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陶者 | |
北宋・梅堯臣 |
陶盡門前土,
屋上無片瓦。
十指不霑泥,
鱗鱗居大廈。
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陶者
陶 き盡くす 門前の土,
屋上片 瓦 無し。
十指 泥に霑 らさずして,
鱗鱗 大廈 に居 す。
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◎ 私感註釈
※梅堯臣:北宋の詩人。咸平五年(1002年)~嘉祐五年(1060年)。字は聖兪。宣州宣城(現・安徽省宣城)の人。宣城は、古くは宛陵と呼ばれていたので、宛陵先生と呼ばれた。終生官途には恵まれなかったが、その詩名は「宋詩開山の祖」として知られる。『詩經』『楚辭』の「写実」「寄興」の継承を主張し、西崑派の無意味な言葉を連ねる浮薄な傾向に反対して「平淡」「閑遠」「発想は新しく、語句を練る」ことを主張した。その詩の多くは現実の生活を反映したもので、叙景・抒情の詩は清新で、深遠な意境を秘めている。
※陶者:焼き物を作る職人。陶工。 *貧しい労働者(詩の前半)と、手を汚すことなく享受する豊かな人(詩の後半)を対比させるように描写した詩。似た趣の詩に、北宋・張愈の『蠶婦』「昨日入城市,歸來涙滿巾。遍身羅綺者,不是養蠶人。」や、唐・李紳の『憫農』「春種一粒粟,秋成萬顆子。四海無閒田,農夫猶餓死。 鋤禾日當午,汗滴禾下土。誰知盤中餐,粒粒皆辛苦。」
がある。
※陶尽門前土:(貧しい陶器職人は)家の入口の土を焼き尽くして(瓦などの焼き物を作っているが)。 ・陶:焼き物を作る。動詞。 ・尽:しつくす。つきる。なくなる。 ・土:ここではかわらの原料としての土を謂う。
※屋上無片瓦:(貧しい陶器職人の)屋根の上には、かわら一枚すら無い。 ・屋上:屋根の上。 ・片瓦:かわら一枚すら。かわらのかけらも。「一片瓦」。 ・無片瓦:かわら一枚すら無い。かわらのかけらも無い。「無一片瓦」。「片」は量詞(助数詞)。…枚。平たく薄い形をしているものや、かけらになっているものを数える時に使う。
※十指不霑泥:(それに反して、お金持ちは瓦作りのために)手を泥で汚すということはなく。 ・十指:十本の指。 ・霑:〔てん;zhan1○〕(現代語:)くっつく。くっついて汚れる。また、(古語:)うるおす。湿(しめ)す。ここでは、現代語に通ずる意で使われている。 ・泥:どろ。土。
※鱗鱗居大廈:(それでいて、瓦が)うろこのように(美事に)ならんだ大きな家に住んでいる(ではないか)。*「居鱗鱗大廈」の意。 ・鱗鱗:〔りんりん;lin2lin2○○〕うろこのようにならぶさま。また、うろこのように鮮やかで美しいさま。また、うろこのようなさざなみのさま。ここは、前者の意。 ・居:住む。 ・大廈:〔たいか;da4sha4●●〕大きな家屋。(現代語では)ビルディング。
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◎ 構成について
韻式は、「aa」。韻脚は「瓦廈」で、平水韻上声二十一馬。この作品の平仄は、次の通り。
○●○●●,(韻)
●●○◎●。(韻)
●●●○○,
○○○●●。(韻)
2012.10.15 10.16 10.17 |
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