牡丹 | |
唐・皮日休 |
落盡殘紅始吐芳,
佳名喚作百花王。
競誇天下無雙艷,
獨占人間第一香。
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牡丹
殘紅 落ち盡くして 始めて芳を吐き,
佳名 喚びて「百花の王」と作す。
競ひ誇る 天下 無雙の艷,
獨り占む 人間 第一の香。
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◎ 私感註釈
※皮日休:晩唐の詩人、革命的社会派の学者。830年代〜883年(中和三年)。襄陽(現・湖北省襄樊市)の人。字は逸少、襲美。号は陝布衣、鹿門子、醉吟先生。傲慢で諧謔を好む。黄巣の乱では、黄巣が帝位に即き国を建てた時、その朝廷に入って翰林学士となった。
※牡丹:ボタンの花(にこと寄せて)。同時代の黄巣に『詠菊』「待到秋來九月八,我花開後百花殺。衝天香陣透長安,滿城盡帶黄金甲。」や、同・黄巣の『菊花』「颯颯西風滿院栽,蕊寒香冷蝶難來。他年我若爲帝,報與桃花一處開。」があり、黄巣のこれらの菊の花には、寓意があり、同様に皮日休のこの『牡丹』にも寓意が無かろうか。
※落盡殘紅始吐芳:(初夏に咲く牡丹の花は、春に咲く多くの花々の)散り残りの花が散り尽くした後になって、やっと花がほころび(はじめて)。 ・落盡:散り尽くす。 ・殘紅:〔ざんこう;can2hong2○○〕散り残りの花。 ・始:やっと。はじめて。 ・吐芳:〔とはう;tu3fang1●○〕花がほころびる。
※佳名喚作百花王:。「百花の王」という美しい名で呼んでいる。 ・佳名:麗しい名。 ・喚作:…と呼ぶ。 ・百花王:多くの花の王。百花の王。後世、ボタンの花のことをこう呼ぶ。
※競誇天下無雙艷:世に並ぶものが無いあでやかさをきそって誇り。 ・競誇:きそって誇る。 ・天下:天の下。国全体。世界。世の中。 ・無雙:世に並ぶものがない。無二。 ・艷:なまめかしい。あでやかに美しい。
※獨占人間第一香:人の世の「第一番めの香」の位置をひとり占(じ)めにしている。 ・獨占:ひとり占(じ)めにする。 ・人間:〔じんかん;ren2jian1○○〕人の世。 ・第一香:第一番目のかおり。ボタンの花を謂う。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「芳王香」で、平水韻下平七陽。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●●○,(韻)
○○●●●○○。(韻)
●○○●○○●,
●●○○●●○。(韻)
2010.5.23 5.24 |
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