晏起 | |
唐〜・韋莊 |
爾來中酒起常遲,
臥看南山改舊詩。
開戸日高春寂寂,
數聲啼鳥上花枝。
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晏起
爾來 酒に中 りて起 くること常に遲く,
臥 して 南山を看 て舊詩 を改む。
戸を開けば日 高 くして春 寂寂 ,
數聲の啼鳥 花枝 に上 る。
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◎ 私感註釈
※韋荘:晩唐〜蜀の詩人。836年(開成元年)〜910年(開平四年)。字は端己。杜陵(現・陝西省西安附近)の人。
※晏起:〔あんき;yan4qi3●●〕朝おそく起きること。朝ねぼうする。盛唐・孟浩然の『春曉』に「春眠不覺曉,處處聞啼鳥。夜來風雨聲,花落知多少。」に合わせて作ったか。『春日晏起』ともする。
※爾來中酒起常遲:それ以来、酒の飲み過ぎのために気分が悪くなり、いつも朝起きるのが遅くなって。 ・爾來:それ以来。そののち。「近來」ともする。 ・中酒:〔ちゅうしゅ;zhong4jiu3●●〕酒を飲み過ぎて、気分が悪くなる。 ・中:〔ちゅう;zhong4●〕あたる。動詞。 ・常:いつも。つねに。 ・遲:ぐずぐずとしておそい。動作がのろろろとして時間がかかっておそい。蛇足になるが、「晩」は時期的におくれてしまった意のおそい。
※臥看南山改舊詩:(寝床で)寝転んだままで終南山を見ながら、旧作の詩を書き直している。 ・臥看:(ベッドに)寝ころんで見る。晩唐・杜牧の『秋夕』に「銀燭秋光冷畫屏,輕羅小扇捕流螢。天階夜色涼如水,臥看牽牛織女星。」とある。「臥見」ともする。 ・南山:終南山のこと。長安(現・西安)の南方40キロメートルのところにある2604メートルの高山。『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)40−41ページ「唐 京畿道 関内道」では、秦嶺山脈を終南山としている。秦嶺山脈は長安西南方から南方にかけての、現在の終南山を含む大山脈。盛唐・王維の『送別』に「下馬飮君酒,問君何所之。君言不得意,歸臥南山陲。但去莫復問,白雲無盡時。」とある。なお、唐詩以前の東晉・陶潛の『飮酒』二十首其五に「結廬在人境,而無車馬喧。問君何能爾,心遠地自偏。采菊東籬下,悠然見南山。山氣日夕佳,飛鳥相與還。此中有眞意,欲辨已忘言。」では、廬山を指す。 ・舊詩:昔(自分が)作った詩。旧作。なお、現代語では旧体詩(=近体詩や古詩などで、現代語の自由詩に対していう詩)を指す。ここは、前者の意。なお、過去の時代の詩は「古詩」。(形式を指す。作品を指す固有名詞の場合もある)。
※開戸日高春寂寂:戸を開ければ、日は高く昇っており、春(の気配)は静かで。 ・開戸:戸を開ける。「閉戸」ともする。 ・日高:太陽が高く昇(った)。中唐・白居易の『香爐峯下新卜山居草堂初成偶題東壁』に「日高睡足猶慵起,小閣重衾不怕寒。遺愛寺鐘欹枕聽,香爐峯雪撥簾看。匡廬便是逃名地,司馬仍爲送老官。心泰身寧是歸處,故ク何獨在長安。」とある。作者自身も『浣溪沙』で「C曉妝成寒食天,柳球斜裊間花鈿,捲簾直出畫堂前。 指點牡丹初綻朶,日高猶自凭朱欄,含顰不語恨春殘。」とする。 ・寂寂:〔せきせき;ji4ji4●●〕さびしいさま。静かなさま。晩唐?・朱慶餘の『宮中詞』に「寂寂花時閉院門,美人相並立瓊軒。含情欲説宮中事,鸚鵡前頭不敢言。」とある。
※數聲啼鳥上花枝:幾声か鳴く鳥が、花を著けた枝に留まっている。 ・啼鳥:鳴く鳥。さえずる鳥。前出・孟浩然の『春曉』に「處處聞啼鳥。」とある。 ・上:のぼる。後世、清・袁枚は『春日雜詩』で「C明連日雨瀟瀟,看送春痕上鵲巣。明月有情還約我,夜來相見杏花梢。」とした。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「遲詩枝」で、平水韻上平四支。この作品の平仄は、次の通り。
●○●●●○○,(韻)
●◎○○●●○。(韻)
○●●○○●●,
●○○●●○○。(韻)
2011.4.13 4.14完 2016.7.13補 2018.5.21 |
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