採蓮
	無名氏・『太平廣記』卷第三百五 神十五『王法智』

忽然(こつぜん)として　湖上　　片雲(へんうん) 飛び，
覺(おぼ)えず　舟中(しうちゅう)　　雨 衣(ころも)を濕(うるほ)す。
折(を)り得(え)たる蓮花(れんくゎ)　　渾(すべ)て忘却(ばうきゃく)し，
空しく　荷葉( か えふ)を將(も)って　　頭を葢(おほ)ひて歸る。

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◎　私感註釈

※採蓮：この詩は『歴代絶句類選』二の第十八葉（写真）にある。この詩は『太平廣記』卷第三百五 神十五の『王法智』の章で「浦口潮來初�E漫，蓮舟搖颺採花難。春心不愜空歸去，會待潮平更折看。」に続いて朗誦されたもの（第７分冊２４１４頁 中華書局2003年北京）。

『歴代絶句類選』二 第十八葉

※忽然湖上片雲飛：にわかに湖の上にちぎれ雲が浮かんで来て。　・忽然：不意に。たちまち。にわかに。急に。　・片雲：きれぎれの雲。断雲。ちぎれ雲。

※不覚舟中雨濕衣：いつのまにか舟の中では、雨が衣（ころも）を濡らし　・不覚：いつのまにか。知らず知らず。思わず。　・舟：こぶね。　

※折得蓮花渾忘却：折りとったハスの花をすべて、すっかり忘れてしまい。　・-得：「折得」動詞の後に置き、その行為・動作の進行状況・結果・影響を表す語を導く。　・蓮花：ハスの花。　・渾：〔こん；hun4●での意〕すべて。まったく。〔hun2○〕は別義。ただし、現代語ではhun2○のみ）。　・忘却：（すっかり）忘れてしまう。「-却」は動詞の後に附き、「…しおわる」「…してしまう」のおもむきを示す。

※空将荷葉蓋頭帰：いたずらにハスの葉を頭に被せて帰って来た。　・空：いたずらに。無駄に。むなしく。　・将：…を（もって）。…を。また、（…を）持つ。ここは、前者の意で、〔將＋名詞（性）＋動詞〕のように賓語（目的語）を動詞の前へ出す時（将＋荷葉＋蓋）に用いる。ここでは､「以」や「用」に似た働きをする。　・荷葉：ハスの葉。　・蓋：〔がい（かい）；gai4●〕おおう。かぶせる。ふたをする。中華書局版『太平廣記』では「葢」で、蓋の本字。『歴代絶句類選』の「盖」は、蓋の俗字。　・帰：本来あるべきところ（自宅・故郷・墓所）へもどっていく。

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◎　構成について

韻式は、「AAA」。韻脚は「飛衣歸」で、平水韻上平五微。この作品の平仄は、次の通り。

●○○●●○○，（韻）
●●○○●●○。（韻）
●●○○○●●，
○◎○●●○○。（韻）

２０１１．１１．６ 　　　　　１１．７

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