范成大四時田園雑興春日　詩詞世界碇豊長の詩詞：漢詩 Fan Chengda

四時田園雑興春日
	南宋・范成大

柳花深巷午雞聲，
桑葉尖新綠未成。
坐睡覺來無一事，
滿窗晴日看蠶生。

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四時(しいじ)田園(でんゑん)雑興(ざっきゃう) 春日(しゅんじつ)

柳花(りうくゎ)　深巷(しんかう)　　午雞( ごけい)の聲，
桑葉(さうえふ)は　尖(さき) 新(あら)たにして　　綠(みどり) 未だ成らず。
坐睡( ざすゐ)より　覺(さ)め來(きた)りて　　一事(いちじ) 無く，
滿窗(まんさう)の晴日(せいじつ)　　蠶(かひこ)の生まるるを看る。

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◎　私感註釈

※范成大：南宋の愛国詩人、田園詩人と謂われる。１１２６年（靖康元年）～１１９３年（紹煕四年）。字は致能で、石湖居士と号している。江蘇省呉県の人。司戸参軍、参知政事…等を歴任した。『石湖居士詩集』『石湖詞』等がある。

※四時田園雑興春日：四季の田園のさまざまな事物に感じて感興を述べた詩。 *長閑（のどか）な春の田舎生活を描写している。　・四時：〔しいじ；si4shi2●○〕四季。春・夏・秋・冬の四つの季節の総称。　・田園：いなか。田と畑。　・雑興：さまざまな事物に感じて感興を述べた詩の題。　・春日：作者は四季の「田園雑興」を「春日」「晩春」「夏日」「秋日」「冬日」とそれぞれを詠い、各十二首で、全六十首ある。（本サイトでは、他のページでも採り上げているので、要参照）。

※柳花深巷午鶏声：柳の花（の咲く）奥深くいりこんだ村里で、昼に鳴くニワトリの声がする。　・柳花：柳の花。なお、咲いた後、綿毛のある種子が柳絮（りゅうじょ）となり、風に舞う。南唐後主・李煜の『望江梅』に「閑夢遠，南國正芳春。船上管絃江面淥，滿城飛絮輥輕塵。忙殺看花人。　　　閑夢遠，南國正淸秋。千里江山寒色暮，蘆花深處泊孤舟。笛在月明樓。」とあり、北宋・司馬光の『居洛初夏作』に「四月淸和雨乍晴，南山當戸轉分明。更無柳絮因風起，惟有葵花向日傾。」とあり、北宋・蘇軾の『和孔密州五絶』東欄梨花に「梨花淡白柳深靑，柳絮飛時花滿城。惆悵東欄一株雪，人生看得幾淸明。」とあり、朱淑眞の『蝶戀花』送春「樓外垂楊千萬縷，欲系青春，少住春還去。猶自風前飄柳絮，隨春且看歸何處。　　　綠滿山川聞杜宇，便做無情，莫也愁人苦。把酒送春春不語，黄昏卻下瀟瀟雨。」とある。　・深巷：奥深くいりこんだまち筋。奥深くいりこんだ村里。　・午鶏：昼に鳴くニワトリ。

※桑葉尖新緑未成：クワの木の葉は、枝の先に新たに著（つ）けてはいるが、緑色の繁みとまではなっていない｡　・桑葉：クワの葉。かいこの飼料となる。　・尖：ここでは､枝の先のことになる｡

※坐睡覚来無一事：居眠り（昼寝）から、目覚めてみれば何事も（変化）なく。　・坐睡：〔ざすゐ；zuo4shui4●●〕居眠りする。　・覚来：目覚めてくる意の表現。　・-来：…てくる。…てきた。方向補語。〔動詞＋来〕と動詞の後に用いて、話題の中心点へ近づけさせる動きをする。　・無一事：何事もない。

※満窓晴日看蚕生：窓いっぱいに溢れる晴れた太陽の光の下で、蚕蛾（かいこが）が生まれてくるのを見つめている。　・満窓：窓いっぱいに溢れるさま。　・晴日：晴れた太陽の光。　・看：意識的にみつめる意の、みる。　・蚕：〔さん；can2○〕かいこ。蚕蛾（かいこが）。かいこの繭（まゆ）から、絹糸が採れる。これがため、農家の重要な副業となり、そこでは、飼料となる桑の栽培もされている。

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◎　構成について

韻式は、「AAA」。韻脚は「聲成生」で、平水韻下平八庚。この作品の平仄は、次の通り。

●○○●●○○，（韻）
○●○○●●○。（韻）
●●●○○●●，
●○○●◎○○。（韻）