 ・溯流:〔そりう;su4liu2●○〕逆流する。遡って流れる。ここは、「泝流」〔そりう;su4liu2●○〕ともする。同音同義。





◎ 構成について

◎  采桑子。四十四字。『醜奴兒』ともいう (双調) 平韻。韻式は「AAA AAA」。韻脚は「秋愁鈎頭游流」で、詞韻第十二部平声。

   ●○○●,
   ●○○。(韻)
   ●○○,(韻)
   ●○○●●○。(韻)


   ●○○●,
   ●○○。(韻)
   ●○○,(韻)
   ●○○●●○。(韻)

***********************
2007.2.20
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2015.2.16

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