石田三成 | ||
川田瑞穂 |
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欲爲豐家致寸忠, 關原一戰氣凌空。 金吾若守男兒節, 不使老雄歌大風。 |
豐家 の爲に寸忠 を致さんと欲 し,
關原 の一戰氣 空 を凌 ぐ。
金吾 若 し 男兒の節 を守らば,
老雄 をして大風 を歌は使 めず。
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◎ 私感註釈
※川田瑞穂:大正・昭和の漢学者。明治十二年(1879年)〜昭和二十六年(1951年)。字は子果。雪山と号した。土佐(高知県)の人。大東文化学院助教授、早稲田大学高等師範部教授となった。
※石田三成:安土桃山時代の武将。永禄三年(1560年)〜慶長五年(1600年)。豊臣氏五奉行の一。治部少輔。正継の子。初名は三也。通称は佐吉。近江坂田郡石田村の人。若くして豊臣秀吉に賤ヶ岳の戦に功あり、以後重用され、やがて奉行となる。秀吉の死後、徳川家康の勢力を忌み、遺子秀頼を擁して美濃関ヶ原に家康と戦って敗北し、京で斬首された。
※欲為豊家致寸忠:豊臣家のために、わずかながらも忠節を尽くしたいと思って。 ・欲為:〔yu4wei4●●〕…のために…したい。蛇足になるが、〔yu4wei2●○〕では、したい(ことをする)意。 ・豊家:豊臣家のこと。 ・致:ささげる。いたす。 ・寸忠:わずかな忠義。
※関原一戦気凌空:関ヶ原の戦いでの意気、空高く舞い上がっている。 ・関原一戦:関ヶ原の戦いのこと。(関ヶ原:美濃国関ヶ原(現・岐阜県不破郡関ヶ原町))。慶長五年(1600年)九月、石田三成を中心とする西軍と徳川家康の率いる東軍によって、関ヶ原で行われた「天下分け目」の戦い。西軍の小早川秀秋が、東軍に寝返りをしたため、西軍は総崩れとなり、東軍の大勝利となった。 ・気:意気。正気。 ・凌空:そそり立つ。空高く舞い上がる。
※金吾若守男児節:小早川秀秋が、もしも男の節操(≒(裏切ることのない忠義)を貫いていたのならば。 ・金吾:鳥の名にちなんで附けた漢代に宮門の警備や天子の護衛に当たった武官名。「執金吾」のこと。また、衛門府の唐名。ここでは、小早川金吾秀秋(通称:金吾)を謂う。豊臣秀吉の正室・高台院の兄・木下家定の子で、小早川隆景の養嗣子。関ヶ原の戦いで東軍に寝返り、功によって備前・備中・美作に50万石を領した。 ・若:もしも…たら。もし。仮定を表現する。 ・男児節:男としてのみさお。ここでは(裏切ることなく)忠節を貫くことを謂う。
※不使老雄歌大風:徳川家康に(凱歌)『大風歌』を歌わせなかったのに。 ・不使:…に…をさせない。…をして…しめず。使役の否定の表現。 ・老雄:年をとり、経験を積んだ英雄。ここでは、徳川家康を謂う。 ・歌:うたう。動詞。 ・大風:漢・高祖(劉邦)の『大風歌』「大風起兮雲飛揚。威加海内兮歸故ク。安得猛士兮守四方!」を指す。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は、「忠空風」。平水韻上平一東。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●●○,(韻)
○○●●●○○。(韻)
○○●●○○●,
●●●○○●○。(韻)
平成26.11. 9 11.10 |
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