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對酒曲 |
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盛唐・賈至 |
春來酒味濃,
舉酒對春叢。
一酌千憂散,
三杯萬事空。
放歌乘美景,
醉舞向東風。
寄語尊前客,
生涯任轉蓬。
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酒に對する曲
春來 れば 酒味 濃く,
酒を舉 げて春叢 に對す。
一酌 千憂 散じ,
三杯 萬事空 し。
放歌 美景に乘り,
醉舞 東風 に向かふ。
寄語す尊前 の客 :
「生涯轉蓬 に任 へん」と。
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◎ 私感註釈
※賈至:盛唐の詩人。718年(開元六年)~772年(大暦七年)。字は幼幾。洛陽の人。安史の乱には、玄宗に従って、蜀に避れる。
※対酒曲:酒に向かっているときの歌。この詩は其一に「梅發柳依依,黄鸝歷亂飛。當歌憐景色,對酒惜芳菲。曲水浮花氣,流風散舞衣。通宵留暮雨,上客莫言歸。」がある。魏・曹操の『短歌行』に「對酒當歌,人生幾何。譬如朝露,去日苦多。 慨當以慷,憂思難忘。何以解憂,唯有杜康。 青青子衿,悠悠我心。但爲君故,沈吟至今。
鹿鳴,食野之苹。我有嘉賓,鼓瑟吹笙。 明明如月,何時可輟。憂從中來,不可斷絶。 越陌度阡,枉用相存。契闊談讌,心念舊恩。 月明星稀,烏鵲南飛。繞樹三匝,何枝可依。 山不厭高,水不厭深。周公吐哺,天下歸心。」
とある。
※春来酒味濃:春になれば、酒の味が濃くなり。
※挙酒対春叢:さかずきをあげて、春になって生えた草の茂みに向かって酒を飲む。 ・挙酒:さかずきをあげて酒を飲む。また、酒を勧める。 ・対:向かう。 ・春叢:春になって生えた草の繁み。
※一酌千憂散:一杯で、多くの憂いが消えてしまい。 *杜甫は『落日』で「一酌散千憂」とする。盛唐・杜甫の『落日』に「落日在簾鉤,溪邊春事幽。芳菲縁岸圃,樵爨倚灘舟。啅雀爭枝墜,飛蟲滿院遊。濁醪誰造汝,一酌散千憂。」
とある。 ・一酌:(酒)一杯。 ・酌:〔しゃく;juo2●〕酒をくむ。酒をつぐ。 ・千憂:多くのうれい。千載の憂い。永遠に解けない憂い。死の憂い。『古詩十九首』之十五・『生年不滿百』に「生年不滿百,常懷千歳憂。晝短苦夜長,何不秉燭遊。爲樂當及時,何能待來茲。愚者愛惜費,但爲後世嗤。仙人王子喬,難可與等期。」
、東晋・陶潛の『遊斜川』に「開歳倏五日,吾生行歸休。念之動中懷,及辰爲茲游。氣和天惟澄,班坐依遠流。弱湍馳文魴,閒谷矯鳴鴎。迥澤散游目,緬然睇曾丘。雖微九重秀,顧瞻無匹儔。提壺接賓侶,引滿更獻酬。未知從今去,當復如此不。中觴縱遙情,忘彼千載憂。且極今朝樂,明日非所求。」
とあり、同・陶潛『飮酒・二十首』其七に「秋菊有佳色,
露
其英。汎此忘憂物,遠我遺世情。一觴雖獨進,杯盡壺自傾。日入羣動息,歸鳥趨林鳴。嘯傲東軒下,聊復得此生。」
とあり、盛唐・杜甫の『落日』に「落日在簾鉤,溪邊春事幽。芳菲縁岸圃,樵爨倚灘舟。啅雀爭枝墜,飛蟲滿院遊。濁醪誰造汝,一酌散千憂。」
とある。 ・散:解(と)かす、意。
※三杯万事空:三杯で、あらゆる事柄が、(実体のない)空(くう)となってしまう。 ・空:むなしい。(仏教)実体がないこと。後世、明・悟空に『萬空歌』「天也空,地也空,人生渺渺在其中。日也空,月也空,東昇西墜爲誰功。金也空,銀也空,死後何曾在手中。妻也空,子也空,黄泉路上不相逢。權也空,名也空,轉眼荒郊土一封。」がある。
※放歌乗美景:美しい景色に乗って大きな声で歌えば。 ・放歌:大きな声で歌う。 ・美景:(*よく分からない。色々と考えさせられる語である)。
※酔舞向東風:酔っぱらって、春風に向かって舞う ・酔舞:酔っぱらって舞う。 ・東風:春風。
※寄語尊前客:酒樽の前のお人に、言葉を差し上げましょう。 *この聯の設定、どのような人物が、どのような位置関係で話をしたのか、気になるところだ。 ・寄語:言葉をあたえる。また、伝言する。ことづてする。伝言をたのむ。=寄言。ここは、前者の意。「寄語」の内容が「生涯任転蓬」になる。 明・徐熥『寄弟』に「春風送客翻客愁,客路逢春不當春。寄語鶯聲休便老,天涯猶有未歸人。」とあり、明末清初・江陰女子の『題城牆詩』に「雪胔白骨滿疆場,萬死孤忠未肯降。寄語行人休掩鼻,活人不及死人香。」
とある。 ・尊前:酒樽の前。 ・尊:酒樽(さかだる)。 ・客:旅人。
※生涯任転蓬:「生涯、流転にたえ(られ)る(のでしょうか)」と。 ・任:たえる。まかせる。になう。 ・転蓬:風に吹かれて転がり行く蓬。流浪して居所の定まらない譬え。=「飄蓬」「孤蓬」。曹植の『吁嗟篇』に「吁嗟此轉蓬,居世何獨然。長去本根逝,宿夜無休閑。東西經七陌,南北越九阡。卒遇回風起,吹我入雲間。自謂終天路,忽然下沈泉。驚飆接我出,故歸彼中田。當南而更北,謂東而反西。宕宕當何依,忽亡而復存。飄周八澤,連翩歴五山。流轉無恆處,誰知吾苦艱。願爲中林草,秋隨野火燔。糜滅豈不痛,願與根
連。」
とあり、李白の『送友人』に「青山橫北郭,白水遶東城。此地一爲別,孤蓬萬里征。浮雲遊子意,落日故人情。揮手自茲去,蕭蕭班馬鳴。」
とあり、盛唐・王之渙の『九日送別』に「薊庭蕭瑟故人稀,何處登高且送歸。今日暫同芳菊酒,明朝應作斷蓬飛。」
とある。後世、南唐・李煜の『浣溪沙』「轉燭飄蓬一夢歸,欲尋陳跡悵人非,天敎心願與身違。 待月池臺空逝水,蔭花樓閣漫斜暉,登臨不惜更沾衣。」
や南宋・陸游『貧甚戲作絶句』其六に「行遍天涯等斷蓬,作詩博得一生窮。可憐老境蕭蕭夢,常在荒山破驛中。」
とある。趣が異なったものに、李白の『妾薄命』に「昔日芙蓉花,今成斷根草。以色事他人,能得幾時好。」
がある。
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◎ 構成について
韻式は、「AAAAA」。韻脚は「濃叢空風蓬」で、平水韻上平一東。この作品の平仄は、次の通り。
○○●●○,(韻)
●●●○○。(韻)
●●○○●,
○○●●○。(韻)
●○○●●,
●●●○○。(韻)
●●○○●,
○○●○○。(韻)
2020.9.30 10. 1 10. 2 10. 3 10. 4 10. 6完 11.13補 11.14 |
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