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聞赤十字社看護婦赴歐洲 | ||
大正天皇 |
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白衣婦女氣何雄, 胸佩徽章十字紅。 能療創痍盡心力, 回生不讓戰場功。 |
白衣の婦女 氣何 ぞ雄 たる,
胸に佩 ぶ徽章 は 十字の紅 。
能 く創痍 を療 して心力 を盡 せば,
回生 讓 らず 戰場の功に。
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◎ 私感註釈
※大正天皇:第百二十三代天皇。明治十二年(1879年)~大正十五年(1926年)。幼称は明宮(はるのみや)。諱は嘉仁(よしひと)。
※聞赤十字社看護婦赴欧洲:(日本)赤十字社の看護婦が(第一時世界大戦に際して)欧洲に赴く、ということを耳にして。 *大正三年(1914年)の作。歴史年表によれば、第一時世界大戦が起こった大正三年(1914年)十二月、赤十字社より救護班を結成して、イギリスへ派遣とある。『帝國各國間醫術開業互認協定雜件 日英間ノ部 開業醫資格問題』に詳しい。なお、森鴎外はこの詩に和して『奉和聖製詠看護婦』「裙釵還有丈夫雄,好躡沙場戰血紅。應向汗靑增故事,玉纖爭奏裹創功。」を作った。 ・聞:(…を)耳にする。(…と)伝え聞く。 ・赴:おもむく。行く。 ・欧洲:「欧羅巴洲」の略で、ヨーロッパ。
※白衣婦女気何雄:白衣の女性の気概は何と雄々しいものだろうか。 ・白衣:医療関係者などが着る白色の外衣。また、無位無冠の人。ここは、前者の意。 ・気:意気。 ・何:何と。感嘆を表す。 ・雄:雄々しい。
※胸佩徽章十字紅:胸に附けているバッジは、赤い十字である。 ・胸佩:胸に附けて佩(お)びる。 ・徽章:〔きしゃう;hui1zhang1○○〕バッジ。 ・十字紅:赤十字を謂う。
※能療創痍尽心力:よく傷を治療して、精神力を尽くしている(が)。 ・能:よく。 ・療:〔れう;liao2●〕治療する。病気を治す。 ・創痍:〔さうい;chuang4yi2●○〕刃物などでからだに受けた傷。 ・痍:〔い;yi2○〕傷。きりきず。 ・尽:つくす。動詞。 ・心力:精神力。心の力。心の働き。
※回生不譲戦場功:その蘇生の技倆は、(男子の)戦場での功績にひけを取らない(ものだ)。 ・回生:蘇生。生き返ること。甦ること。ここでは救命の技術を謂う。 ・不譲:おとらない。負けない。ゆずらず。 ・戦場功:将兵の軍陣での功績。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「雄紅功」で、平水韻上平一東。この作品の平仄は、次の通り。
●○●●●○○,(韻)
○●○○●●○。(韻)
○●●○●○●,
○○●●●○○。(韻)
平成24.6.14 6.15 |
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