劉方平夜月　詩詞世界　碇豊長の詩詞：漢詩 Liu Fangping

夜月
	唐・劉方平

更深月色半人家，
北斗闌干南斗斜。
今夜偏知春氣暖，
蟲聲新透綠窗紗。

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夜の月

更(かう) 深け　月色　　人家に半ばし，
北斗は　闌干(らんかん)として　　南斗は　斜めなり。
今夜　偏(ひと)へに知る　　春氣の暖かなるを，
蟲聲　新たに　綠の窗紗(さうさ )を透る。

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◎　私感註釈

※劉方平：盛唐の詩人。７５８年前後に在世。河南・洛陽の人。匈奴の出身。天宝年間の前期に進士試験を受けるが、意の如くならず、潁水、汝河のほとりに隠棲して、終生に亘って仕えなかった。詩にたくみであった。なお、同性愛的な傾向があったとも伝えられるが…。

※夜月：夜の月。『月夜』ともする。

※更深月色半人家：夜が更けて、月の光が（西からの斜めになり、）人家の半分を照らし出して。　・更深：〔かうしん；geng1shen1○○〕夜が更ける。SV構造。蛇足になるが、「深更」は深夜の意で、名詞。　・更：一夜を五つに分けた時間の単位。　・月色：月の光。　・半人家：人家に半ばす。深夜の月光が西からの斜めになり、人家の半分を照らし出しているさまを謂う。

※北斗闌干南斗斜：北斗七星は、縦横に燦めきみだれて、南斗六星は、斜めになっている。　・北斗：北斗七星を指す。北天にある大熊座の七つの星。「斗」（ひしゃく）の形に並び、北極星を探す指極星。また、一昼夜に十二方を指し、時刻を計る星。七曜星。　・闌干：〔らんかん；lan2gan1○○〕縦横に入りみだれるさま。星の光が燦めくさま。　・南斗：南斗六星を指す。夏の南天にある射手座の中心部に、斗（ひしゃく）の形に並ぶ六つの星。二十八宿の一の斗宿にあたる。

※今夜偏知春気暖：今夜、意外にも春の気配が暖かなのが分かった。　・偏知：意外にも…ということが分かった。　・偏-：意外にも。副詞。動詞の前に附く。　・春気：春の気配。春の気候。

※虫声新透綠窓紗：虫の音（ね）が、初めて窓に（はった）緑の薄絹を透（とお）して（聞こえてきた）。 *「綠窓紗」は「綠＋窓紗」と見るのが妥当。　・新：初めて。　・窓紗：〔chuang1sha1○○〕窓にはる寒冷紗。　*以下、蛇足になるが、　・綠窓：貧しい女の家。婦女の部屋の窓。　・紗：薄絹。

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◎　構成について

韻式は、「AAA」。韻脚は「家斜紗」で、平水韻下平六麻。この作品の平仄は、次の通り。

○○●●●○○，（韻）
●●○○○●○。（韻）
○●○○○●●，
○○○●●○○。（韻）