去年人別花正開, 今日花開人未囘。 紫恨紅愁千萬種, 春風吹入手中來。 |
花を折る仕女
去年 人と別れしとき 花正 に開 き,
今日 花開 くとき 人未 だ囘 らず。
紫恨 紅愁 千萬種 ,
春風 手中 に吹き入 り來 る。
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◎ 私感訳註:
※沈周:〔しんしう;Shen3Zhou1〕。明代の書家・画家。宣徳二年(1427年)〜正徳四年(1509年)。字は啓南。号して石田・白石翁・玉田生・竹居主人等。科挙に応じることはなく詩文や書画に専念した。文人画「呉派」の創始者。享年八十二歳(数え八十三歳)。著作に『石田集』や『客座新聞』等がある。
※折花仕女:(木の枝に咲く)花を折り取る宮女の絵についての詩。 ・折花:(木の枝に咲く)花を折り取る。後出・「紫恨紅愁」の想い(=うらめしさと悲しさ)で、花を折り取っている。 ・仕女:宮女。官女。
※去年人別花正開:去年、人(=愛する男性)と別れた時には、花がちょうど咲いていた。 *「去年人別花正開,今日花開人未回」は対句表現。 ・人:ひと。ここでは愛する男性を謂う。 ・別:別れる。 ・花正開:花がちょうど咲いている意。
※今日花開人未回:今日、(あの時から一年経って、また)花が咲(く季節になっ)たが、(あの)人は、(約束通りに戻ってくるはずなのに)まだ戻ってこない。 ・人未回:(別れていった、愛する)人は、まだ戻ってこない意。 ・回:帰る。もどる。
※紫恨紅愁千万種:色とりどりに咲き乱れている多くの(春の)花に接していると、うらめしさや悲しさが、種々湧き起こってくる。 ・紫恨紅愁:色とりどりに咲き乱れている花に接すると、うらめしさや悲しさが湧き起こってくるさまを謂う。 ・千万種:あまたの種類の意。
※春風吹入手中来:(あの人は帰ってくることは無いが、)春風が(花を折り取る)手の中に吹いて来た。 ・吹入手中来:手の中に吹いてくる意。
◎ 構成について
2017.1.31完 3.22補 |