投荒萬死鬢毛斑, 生出瞿塘灧澦關。 未到江南先一笑, 岳陽樓上對君山。 |
雨中 岳陽樓に登りて君山を望む
荒 に投じ 萬死鬢毛 斑 なり,
生きて瞿塘 の灧澦 關 を出 づ。
未 だ 江南に到らざるに先 づ 一笑し,
岳陽樓 上君山 に對す。
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◎ 私感訳註:
※黄庭堅:北宋の詩人。慶暦五年(1045年)〜崇寧四年(1105年)。字は魯直、号は涪翁。山谷道人。洪州の分寧(現・江西省修水県)の人。
※雨中登岳陽楼望君山:雨の中を岳陽楼に登って、君山を望み見る。 ・岳陽楼:現・湖南省岳陽市の城壁の西門楼。洞庭湖に臨み、湖中の君山に対している。 ・君山:洞庭湖中の山(小島)の名。現・湖南省岳陽市の西南にある。政争によって屡々貶謫された。この詩はおそらく、その貶謫の途上で、「やっと四川の奥地から江南の仙境へ出て来られた」という感慨を詠ったもの。
※投荒萬死鬢毛斑:遠くへ流されて、何度も死ぬ思いをして、耳際の髪の毛はしらが混じりになって。 ・投荒:〔とうくゎう;tou2huang2○○〕遠くへ流される。遠隔の地に追放する。 ・萬死:ここでは、何度も死ぬ思いをする意で使われる。本来の意は、死ぬ可能性の甚だ多いこと。助かる見込みが全くないこと。=百死。また、罪の甚だ重いこと。 ・鬢毛:耳際の髪の毛。 ・斑:まだらである。ここでは「鬢斑」を謂い、しらが混じりの鬢(びん)の毛の意。
※生出瞿塘灔澦関:生きて、瞿塘峡(くとうきょう)の難所・灔澦堆(えんよたい)を抜け出る(ことができた)。 ・瞿塘:〔くたう;Qu2tang2○○〕瞿塘峡(くとうきょう)〔Qu2tang2-xia2〕のこと。四川省の長江三峡の一。四川から・湖北に到る間の長江本流に位置する峡谷。 ・灔澦:〔えんよ;Yan4yu4●●〕灔澦堆(えんよたい)〔Yan4yu4-dui1〕のことで、瞿唐峡の入口にある岩礁の名。一帯は、水量が多く急流で、岩礁がある難所。
※未到江南先一笑:まだ江南には着いてはいないが、(無事に難所を通り抜けられたことに)まずちょっとにこりとして。 ・江南:長江下流の南の地方で、蘇州、無錫、杭州といった、文化的に成熟し、経済的に発達した一帯を指す。 ・一笑:ちょっとにこりとする。軽く笑う。 ・一+〔動詞〕:ちょっと(…する)。わずかに(…する)。少し(…する)。
※岳陽楼上對君山:岳陽楼の上から(洞庭湖の向こう側(=西)に見える)君山と向かい合った。
◎ 構成について
2012.2. 7 2. 8 2.10 |