即目三首其一 | |
清・王士禛 |
蒼蒼遠煙起,
槭槭疏林響。
落日隱西山,
人耕古原上。
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即目 三首 其の一
蒼蒼 として遠煙 起 こり,
槭槭 として疏林 に響 く。
落日 西山 に隱 れ,
人は耕 す古原 の上。
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◎ 私感註釈
※王士禛:清代の詩人。字は貽上、また子眞。号して漁洋。士禎と名を賜る。1634年(明・崇禎七年)~1711年(洪煕五十年)。
※即目三首其一:目にふれた光景をそのままうたった詩。これは全三首の中の第一首。 ・即目:目にふれる。目にふれたもの。
※蒼蒼遠煙起:草木の青々とした遠くの霞(かすみ)が起こり。 ・蒼蒼:〔さうさうcang1cang1○○両韻〕草木があおあおと茂るさま。空のあおあおとしたさま。また、老いたさま。頭髪の白髪交じりのさま。ここは、前者の意。中唐・白居易の『村夜』に「霜草蒼蒼蟲切切,村南村北行人絶。獨出前門望野田,月明蕎麥花如雪。」や同 ・白居易の『賣炭翁』に「賣炭翁,伐薪燒炭南山中。滿面塵灰煙火色,兩鬢蒼蒼十指黑。賣炭得錢何所營,身上衣裳口中食。可憐身上衣正單,心憂炭賤願天寒。夜來城外一尺雪,曉駕炭車輾氷轍。牛困人飢日已高,市南門外泥中歇。翩翩兩騎來是誰,黄衣使者白衫兒。手把文書口稱敕,迴車叱牛牽向北。一車炭重千餘斤,宮使驅將惜不得。半匹紅綃一丈綾,繋向牛頭充炭直。」とある。 ・遠煙:遠くの靄(もや)。
※槭槭疏林響:ザワザワと(風が葉を動かす音が)樹木のまばらに生えている林に響いている。 ・槭槭:〔さくさく;se4se4(「さくさく」との読みは『大漢和辭典』巻六に拠る。「se4se4」との音は『漢語大詞典』第4に拠る)●●〕ザワザワ。サワサワ。風が葉を動かす音。木の葉の落ちる音。擬声語。(蛇足になるが、〔せきせき等;qi4qi4等〕ではない)。 ・疏林:〔そりん;shu1lin2○○〕樹木のまばらに生えている林。樹木が密生していない林。
※落日隠西山:夕日が西の方の山にかくれ(ようとして)。 ・落日:沈もうとする太陽。夕日。後出・李商隱の『登樂遊原』でいえば「夕陽」。(青字参照)。 ・隱:かくれる。こもる。 ・西山:西の方の山。殷末周初・伯夷の『采薇歌』に「登彼西山兮,采其薇矣。以暴易暴兮,不知其非矣。神農虞夏,忽焉沒兮,吾適安歸矣!吁嗟徂兮,命之衰矣!」とあり、初唐・劉希夷(劉廷芝)の『公子行』に「天津橋下陽春水,天津橋上繁華子。馬聲廻合青雲外,人影搖動綠波裏。綠波蕩漾玉爲砂,青雲離披錦作霞。可憐楊柳傷心樹,可憐桃李斷腸花。此日遨遊邀美女,此時歌舞入娼家。娼家美女鬱金香,飛去飛來公子傍。的的珠簾白日映,娥娥玉顏紅粉妝。花際裴回雙蛺蝶,池邊顧歩兩鴛鴦。傾國傾城漢武帝,爲雲爲雨楚襄王。古來容光人所羨,況復今日遙相見。願作輕羅著細腰,願爲明鏡分嬌面。與君相向轉相親,與君雙棲共一身。願作貞松千歳古,誰論芳槿一朝新。百年同謝西山日,千秋萬古北邙塵。」とある。
※人耕古原上:人は(なおも)由緒ある古くからの原の上を耕している。 ・古原:由緒ある古くからの原。晩唐・李商隱の『登樂遊原』に 「向晩意不適,驅車登古原。夕陽無限好,只是近黄昏。」とある。 ・上:ほとり。…で。…に。場所を表す辞。
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◎ 構成について
韻式は、「aa」。韻脚は「響上」で、平水韻上声二十二養。この作品の平仄は、次の通り。
◎◎●○●,
●●○○●。(韻)
●●●○○,
○○●○●。(韻)
2011.3.19 3.20 |
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