登飛來峰 | |
南宋・王安石 |
飛來山上千尋塔,
聞説雞鳴見日升。
不畏浮雲遮望眼,
自縁身在最高層。
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飛來峰に登る
飛來 山上 千尋 の塔,
聞説 く雞鳴 日の升 るを見ると。
畏 れず 浮雲の望眼 を遮 るを,
自 づから 身 最高層に在 るに縁 る。
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◎ 私感註釈
※王安石:北宋の政治家、改革者。文学者。1021年(天禧五年)〜1086年(元祐元年)。字は介甫。号は半山。撫州臨川(現・江西省臨川)の人。神宗のとき宰相となり、変法(制度改革)を倡え強行したが、司馬光らの反対に遭い、やがて失脚して引退する。散文に優れる。唐宋八大家の一人。
※登飛来峰:飛来峰に登って。 *山上の風光を詠むと共に、政治上のこと(天子の明徳を覆い遮る君側の奸との対決)を詠む。 ・飛来峰:浙江省の紹興城外の寶林山にあり、応天塔が山上にある。浙江省の杭州の霊隠山にあり、山上から御来光が望めるという。
※飛来山上千尋塔:飛来山の山上の千尋(ひろ)の高い塔(から)。 ・千尋塔:極めて高い塔。千尋(ひろ)の高さの塔。(宋代)1尋=8尺、1尺=0.3072mなので、1尋≒約2.4576mで、1000尋は約2457.6mとなる。
※聞説雞鳴見日升:聞くことには、夜明けに日が昇ってくるさまを見る(ことができる)ということだ。 ・聞説:聞くことには…ということだ。きくならく(…と)。 *伝聞を言い表す。 ・雞鳴:鶏(にわとり)が鳴く時刻。夜明け。 ・升:(日が)のぼる。=昇。
※不畏浮雲遮望眼:浮いて漂っている雲(/君側の奸)が、視界を遮(ってくる)るのを恐れない(のは)。 ・不畏:おそれない。 ・浮雲:空に浮いて漂っている雲。空に浮く雲のように、遠く離れていて、何の関係もないこと。あてにならないこと。ここでは、天子の明徳を覆い遮る君側の奸の意。盛唐・李白の『登金陵鳳凰臺』「鳳凰臺上鳳凰遊,鳳去臺空江自流。呉宮花草埋幽徑,晉代衣冠成古丘。三山半落天外,二水中分白鷺洲。總爲浮雲能蔽日,長安不見使人愁。」の意で使う。また、前漢・蘇子卿(蘇武)『詩四首』其四に「燭燭晨明月,馥馥秋蘭芳。芳馨良夜發,隨風聞我堂。征夫懷遠路,遊子戀故ク。寒冬十二月,晨起踐嚴霜。俯觀江漢流,仰視浮雲翔。良友遠別離,各在天一方。山海隔中州,相去悠且長。嘉會難再遇,歡樂殊未央。願君崇令コ,隨時愛景光。」とあり、『古詩十九首』之一『行行重行行』に「行行重行行,與君生別離。相去萬餘里,各在天一涯。道路阻且長,會面安可知。胡馬依北風,越鳥巣南枝。相去日已遠,衣帶日已緩。浮雲蔽白日,遊子不顧返。思君令人老,歳月忽已晩。棄捐勿復道,努力加餐飯。」とあり、中唐・韋應物の『淮上喜會梁州故人』に「江漢曾爲客,相逢毎醉還。浮雲一別後,流水十年間。歡笑情如舊,蕭疏鬢已斑。何因不歸去,淮上有秋山。」とあり、南宋(〜元)・文天は『正氣歌』で「天地有正氣,雜然賦流形。下則爲河嶽,上則爲日星。於人曰浩然,沛乎塞蒼冥。皇路當C夷,含和吐明庭。時窮節乃見,一一垂丹。在齊太史簡,在晉董狐筆。在秦張良椎,在漢蘇武節。爲嚴將軍頭,爲嵇侍中血。爲張睢陽齒,爲顏常山舌。或爲遼東帽,C操児u雪。或爲出師表,鬼~泣壯烈。或爲渡江楫,慷慨呑胡羯。或爲撃賊笏,逆豎頭破裂。是氣所磅礴,凜烈萬古存。當其貫日月,生死安足論。 地維ョ以立,天柱ョ以尊。三綱實繋命,道義爲之根。嗟予遘陽九,隸也實不力。楚囚纓其冠,傳車送窮北。鼎鑊甘如飴,求之不可得。陰房闃鬼火,春院閟天K。牛驥同一p,鷄棲鳳凰食。一朝蒙霧露,分作溝中瘠。如此再寒暑,百沴自闢易。哀哉沮洳場,爲我安樂國。豈有他繆巧,陰陽不能賊。顧此耿耿在,仰視浮雲白。悠悠我心悲,蒼天曷有極。哲人日已遠,典型在夙昔。風檐展書讀,古道照顏色。」と使う。 ・遮:さえぎる。 ・望眼:みつめる眼差し。
※自縁身在最高層:(我が)身が(塔の上の/政治上の)最上階にいることによるからだ。 ・自:おのずから。=只。「自縁」=「只縁」。 ・縁:…のため。…による。わけ。 ・在:…に(いる/ある)。 ・最高層:最上階。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「升層」で、平水韻下平十蒸。この作品の平仄は、次の通り。
○○○●○○●,
○●○○●●○。(韻)
●●○○○◎●,
●○○●●○○。(韻)
2013.7.9 |
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