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  絶命詩 

                                    
明末・清初・杜氏婦
                        
不忍將身配滿奴,
親攜酒飯祭亡夫。
今朝武定橋頭死,
留得清風故國都。





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                絶命詩

(しの)ばず 身を()って  滿奴(まん ど )(はい)するに,
(した)しく 酒飯(しゅはん)(たづさ)へて  亡夫(ばう ふ )を祭る。
今朝(こんてう) 武定( ぶ てい)橋頭(けうとう)に死し,
清風を (とど)()ん  故國の(みやこ)に。


             ******************


◎ 私感訳註:


◎ 私感訳註:

※絶命詩:絶命する直前に作って遺す詩。辞世の詩文。辞世。 *漢民族の明朝が滅び、満洲民族の清朝が始まった当初、敗亡した明朝に関わる女性は、戦勝した満洲人側のものとなるため、悲劇が起こった。この辞世の詩の作者は、杜という結婚した女性の身にもこの悲劇が起こり、彼女は、亡き夫の慰霊祭を行った後、南京の武定橋のほとりで自殺した。その辞世の詩。

※不忍将身配満奴:(我が)身を満洲民族の者に添わせるのには、耐えられない。 ・不忍:耐えられない。忍びない。 ・将:…を。…をもって。 ・配:つれそわせる。めあわせる。あてがう。 ・満奴:満洲民族のやつ。 *満洲民族の人を貶めた称呼。清朝は満洲民族の王朝。

※親携酒飯祭亡夫:みずから酒と食事持って、亡き夫をまつった。 ・親携:みずから持って。 ・酒飯:酒と食事。 ・祭:まつる。死者や天や神を祭る。

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緑色矢印の所が武定橋

※今朝武定橋頭死:(貞節を守るため、)この朝、(南京の)武定橋の橋のたもとで死ぬ(ことは)。 ・今朝:けさ。きょう。こんにち。 ・武定橋:現・(江蘇省)南京市の秦淮区にある橋の名。南宋の淳熙年間に造られた。「嘉瑞浮橋」、(下浮橋に対して)「上浮橋」とも呼ばれ、景定二年(1261年)に馬光祖により再建された。明初に武定橋と改称された。 ・橋頭:橋のたもと。

※留得清風故国都:長い歴史をもつ国のみやこ(=南京)に清らかな風格を留めることになろう。 ・留得:とどめられる。【動詞+得】で、結果・程度・可能を表す。南宋・文天祥の『過零丁洋』に「辛苦遭逢起一經,干戈寥落四周星。山河破碎風飄絮,身世浮沈雨打萍。惶恐灘頭説惶恐,零丁洋裏歎零丁。人生自古誰無死,
留取丹心照汗青。」とある。 ・清風:清らかな風格。また、すがすがしい風。ここは、前者の意。 ・故国都:ここでは、南京のことになる。前王朝・明の首都は南京で、武定橋のあるところ。 ・故国:長い歴史をもつ国。祖国。ふるさと。盛唐・杜甫の『解悶』に「一辭故國十經秋,毎見秋瓜憶故丘。今日南湖采薇蕨,何人爲覓鄭瓜州。」とあり、唐・張祜『何滿子』に「故國三千里,深宮二十年。一聲何滿子,雙涙落君前。」とある。





◎ 構成について

韻式は「AAA」。韻脚は「奴夫都」で、平水韻上平七虞。次の平仄はこの作品のもの。

●●○○●●○,(韻)
○○●●●○○。(韻)
○○●●○○●,
○●○○●●○。(韻)
2013.10. 5
     10.28
     10.29
     10.30

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