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游月瀬詩
頼支峰

暗香引我出山家
穿竹一蹊橫又斜
月上林梢天宇白
不知是月是梅花





  暗香引我出山家,穿竹一
  蹊橫又斜。 月上林梢
  天宇白,不知是月是梅花。
    游月瀬詩    
          支峰間人
(伊勢丘人先生釈文・撮影)


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月ヶ瀬(つき が せ)に游ぶの詩

暗香(あんかう) (われ)(さそ)ひて  山家(さん か )()
竹を穿(うが)一蹊(いっけい)は  (よこ) ()(なな)めなり
月 林梢(りんせう)(のぼ)りて  天宇(てん う ) (しら)
()らず  ()れ月なるか ()梅花(ばいくゎ)なるかを




        *****************





◎ 私感註釈

※頼支峰:頼山陽の三男(次男は早逝)。名は復。幼名は又二郎。

※游月瀬詩:月ヶ瀬に遊んだ時の詩。 *伊勢丘人先生が所蔵されている頼支峰詩の掛け軸に書かれている詩。釈文も伊勢丘人先生に因る。 ・月瀬:月ヶ瀬(つきがせ)。奈良県の北東端にある梅の名所。右の地図中央の川は名張川の渓谷で、渓谷に映える梅林で有名。

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月ヶ瀬梅渓
 
月ヶ瀬梅渓(平成23.3.10) 
 
梅渓(名張川)を見下ろす(平成23.3.10) 

※暗香引我出山家:どこからともなく漂ってくる香りに誘い出されて、山家を出て。 ・暗香:〔あんかう;an4xiang1●○〕どこからともなく漂ってくる香り。北宋・林逋の『山園小梅』に「衆芳搖落獨暄妍,占盡風情向小園。疎影橫斜水淸淺,暗香浮動月黄昏。霜禽欲下先偸眼,粉蝶如知合斷魂。幸有微吟可相狎,不須檀板共金尊。」とあり、中唐・白居易の『春夜宿直』に「三月十四夜,西垣東北廊。碧梧葉重疊,紅藥樹低昂。月砌漏幽影,風簾飄闇香。禁中無宿客,誰伴紫微郎。」とあり、両宋・李清照の『醉花陰』に「薄霧濃雲愁永晝,瑞腦消金獣。佳節又重陽,玉枕紗廚,半夜涼初透。   東籬把酒黄昏後,暗香盈袖。莫道不消魂,簾捲西風,人似黄花痩。」とある。 ・引:さそう。まねく。案内する。みちびく。 ・山家:山中の家。やまが。

※穿竹一蹊横又斜:竹藪を通り抜ける一筋の道は、横になったり斜めになったりしている。 ・穿竹:竹藪を通り抜ける。竹藪をくぐりぬける。竹叢をつっきる。篁(たかむら)をうがつ。南宋・陸游の『鷓鴣天』に「家住蒼煙落照間,絲毫塵事不相關。斟殘玉瀣行
穿竹,卷罷黄庭臥看山。   貪嘯傲,任衰殘,不妨隨處一開顏。元知造物心腸別,老卻英雄似等閒!」とある。 ・蹊:〔けい;xi1○〕こみち。みち。 ・横又斜:横になったり斜めになったり。≒橫斜〔わうしゃ〕。前出・林逋の『山園小梅』に「疎影橫斜水淸淺,暗香浮動月黄昏。」とあり、父の頼山陽の『月瀬梅花勝耳之久,今茲糺諸友往觀,得六絶句之四』に「兩山相蹙一溪明,路斷游人呼渡行。水與梅花爭隙地,倒涵萬玉影斜橫。」では、「影橫斜」とあり、それを踏まえている。ただ、父・頼山陽の詩では、梅の姿のさまに使ったが、支峰は山道の曲がりくねったさまの表現に使う。

※月上林梢天宇白:月が林の木の梢(こずえ)に昇り、大空が白くなり。 ・月上:月が昇る。 ・林梢:〔りんせう;lin2shao1○○〕林の木のこずえ。 ・天宇:おおぞら。天界。また、天下。ここは、前者の意。 ・白:白くなる。しらむ。しらぐ。動詞。

※不知是月是梅花:(そのため)そこが月であるのか、梅の花であるのか、分からなかった。 *この句は「不知・〔是月?/是梅花?〕」という構成。 ・不知:分からない。一体、どうして…のか、分からなかった。 ・是月是梅花:(それは/そこが)月であるのか、梅の花であるのか。


               ***********




◎ 構成について

韻式は、「AAA」。韻脚は「家斜花」で、平水韻下平六麻。この作品の平仄は、次の通り。

●○●●●○○,(韻)
○●●○○●○。(韻)
●●○○○●●,
●○●●●○○。(韻)
平成23.5.13
      5.14
      5.16




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