・解甲: 軍装を解く。
・凍原: ツンドラ地帯。
・強労: 強制労働。(働は国字)
・宣言: 捕虜に強制労働をさせてはならないとの国際条約宣言。
・紅涙: ここでは、血涙の方の意。
・望郷: 戦後爆発的に流行した『異国の丘』の歌詞 “今日も暮れゆく 異国の丘に…” の源流を指す。
・赤門: 赤化(共産主義)の門。
・骨立: やせ衰えること。
・俘囚: 捕虜を指すが、俘囚でも捕虜でもなく正しくは『不法被抑留者』である。
・幾命: 亡くなられた方は二十万とも三十万ともいわれる。
・後昆: 後世の人。
<解説>
この詩は律詩の為、文字の使用に制限があり、作者としても隔靴掻痒の感があります。したがって現実に筆舌に尽くし難いご苦労を体験された多くの方々には不満が多々あると思います。
頷聯の「望郷・帰国」は殆んど同意義ですが、時間(年月)的推移を、不遜にも当事者に成り代わり気持ちを忖度したつもりです。
作者わたくしは昭和26年ごろ(当時16歳)、H県の土木現場監督の某氏に数回接触したことがあります。彼はシベリアから帰国された方で、当時ソ連の宣伝に来たように、将来日本の赤化を奨励して滔々と話していたことを覚えています。
昭和20年8月、日本軍が軍装を解いた後、ソ連が国際的にも不法に多くの人々をシベリアに連行して、無償の労働力に利用し、またこれ等の人々が帰国してからの、我国が共産化するための先兵に思想教育したのでは無いかということは、わたくしが成年に達してようやく理解するようになりました。
詩の第四句 『帰国の懐は 赤門に降ると欺く』 はそのことを意味します。すなわち望郷の念に堪え難く、ソ連の宣伝員になった振りをした方も多くいらっしゃたのでは無いかと思います。
作詩の意図は尾聯(七八句)に込めました。参照。
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