秋江 | ||
太田錦城 |
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蓼花半老野塘秋, 水落空江澹不流。 渡口漁家將夕照, 一雙白鷺護虚舟。 |
蓼花 半 ば老いたり野塘 の秋,
水 は空江 に落ちて澹 として流れず。
渡口 の漁家 將 に夕照 にして,
一雙 の白鷺 虚舟 を護 る。
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◎ 私感註釈
※太田錦城:江戸中期の儒者。明和二年(1765年)〜文政八年(1825年)。名は元貞。字は公幹。通称は才佐。加賀の人。皆川淇園・山本北山らに学び、折衷学派を大成。三河吉田藩儒に仕官。後に、故郷の金沢藩に招かれ、その地に没す。
※秋江:秋の川。 *作者は「空江」「虚舟」、また「半老」「夕照」「澹不流」と使い、自身の心の中を反映させて詠ったか。
※蓼花半老野塘秋:タデの花は、半(なか)ばは衰えている野中(のなか)の土手(どて)の秋(の風情であり)。 ・蓼:〔れう;liao3●〕タデ。タデ科タデ属の植物の総称。 ・野塘:野中のつつみ。「野-」:いなかの…。野中の…。「塘」:つつみ。どて。また、いけ。ためいけ。
※水落空江澹不流:水は、人気(ひとけ)のないひっそりとした川に落ちて、ゆったりとして、流れない。 ・空江:人気(ひとけ)のないひっそりとした川。 ・澹不流:ゆったりとして、流れない。 ・澹:〔たん;dan4●〕たゆとう。水がゆったりと動くさま。おだやか。静かである。安らかで静かである。また、淡い。
※渡口漁家将夕照:渡し場の漁師の家は、夕映(ゆうば)えに包まれようとしていて。 ・渡口:渡し場。 ・漁家:漁師の家。 ・将夕照:夕焼けになろうとしている。ここの「将」の用法から考えて、「夕照」を動詞的に使っている。 ・夕照:夕日の照り返し。夕映え。夕焼け。
※一双白鷺護虚舟:一つがいのシラサギが空(から)の小舟を護(まも)っている(かのように、その周りを飛んでいる)。 ・一双:二つで、ひと組みをなすもの。 ・白鷺:シラサギ。 ・虚舟:空(から)の小舟。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「秋流舟」で、平水韻下平十一尤。この作品の平仄は、次の通り。
●○●●●○○,(韻)
●●◎○●●○。(韻)
●●○○○●●,
●○●●●○○。(韻)
平成30.1.18 |
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