huanying xinshang Ding Fengzhang de zhuye






                   冬日小病寄家書作
清・龔自珍   



黄日半窗煖,
人聲四面希。
餳簫咽窮巷,
沈沈止復吹。
小時聞此聲,
心神輒爲癡。
慈母知我病,
手以棉覆之。
夜夢猶呻寒,
投於母中懷。
行年迨壯盛,
此病恆相隨。
飮我慈母恩,
雖壯同兒時。
今年遠離別,
獨坐天之涯。
神理日不足,
禪悅詎可期。
沈沈復悄悄,
擁衾思投誰。





    **********************


冬日に小病して 家書を寄せて作る
黄日  窗に半ばしてあたたかく,
人聲  四面にまれなり。
餳簫たうせう  窮巷きゅうかうむせび,
沈沈として  止みてた吹く。
小時  の聲を聞かば,
心神  すなはためたり。
慈母  我がやまひを知り,
づから  めんを以てこれおほふ。
夜夢にも  呻き寒うめ  をののき,
母の中懷ちゅうくゎいに 投ず。
行年かうねん  壯盛さうせいおよぶも,
此の病 こ  やまひ  つねしたがふ。
我が慈母の恩を むは,
壯なりといへども  兒時に同じ。
今年  遠く離別 り べつし,
ひとり  天のはてに坐す。
神理  日々らず,
禪悅ぜんえつ  なんぞ期すけんや。
沈沈  復た悄悄 ま  せうせう
衾を擁きん  ようして  たれにか投ぜんと思ふ。


             ******************


◎ 私感訳註:

※龔自珍:〔きょう・じちん;Gong1 Zi4zhen1〕清朝中後期の思想家、文学者。1792年(乾隆五十七年)~1841年(道光二十一年)。一名を鞏祚。字は璱人。号して定盦(盦=庵)。浙江の仁和(現・浙江省杭州市)の人。経世の学を研究した。北方の帝政ロシアの侵入を警告し、対処を講じ、阿片戦争前にはイギリスが戦争をおこすことを予見し、戦備の強化を進言した。清政府の専制支配に対して「萬馬齊喑」(物がいえなくなること)や、「更法」(制度を変えること)、「改圖」(はかりごとを改める)、「變功令」(学問に対するきまりを変ず)、「不拘一格」(ひとつのわくにこだわることなく、人材を登用する)ことを提倡した。(彼の『己亥雜詩』に「九州生氣恃風雷,萬馬齊喑究可哀。我勸天公重抖擻,不拘一格降人才。」とある。)

※冬日小病寄家書作:冬の時にちょっとした病気になり、故郷への手紙を出した折の詩作。 *作者が母親に対して深い愛情を懐いているのを、現在から幼児の時に遡って思い返している。 ・冬日:冬のとき。 ・小病:ちょっとした病になる。ここの「病」は動詞。恐らく後出のパニック障害のようなものを起こしてしまうことを謂うか。 ・寄:手紙を出す。 ・家書:家郷(故郷)への手紙。また、故郷からの手紙。ここは、前者の意。前者の意の例に張籍の『秋思』「洛陽城裏見秋風,欲作家書意萬重。復恐匆匆説不盡,行人臨發又開封。」や、宋・陸游の『漁家傲』寄仲高「東望山陰何處是?往來一万三千里。寫得家書空滿紙!流淸涙,書回已是明年事。   寄語紅橋橋下水,扁舟何日尋兄弟?行遍天涯眞老矣!愁無寐,鬢絲幾縷茶煙裏。」 がある。後者の例で杜甫は『春望』で「國破山河在,城春草木深。感時花濺涙,恨別鳥驚心。烽火連三月,
家書抵萬金。白頭掻更短,渾欲不勝簪。」や、 ・作:ここでは、「詩を作る」意になる。

※黄日半窗煖:(夕刻の)黄ばんだ太陽が窓のなかばまで射して、暖かく。黄昏(たそがれ)時に片側を閉めた窓辺は暖かく。病(やまい)になったとき、(煖房で)暖かかったので窓をなかば開けると。或いは、前者の場合は「煖」字ではなくて、「暖」字。 ・黄日:(夕刻の)黄ばんだ太陽。黄昏時。また、(黄砂で)黄ばんだ太陽。また、病(やまい)になったとき。ここの「黄日」の意味は解りづらいが、この詩には作者自身の附記があり次のように記されている。「予毎聞
斜日中簫聲則病。莫喩其故。附記於此。」この文中の「斜日」のことと見て、作者のパニック障害が起こる環境とするのが妥当だろう。 ・黄:病(や)む。やまい。やみつかれるさま。また、きばむ。きいろになる。 ・半窗:窓のなかば。 ・煖:〔だん(なん);nuan3●〕火気であたためる。あたたか。≒暖〔だん(なん);nuan3●〕。(但し、「煖」はストーブなどの煖房(「暖房」よりも「煖房」の表記の方がより正確)、火気であたたかいことで、「暖」は日ざしがあたたかいこと)。

※人聲四面希:人声は周囲に稀(まれ)で(街は静寂に包まれていた)。 ・四面:まわり。周囲。四方。 ・希:〔き;xi1○〕まれ。=稀〔き;xi1○〕。

※餳簫咽窮巷:飴(あめ)売りの笛がむさくるしい町の中に咽(むせ)び泣いて。 ・餳簫:飴(あめ)売りの笛の音。(蛇足になるが、映画『覇王別姫』の最初の場面では、旧い北京の街中の物売りの描写がよくされている。「糖葫芦」(サンザシの砂糖漬)か。) ・餳:〔たう;tang2○〕飴(あめ)。=糖〔たう;tang2○〕。 ・簫:〔せう;xiao1○〕ふえ。しょうのふえ。 ・咽:〔えつ;ye4●〕むせぶ。むせる。声がつまる。動詞。なお、蛇足になるが、咽:〔えん(いん);yan4●〕のむ。のみくだす。動詞。咽〔えん(いん);yan1○〕のど。名詞。 ・窮巷:〔きゅうかう;qiong2xiang4○●〕むさくるしい町の中。

※沈沈止復吹:ひっそりと静まりかえっては、また再び吹く(音が聞こえる)。 ・沈沈:深く静まっているさま。静まりひっそりしたさま。奥深く静かなさま。 かくれるさま。夜の更けていくようす。静まりひっそりしたさま。かくれるさまの例に、張若虚の『春江花月夜』「春江潮水連海平,海上明月共潮生。灩灩隨波千萬里,何處春江無月明。江流宛轉遶芳甸,月照花林皆似霰。空裏流霜不覺飛,汀上白沙看不見。江天一色無纖塵,皎皎空中孤月輪。江畔何人初見月,江月何年初照人。人生代代無窮已,江月年年祗相似。不知江月待何人,但見長江送流水。白雲一片去悠悠,青楓浦上不勝愁。誰家今夜扁舟子,何處相思明月樓。可憐樓上月裴回,應照離人妝鏡臺。玉戸簾中卷不去,擣衣砧上拂還來。此時相望不相聞,願逐月華流照君。鴻雁長飛光不度,魚龍潛躍水成文。昨夜閒潭夢落花,可憐春半不還家。江水流春去欲盡,江潭落月復西斜。斜月
沈沈藏海霧,碣石瀟湘無限路。不知乘月幾人歸,落月搖情滿江樹。」があり、奥深く静かなさまの例に宋・陸游の『關山月』に「和戎詔下十五年,將軍不戰空臨邊。朱門沈沈按歌舞,厩馬肥死弓斷弦。戍樓斗催落月, 三十從軍今白髮。笛裏誰知壯士心,沙頭空照征人骨。中原干戈古亦聞,豈有逆胡傳子孫!遺民忍死望恢復, 幾處今宵垂涙痕。」があり、夜の更けていくさまの例に、北宋・秦觀の『如夢令』に「遙夜沈沈如水風緊驛亭深閉。夢破鼠窺燈,霜送曉寒侵被。無寐,無寐,門外馬嘶人起。」や、宋の蘇軾の『春夜』に「春宵一刻値千金,花有淸香月有陰。歌管樓臺聲細細,鞦韆院落夜沈沈。」とあり、宇文虚中の『在金日作』に「遙夜沈沈滿幕霜,有時歸夢到家鄕。傳聞已築西河館,自許能肥北海羊。回首兩朝倶草莽,馳心萬里絶農桑。人生一死渾閒事,裂眥穿胸不汝忘。」がある。 ・止復吹:止まってはまた吹いているのが聞こえる。中唐・白居易の『長恨歌』に「九重城闕煙塵生,千乘萬騎西南行。翠華搖搖,西出都門百餘里。」とある。

※小時聞此聲:小さい時に、この(飴(あめ)売りの笛の)音を聞いては。 ・小時:幼い時。小さい時。 ・此聲:この(飴(あめ)売りの笛の)音。

※心神輒爲癡:心は(飴(あめ)売りの笛の音を聞く)たびごとに、変になってパニック障害(?)を起こしてしまった。 ・心神:こころ。 ・輒:〔てふ;zhe2●〕そのたびごとに。いつも。すぐに。気軽に。たやすく。すなわち。 ・爲:〔ゐ;wei2○〕…となる。…となす。…たり。 ・癡:〔ち;chi1○〕おかしくなる。変になる。また、愚か。しれもの。一つのことに夢中になること。おろか。ここは、前者の意。

※慈母知我病:やさしいお母さんは、わたしのその病(やまい)のことを知っていて。

※手以棉覆之:(いつも)手ずから、掛け布団でわたしを覆って(くれていた)。 ・手:手ずから。 ・棉:〔めん;mian2○〕わたの入った掛け布団。≒綿。蛇足になるが、「棉」〔めん;mian2○〕は植物性の「わた」で、「綿」〔めん;mian2○〕は「まわた」(絹糸のわた)。 ・覆:覆(おお)う。 ・之:これ。ここでは、わたし=作者を指す。

※夜夢猶呻寒:夜の夢でも、まだ呻(うめ)きおののいて。 ・猶:〔いう;you2○〕なお。それでも。まだ。やはり。 ・呻寒:うめきおののく。 ・寒:恐れおののく。おののく。

※投於母中懷:母の胸の中に(身を)投じていた。 ・投於:…に(身を)投ずる。 ・中懷:心の中。心中。ここでは、「胸の中」のことになる。東晉・陶潛の『遊斜川』に「開歳倏五日,吾生行歸休。念之動
中懷,及辰爲茲游。氣和天惟澄,班坐依遠流。弱湍馳文魴,閒谷矯鳴鴎。迥澤散游目,緬然睇曾丘。雖微九重秀,顧瞻無匹儔。提壺接賓侶,引滿更獻酬。未知從今去,當復如此不。中觴縱遙情,忘彼千載憂。且極今朝樂,明日非所求。」とある。

※行年迨壯盛:年齢が若い盛りになるまで。 ・行年:生きている人の今までに経た年数。年齢。当年。また、生存した年月。ここは、前者の意。 ・行:経(へ)る。 ・迨:〔たい;dai4●〕到る。及ぶ。迄(まで)。また、願う。ここは、前者の意。 ・壯盛:〔さうせい;zhuang4sheng4●●〕若く盛んな時。若いさかり。

※此病恆相隨:この病気はずっとついてきた。 ・恆:〔こう;heng2○〕つねに。 ・相隨:…に従っていた。ついてくる。 ・相-:…に…ていく。…に…てくる。動作が対象に及んでいく表現。

※飮我慈母恩:わたしが優しいお母さんにすがりつくのは。(わたしが優しいお母さんの恩を享受するのは)。 ・飮:受ける。享受する。(『漢語大詞典』第十二巻504ページ)。「飮…恩」…の恩をこうむる。

※雖壯同兒時:大きい男になったとはいっても、子どもの時と同じである。 ・雖:…ではあるが。…といえども。 ・壯:おおきい男である。としざかりである。 ・兒:小児。小さい子ども。

※今年遠離別:今年は、遙か遠くに離れて。 ・遠離別:遙かに離れる。遠く離れる。

※獨坐天之涯:(わたしは)空のはてのようにきわめて遠いところで、独(ひと)りで過ごしている。 ・獨坐:ひとりでいる。独りで(坐って=過ごして)いる。作者は親元を離れて北京にいることをいう。唐・王維の『竹里館』「獨坐幽篁裏,彈琴復長嘯。深林人不知,明月來相照。」 ・天之涯:空のはて。きわめて遠いところの譬え。天辺。=天涯。

※神理日不足:神の定めた道理(を理解して心を安定させようにも、それを究めるための)日数が不十分であり。 ・神理:人知をこえてすぐれた道理。不測不可思議な道理。神の定めた道理。 ・日:日々。 ・不足:…とするにたらない。 不十分である。

※禪悅詎可期:(心を静める)禅の法悦の境地に辿り着くことなどは、どうして期待できようか。 ・禪悅:禅の境地。法悦の境地。 ・詎:〔きょ;ju4●〕何(なん)ぞ。豈(あに)。何爲(なんすれぞ)。いづくんぞ。反語の助字。 ・可期:あてにする。期待する。晉・陶淵明の『歸去來兮辭』に「歸去來兮,田園將蕪胡不歸。既自以心爲形役,奚惆悵而獨悲。悟已往之不諫,知來者之可追。實迷途其未遠,覺今是而昨非。舟遙遙以輕颺,風飄飄而吹衣。問征夫以前路,恨晨光之熹微。乃瞻衡宇,載欣載奔。僮僕歡迎,稚子候門。三逕就荒,松菊猶存。攜幼入室,有酒盈樽。引壺觴以自酌,眄庭柯以怡顏。倚南窗以寄傲,審容膝之易安。園日渉以成趣,門雖設而常關。策扶老以流憩,時矯首而游觀。雲無心以出岫,鳥倦飛而知還。景翳翳以將入,撫孤松而盤桓。歸去來兮,請息交以絶遊。世與我以相遺,復駕言兮焉求。悅親戚之情話,樂琴書以消憂。農人告余以春及,將有事於西疇。或命巾車,或棹孤舟。既窈窕以尋壑,亦崎嶇而經丘。木欣欣以向榮,泉涓涓而始流。羨萬物之得時,感吾生之行休。已矣乎,寓形宇内復幾時。曷不委心任去留,胡爲遑遑欲何之。富貴非吾願,帝鄕不
可期。懷良辰以孤往,或植杖而耘耔。登東皋以舒嘯,臨淸流而賦詩。聊乘化以歸盡,樂夫天命復奚疑。」とある。

※沈沈復悄悄:うち沈んで、さらにまた、うれえしおれて。 ・悄悄:〔せうせう;qiao3qiao3●●〕うれえるさま。しおしおするさま。うれえうらむさま。静かなさま。五代・羅隱の『江南行』「西陵路邊月
悄悄,油碧輕車蘇小小。 」や、宋・岳飛の『小重山』「昨夜寒蛩不住鳴,驚回千里夢。已三更。起來獨自遶階行,悄悄,簾外月朧明。   白首爲功名,舊山松竹老,阻歸程。欲將心事付瑤琴,知音少,絃斷有誰聽。」や、両宋・李清照の『訴衷情』に「夜來沈醉卸妝遲,梅萼插殘枝。酒醒薰破春睡,夢斷不成歸。  悄悄,月依依,翠簾垂。更挼殘蕊,更撚餘香,更得些時。」とある。

※擁衾思投誰:かけ蒲団を抱きしめて、誰(の胸の中)に(身を)投げだそうか(と悩んでいる)。 ・擁衾:かけ蒲団を抱きしめる。





◎ 構成について

韻式は「AAAAAAAAAA」。韻脚は「望吹癡之懷隨時涯期誰」で、平水韻上平四支など。次の平仄はこの作品のもの。

○●●○●,
○○●●○。(韻)
○○●○●,
○○●●○。(韻)
●○◎●○,
○○●◎○。(韻)
○●○●●,
●●○●○。(韻)
●●○○○,
○○●○○。(韻)
○○●●●,
●●○○○。(韻)
●●○●○,
○●○○○。(韻)
○○●○●,
●●○○○。(韻)
○●●●●,
○●●●○。(韻)
○○●●●,
○○○○○。(韻)

2009.6. 7
     6. 8
     6. 9
     6.10
     6.11

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