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怨情 | |
唐・李白 |
美人捲珠簾,
深坐嚬蛾眉。
但見涙痕濕,
不知心恨誰。
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怨情
美人 珠簾を捲き,
深坐して 蛾眉を嚬む。
但だ見る 涙痕の濕ふを,
知らず 心に誰をか恨むを。
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◎ 私感註釈
※李白:盛唐の詩人。字は太白。自ら青蓮居士と号する。世に詩仙と称される。701年(嗣聖十八年)~762年(寶應元年)。西域・隴西の成紀の人で、四川で育つ。若くして諸国を漫遊し、後に出仕して、翰林供奉となるが高力士の讒言に遭い、退けられる。安史の乱では苦労をする。後、永王が謀亂を起こしたのに際して幕僚となっていたために、罪を得て夜郎にながされたが、やがて赦された。
※怨情:帝の寵愛を失った宮女の歎きの歌。漢・班妤の『怨詩(怨歌行)』「新裂齊紈素,皎潔如霜雪。裁爲合歡扇,團團似明月。出入君懷袖,動搖微風發。常恐秋節至,涼風奪炎熱。棄捐篋笥中,恩情中道絶。」
や、謝
の『玉階怨』「夕殿下珠簾,流螢飛復息。長夜縫羅衣,思君此何極。」
や、王建の『宮中調笑』「團扇,團扇,美人病來遮面。玉顏憔悴三年,誰複商量管弦?弦管,弦管,春草昭陽路斷。」
など、同様の趣(おもむき)である。
※美人捲珠簾:美しい女性が、宝玉(ほうぎょく)でできたすだれを巻き上げると。 ・美人:美しい女性。また、官女の位。 ・捲:巻き上げる。≒卷 ・珠簾:美しい簾(すだれ)。玉すだれ。句末の「簾」は、平水韻下平十四鹽なので韻脚ではないが、その場合は(近体詩の絶句ではなくても)仄韻字を持ってくるのが好ましかろう。
※深坐顰蛾眉:奥深くに坐って、眉の辺りに皺(しわ)を寄せている。 ・深坐:奥深くに坐っている。 ・嚬:〔ひん;pin2○〕眉の辺りに皺(しわ)を寄せる。しかめる。ひそめる。≒顰〔ひん;pin2○〕。 ・蛾眉:美しい女性の眉。
※但見涙痕濕:ただ、涙のあとが濡れているのがみえるが。 ・但見:ただ…だけが見える。『古詩十九首』之十四に「去者日以疎,來者日以親。出郭門直視,但見丘與墳。古墓犁爲田,松柏摧爲薪。白楊多悲風,蕭蕭愁殺人。思還故里閭,欲歸道無因。」とあり、初唐・張若虚の『春江花月夜』に「春江潮水連海平,海上明月共潮生。灩灩隨波千萬里,何處春江無月明。江流宛轉遶芳甸,月照花林皆似霰。空裏流霜不覺飛,汀上白沙看不見。江天一色無纖塵,皎皎空中孤月輪。江畔何人初見月,江月何年初照人。人生代代無窮已,江月年年祗相似。不知江月待何人,但見長江送流水。白雲一片去悠悠,青楓浦上不勝愁。誰家今夜扁舟子,何處相思明月樓。可憐樓上月裴回,應照離人妝鏡臺。玉戸簾中卷不去,擣衣砧上拂還來。此時相望不相聞,願逐月華流照君。鴻雁長飛光不度,魚龍潛躍水成文。昨夜閒潭夢落花,可憐春半不還家。江水流春去欲盡,江潭落月復西斜。斜月沈沈藏海霧,碣石瀟湘無限路。不知乘月幾人歸,落月搖情滿江樹。」
とあり、盛唐・李白の『把酒問月』故人賈淳令余問之「靑天有月來幾時,我今停杯一問之。人攀明月不可得,月行卻與人相隨。皎如飛鏡臨丹闕,綠煙滅盡淸輝發。但見宵從海上來,寧知曉向雲閒沒。白兔搗藥秋復春,姮娥孤棲與誰鄰。今人不見古時月,今月曾經照古人。古人今人若流水,共看明月皆如此。唯願當歌對酒時,月光長照金樽裏。」
とあり、後世、中唐・白居易の『送春』に「三月三十日,春歸日復暮。惆悵問春風,明朝應不住。送春曲江上,拳拳東西顧。但見撲水花,紛紛不知數。人生似行客,兩足無停歩。日日進前程,前程幾多路。兵刃與水火,盡可違之去。唯有老到來,人間無避處。感時良爲已,獨倚池南樹。今日送春心,心如別親故。」
とある。 ・涙痕:涙のあと。
※不知心恨誰:(彼女の)心の中では、誰を恨んでいることやら、(それは)分からない。 ・不知:分からない。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「眉誰」で、平水韻上平四支。この作品の平仄は、次の通り。
●●●○○,
○●○○○。(韻)
●●●○●,
●○○●○。(韻)
2009.7.10 7.13 |
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