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湖州歌 | |
南宋・汪元量 |
一掬呉山在眼中,
樓台纍纍間靑紅。
錦帆後夜烟江上,
手抱琵琶憶故宮。
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湖州 の歌
一掬 の呉山 眼中に在り,
樓台纍纍 として靑紅 を間 つ。
錦帆 後夜 烟江 の上,
手に琵琶 を抱 へて 故宮を憶 ふ。
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◎ 私感註釈
※汪元量:南宋の詩人。生没年不詳。字は大有。号して水雲。錢塘の人。南宋の宮廷琴師で、南宋の滅亡後、北方に抑留された。その詩集『水雲集』は南宋の滅亡までを忠実にうたいあげ、宋亡国の詩史と呼ばれる。晩年は西湖の畔に隠棲した。
※湖州歌:湖州の歌。作者は宮廷琴師として、南宋の滅亡後、北方に抑留されるが、1276年(徳祐年)、その出発点・太湖南岸の湖州の情景の詩。 ・湖州:現・浙江省湖州市。浙江省の太湖南岸にある。『中国歴史地図集』第六冊 宋・遼・金時期(中国地図出版社)59-60ページ「両浙西路 両浙東路 江南東路」にある。
※一掬呉山在眼中:手のひらの中に収まった呉山が、目の中に残っている。 ・一掬:ひとすくいする。 ・掬:(両手をそろえ、掌(てのひら)を上に向けて、ささげるようにして)すくう。持つ。ささげる。 ・呉山:現・杭州市内にある小さな丘のような山。金・完顏亮の『呉山』「萬里車書盡混同,江南豈有別疆封。提兵百萬西湖上,立馬呉山第一峰。」とある。
※楼台累累間青紅:高殿(たかどの)が重なり合って、青や赤の色が混じり合っている。 ・楼台:高殿(たかどの)。高楼。 ・累累:〔るゐるゐ;lei3lei3●●〕物が重なっているさま。積み重なるさま。 (なお、・累累:〔lei2lei2○○〕物が連なるさま。)詩句の平仄から見ると、この句は「○○●●●○○」とすべきところで、第三字・第四字は●●とすべきところ。すなわち、前者の「累累:〔lei3lei3●●〕積み重なるさま」。) ・間:〔かん;jian4●〕あいだを置く。隔てる。まじる。(動詞)。 (・間:〔かん;jian1○〕あいだ。) ここは、語句の使用法から見て、平仄から見て、前者の意。(敢えて、「間」を〔かん;jian1○〕の意で使えば、この詩句は「○○●●○○○」となり、詩句末の「……○○○。」は禁忌なので、通常は誰もしない)。
※錦帆後夜煙江上:捕虜となって乗せられる船でのこの後の夜は、霧や靄(もや)が立ち籠めている川でだ。 ・錦帆:人の乗る船の敬称。亡命の徒。ここでは、捕虜となって乗せられる船を指す。実質、南宋皇帝の御座船。 ・後夜:今後の夜。 〔ごや;hou4ye4●●〕夜中から朝にかけて。 ・煙江:霧や靄(もや)が立ち籠めている川面。
※手抱琵琶憶故宮:(宮廷琴師として)手に琵琶を抱え込む時(だけが)、旧王朝(=南宋)の宮殿を思い起こす(ことが出来る)。 ・手抱:手に抱え込む、意。 ・抱:いだく。かかえる。 ・憶:思い起こす。 ・故宮:かつての宮殿。旧王朝の宮殿。 *1276年(徳祐二年)、南宋は元によって滅ぼされ、そのため、南宋の六歳の皇帝がいたところは、「“故”宮」となった。できたての「故宮」である。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「中紅宮」で、平水韻上平一東。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●●○,(韻)
○○●●●○○。(韻)
●○●●○○●,
●●○○●●○。(韻)
2019.10.6 10.7 10.8 |
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