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(3)憑依現象

――悪魔の仕業と恐れられてきた現象の実態

従来の宗教では、悪魔による悪事が徹底して強調されてきました。その悪魔の仕業の中で最も恐れられてきたのが「憑依現象」です。これまで宗教では、憑依現象に対して悪魔祓いや除霊を真剣に行なってきましたが、ほとんど効き目はありませんでした。スピリチュアリズムは、この憑依現象の実態を明らかにし、正しい対処方法を示しています。

地縛霊のある者が、地上人に取り憑き、さまざまな問題を引き起こします。これが憑依現象ですが、憑依現象は地上人にとって実に厄介な問題の1つなのです。私たちは憑依現象に正しく対処することによって、被害者となっている地上人を救うばかりでなく、加害者である地縛霊自身をも救うことができるようになります。ここではそうした観点から、憑依現象について見ていきます。

1)憑依は異常な霊媒現象

「憑依」と「霊界通信」の違い――異常な霊媒現象と正常な霊媒現象

憑依とは、地縛霊が地上人に取り憑き、部分的に、時には全面的に支配して異常な言動を引き起こさせる現象です。「憑依」は、霊媒現象の異常な形態です。正常な霊媒現象では、あの世の霊を一時的に地上に呼び寄せ、霊媒に乗り移らせて語らせたり、メッセージを筆記させ、用事が済めばまた霊媒から離れさせます。これが「霊界通信」と言われるものです。スピリチュアリズムの貴重な霊的知識は、こうした形で地上にもたらされました。

スピリチュアリズムにおける霊界通信のような霊媒現象は、霊界からの厳格なコントロール下で展開されています。それに対し憑依現象では、低級霊が一方的に、しかも無理やり地上人を支配し、好き勝手に操るようになります。高級霊や善霊による正常な霊媒現象が「霊界通信」であり、低級霊や邪悪霊による異常な霊媒現象が「憑依現象」ということなのです。

憑依のバリエーション

霊界通信も憑依も、ともに地上人の「潜在意識」を支配することによって行われます。憑依は、低級霊によって一方的に、かつ強引に行われる異常な霊媒現象です。憑依現象は低級霊のオーラと地上人のオーラが同調し、地上人の潜在意識が支配されることによって引き起こされます。憑依による支配は、憑依霊サイドと地上人サイドの諸条件によって、さまざまな形態を取ることになります。低級霊が霊媒体質者の身体の一部分のみを支配しコントロールする場合もあれば、憑依が身体機能全体にまで及ぶケースもあります。憑依霊のパワーやコントロールの強さも、いろいろです。

さらに霊媒体質者の潜在意識の状態や、霊体や肉体の性質、体調によっても支配の強さは変わってきます。こうしたいくつもの要因によって、憑依の多様なバリエーションが成立します。また憑依は、時間とともに徐々に進行し症状が悪化していくのが普通です。

2)憑依の被害者――霊媒体質者

地縛霊たちは、誰彼の区別なく地上人に取り憑くわけではありません。彼らが憑依するのは地上の「霊媒体質者」です。地上の霊媒体質者が、憑依の直接的な被害者となるのです。

霊媒体質者とオーラ

地縛霊たちは、地上近くをうろついたり特定の場所にじっとしていますが、彼らの目には地上の霊媒体質者は、小さな灯火(ともしび)のように見えます。霊媒体質者からは多くのオーラが放射されていて、それが霊には薄暗い光源のように見えるのです。地縛霊は、夏の夜に誘蛾灯(ゆうがとう)に昆虫たちが引き寄せられるように、霊媒体質者のオーラに引き寄せられます。そして、そのオーラの中に入りたいと思うようになります。また霊媒体質者が地縛霊のいる場所をたまたま通り過ぎた際に、無意識のうちに地縛霊を引き付けてしまうことがあります。そこから「憑依現象」が始まるようになります。

世間一般で言われている“霊能者”とは、オーラを大量に発散させている「霊媒体質者」のことであり、霊界からの影響力を敏感にキャッチできる人間のことです。憑依現象は、こうした霊媒体質者がいるときに生じるようになります。低級霊にとっては、地上に霊媒体質の人間がいるかどうかが問題です。地上の霊媒体質者は、彼らにとって絶好の働きかけの通路なのです。一般の人間は、いくら働きかけても反応が鈍く、なかなかコンタクトすることはできませんが、霊媒体質者に対しては容易に霊界から影響力を及ぼすことができるのです。

霊媒体質者は霊的に敏感なため、葬式に出たり人混みの中に長時間いると、悪い霊気の影響を受けて体調を崩したりします。吐き気をもよおしたり、頭を締め付けられるような体験をすることもあります。霊媒体質者は、高級霊からのメッセージを受け取ることができるようになれば優れた霊能者になれる一方で、低級霊に憑依されやすく、低級霊にとって都合のいい道具に堕ちてしまう危険性も大きいのです。

すべての霊媒体質者が憑依されるわけではない――同類の霊を呼び寄せる

霊能者・霊媒体質者が、低級霊に憑依されるかどうかは、ひとえに霊媒体質者自身の霊的内容にかかっています。低級霊に取り憑かれる人間は、もともとそういう受け皿ができているのです。自己中心的で意志薄弱、自主性が乏しくて霊的にも精神的にも未熟な場合には、地縛霊にとって憑依の格好のターゲットになります。

一方これとは逆に、霊性が優れ、心身のバランスのとれた健全な性格の持ち主に、低級霊が憑依することはありません。現実を見るかぎり、霊媒体質者の多くが、霊性やモラルの感覚が低く、とても世俗的で享楽的です。依頼心が強く、堕落した好みや願望を快く思うような人間が多いのです。その結果、悲惨な憑依現象を引き起こすことになっています。憑依される人間は、自らの弱み・自由意志によって、そうなることを許しているのです。

前世のカルマと霊媒体質の関係

一般の人々には、霊能者・霊媒体質者は特別な人間のように思われがちですが、霊能力は本来すべての人間が持っている霊体の能力が、肉体次元で現れたものにすぎません。また誰もがオーラを発散させていますが、霊媒体質者はそのオーラの分量が、一般の人よりも多いという点で違いがあるだけなのです。人間として一番肝心な霊格・霊的進化のレベルと、霊能力・霊媒能力は無関係です。先に述べたように現実には、霊能力者や霊媒体質者の人格性・霊性の低さは目にあまるものがあります。

霊能力や霊的体質は修行によってある程度身につけることができますが、大半の霊媒体質者の場合は、生まれつきのものです。現在、霊能力や霊媒能力を発揮している人の中には、前世において肉体行を通じて霊的能力を身につけた人がいます。前世で身につけた能力を、再生時にも携えて生まれてくるのです。

霊は再生に先立って、前世でつくり上げたカルマ(悪行為)を償うために、自ら誘惑や苦しみの試練を選択します。その際、霊媒体質者になることを希望し、あえて誘惑の多い環境を願い出ることもあります。地上世界では、霊能力を持ったり霊媒能力を持つことが、大きな誘惑と背中合わせになることを知っているからです。

一方ある者は、前世で霊能があったがゆえの失敗をしたために、それを償う目的で霊媒体質者の道を再度希望するかもしれません。前世で霊能力や霊媒能力を使って悪事を働いたり、人を苦しめたならば、同じような状況下での試練を迎えなければなりません。「カルマによる試練として、憑依の苦しみを味わう」ということです。

また一定の霊的レベルにまで至った霊が、地上人の霊的向上に寄与する使命を持って再生することがあります。その際に“霊的能力を用いて働きたい”と申し出て、それが認められることがあります。そして生まれつきの霊媒体質者として地上人生を始めることになります。ただし、そうして地上へ生まれた霊能者・霊媒体質者の多くが、再生前の本来の崇高な使命から外れ、物質欲や肉欲といった自らの煩悩の中で堕落しています。

霊媒体質者のすべてが、前世で霊能を持っていたというわけではありません。霊媒体質者として生まれるについては、一人一人の抱える複雑な霊的背景・因縁的背景が絡んでいます。そうした複雑な事情を簡単に述べることはできません。

3)憑依の進行プロセス

幽界の下層には、自分の死を自覚していない“地縛霊”が無数に存在していますが、こうした地縛霊のある者が、地上の霊媒体質者のオーラの中に引っ掛かってしまうことがあります。憑依は時間の経過とともに徐々に深まっていき、最後には深刻な事態を迎えることになります。ここでは、そうした一般的な憑依の進行プロセスを見ていくことにします。

憑依は、3つのステップを経て進行していきます。軽い状態(第1ステップ)からひどい状態(第2ステップ)、そして最悪の状態(第3ステップ)という3つの段階を踏んでいきます。それぞれの段階の内容を見ていくことにします。

憑依の第1ステップ――憑依が始まる段階

地縛霊のうちのある者は、地上の霊媒体質者が近くを通る際に、霊媒体質者の身体から放射されているオーラに無意識に吸い寄せられ、引っ掛かってしまうことがあります。またある霊は、オーラが地上人のものとは気づかず、地縛状態の苦しみから逃れたいと思って、そのオーラに接触しようとしたり、その中に入り込もうとします。

地上人のオーラは外部から侵入してくる部外者に対して防衛本能が働き、激しく抵抗するようになり、一種の霊的な軋轢(あつれき)状態・衝突状態が引き起こされることになります。これは地上の霊媒体質者にとって、たいへんな衝撃となります。その様子を外部から見ると、地上の霊媒体質者の意識が一時的に異常になったように映ります。

しかし、この段階ではまだ本当の憑依ではありません。仮に地縛霊と霊媒体質者のオーラの波動が同調することがあっても、それは一時的であって、すぐに縁は切れます。憑依する側の低級霊は何とか霊媒体質者のオーラと接触し、その中に入り込もうとしますが、地上人には防衛本能があるため、すぐには入ることができません。このとき霊媒体質者のオーラに接触しようとするのは、1体の地縛霊とは限りません。状況によっては複数の地縛霊が、一人の地上人に取り憑くようなこともあります。

憑依が始まる段階でよく生じる霊的現象は、幻覚や幻聴です。時には低級霊が、霊媒体質者の潜在意識の記憶の層を刺激し、そこに内在している古い記憶を掘り起こすことがあります。すると地上人は、これまで忘れていた嫌な過去の出来事や辛い体験・悲しみの体験を思い出すようになります。霊媒体質者にとっては、思い出したくなかった記憶が次々と蘇ってきて、頭から離れなくなります。そして過去に対する強い後悔の念が心を占めるようになります。それがあまりにもひどいと、自虐的になって鬱病(うつびょう)の状態を引き起こすようになります。突然しくしく泣いたり、ヒステリー状態になって何も手につかなくなるようなこともあります。

こうした憑依の初期段階では、低級霊の影響力はまだ小さく、危険性もそれほど大きくはありません。地上人が「これではいけない!」と気がつき、霊への好奇心を捨て去って気持をしっかり保つようにすれば、低級霊とのつながりは切れます。低級霊が接触を図ってきても無視して全く相手にしなければ、霊との関係は成立しません。霊に関心を向けないようにして、自分の仕事や趣味に意識を集中すれば、地縛霊との接触は解消します。

憑依の第2ステップ――オーラの融合化が進み、思念が支配される段階

憑依の初期段階では本人が意識や気持を正せば、簡単に憑依霊を退けることができるのですが、世の中の大半の霊媒体質者は、無知と虚栄心のために、何か特別なことが自分に起こったと思い込むようになります。そして地縛霊からの接触をむしろ快く思い、霊の声に耳を傾け、自分の方から霊との接触を歓迎するようになります。そして徐々にオーラの融合化が進行し、憑依の深みにはまっていくことになります。

もし地縛霊が霊媒体質者のオーラと融合するようになると、霊媒体質者の潜在意識の一部分を支配することになります。とは言ってもこの段階では、オーラの融合が不完全なために、肉体機能のすべてを支配するようなことはありません。したがってこのレベルでは、霊媒体質者の日常生活には何の支障も生じないのが普通です。しかし霊媒体質者の思考や感情が操られる状態になっており、大きな問題やトラブルが表面化するようになります。地縛霊によって思考が支配されるようになると、霊媒体質者は自分自身の思考と、霊の思考の区別が全くつかなくなります。一方、憑依している霊も、自分と地上人の区別がつかなくなっています。

こうなると憑依された人間は突如、妄想的なことを口走るようになり、周りの人々を驚かせることになります。周りから見ると、その人間が語る内容は明らかにおかしいと分かるのですが、相手(周りの人)の質問には割にまともな返答をするのが普通です。また日常生活の行動には異常が見られないため、家族がなだめすかして何とか病院に連れて行っても、病院サイドでは異常と認めてくれず、なかなか入院させることができません。

憑依の第3ステップ――憑依がさらに進み、心身を乗っ取られ、完全な精神病の状態になる段階

憑依がさらに進行し、霊による支配が進むと、意識や思考ばかりでなく、日常の行動も完全に低級霊に乗っ取られた状態になってしまいます。大半の霊は、初めから地上人の心身を乗っ取ろうという悪意はないのですが、いったんオーラの中に入り込んでしまうと、そこから抜け出すことができなくなってしまうのです。しかも、そうした状態では自分と地上人の区別がつかなくなっています。自他の区別がつかないのは憑依されている地上人にとっても同じで、自分の考えと外部から侵入してきた霊の考えの区別ができなくなります。このような状況下で、霊は地上人の精神・思考の中に存在するようになります。

憑依霊の多くは、ごく普通の人間味を持っており、特別な悪意を持っている者は少数派です。彼らは自分が死んでいることに気がつくこともあります。そしてたいへんな後悔の念を抱くようになります。取り返しのつかないことをしていると悔やむようになります。しかし本来の主人(あるじ)に精神と肉体を明け渡す方法が分かりません。どのようにしてオーラから抜け出したらよいのかが分からないのです。結局は、これまでどおり地上人のオーラの中に閉じ込められて時を過ごすことになります。そうした状況が続くうちに、憑依はさらにひどい状態へと進んでいくことになります。そして最後は地上人の思考中枢を完全に支配することになってしまいます。

こうなると外見上の肉体は同じであっても、それを動かすのは全く別の人格になり、気狂(きちが)い・分裂症(統合失調症)・二重人格・多重人格といった精神病ができ上がることになります。ここまで憑依が進行してしまうと周りの人々は、ほとんど手がつけられなくなります。こうした状況では、憑依された本人の自発的な意識の働きは一切なくなり、本来の人格を失うことになります。低級霊の操り人形となり、異常で支離滅裂な行為をするようになります。当然本人には、自分が何をしているかの自覚は持てません。

4)憑依のさまざまなケース(実例)

憑依現象を引き起こすのは、その多くが幽界の下層にたむろする地縛霊や未熟霊です。彼らは“死”、つまり肉体からの解放があまりにも簡単で自然であるために、また霊的知識が欠如しているために、自分が死人となったことに気がつきません。もし彼らが「霊的真理」を知っていたなら、しばらくすれば死の自覚を持てるようになるのですが、肝心な真理について全く無知であるため、結局は地上の懐かしい場所をうろつき回ることになります。

やがてそうこうしているうちに、地上人のオーラに引き付けられて、無意識のうちに取り憑くことになります。憑依が進行すると、それが原因となってさまざまな災難や悲劇が引き起こされ、病気・不道徳行為・犯罪・精神病などが生じることになります。憑依霊は一人一人、性格も考え方も好みも異なっています。その違いが、いろいろな憑依状態やトラブルとなって現れることになります。

ここでは、いくつかの憑依のケースを具体的に見ていくことにします。

苦しみから逃れようともがく霊

憑依霊の多くは、性格的には、むしろお人好し・善人と言ってもいいような者たちです。彼らは何がなんだか分からないうちに、地上人のオーラの中に入り込み、身動きできずに暗黒の中で縛られたような状態になってしまいます。彼らがいかに霊的に未熟であるといっても、そんな状態で居心地がいいはずがありません。何とかそこを抜け出そうともがくのですが、どうしても抜け出すことができずに苦しみ続けます。それが地上人に精神異常や錯乱状態を引き起こすことになります。

飲酒や麻薬の悪習慣を持ち続ける霊

憑依霊となる霊の多くが、地上時代には霊的な世界に露(つゆ)ほどの関心も示さず、ただ物質的な快楽と喜びだけを求めてきました。肉欲的な五感のみの生活に終始してきたのです。そうして死後は、自らの物欲と無知が生み出す暗闇の境遇に、自分自身を閉じ込めることになります。

憑依霊の心の中に、地上時代の飲酒や麻薬などの習慣がしつこく残っていることがあります。それによってオーラに閉じ込められた憑依状態の中でも、地上時代と同じようにアルコールを求めることになります。すると取り憑かれた地上人は、自然と酒を飲みたいような気分が湧き起こってくるようになります。それまでは一滴も酒を飲まなかった女性が、突如アルコールを欲しがるようになるのです。

こうして憑依霊は、地上人を通じて間接的に飲酒の快楽を味わうことになります。霊は自分で飲んだつもりが、実際には地上人を通じて飲んでいることに気がつきません。憑依した相手に酒を飲ませては、全部自分が飲んだと思っているのです。やがて霊が地上人をストレートにコントロールするコツを覚えると、地上人を酒乱に陥れ、生活をメチャメチャにするようになります。

病気を引きずったままの霊

病気で死んだ霊が、死後も“自分は病気である”と思い続けていることがあります。死んで肉体はなくなり病気はないはずなのですが、死を自覚できないために、自分自身で病気を持ち続けているのです。そうした霊が憑依して地上人のオーラの中に閉じ込められるようになると、死に際の痛みが再現されることになります。地上人のオーラの中にいるかぎり、その痛みが消えることはありません。痛みに煩悶(はんもん)する時が、ずっと続くことになります。

このような状況では、取り憑かれた地上人に霊の感じている痛みがそのまま伝わり、同じような病状を引き起こすことになります。憑依によって地上人は、架空の病気で苦しむようになるのです。こうしたケースでは、除霊によって憑依霊が取り除かれるか、あるいは憑依霊自身が死を自覚して病気も痛みもないことを悟らないかぎり、地上人の苦痛が消滅することはありません。

自分が、男か女か分からなくなってしまう霊

霊は地上人のオーラの中に入り込んでしまうと、自分と憑依している相手の区別が全くつかなくなります。もし男性の霊が女性(地上人)に憑依すると、霊は不思議な感覚にとらわれるようになります。自分は男であると思っているのに、時に何となく女になったように感じるのです。それがさらに進むと、自分が女になったり、男に戻ったりするように感じることになります。

また霊は、自分がいつの間にか女性の服を着ていたり、女性のヘアスタイルをしていることに気がつくことがあります。それを恥ずかしいと思い、急いで女性の服を脱いだり、長い髪を切って男性のヘアスタイルにしようとします。その結果、憑依された地上の女性は、辺りかまわず服を脱いだり、着ていた衣服をむしり取って破り捨てようとします。自分の髪の毛を、ハサミで切り始めるようなことにもなります。

今話題となっている「性同一障害者」には、前世の性と再生時の性の不一致に由来するものの他に、こうした憑依によって引き起こされる特殊なケースもあるように思われます。

地上時代の狂信を続けている霊

地上時代、ある特定の宗教を熱心に信仰し、それ以外の考えを一切受け付けないような精神構造をつくり出した人間は、死後、自分の死んだことに気がつかないかぎり、霊界でも地上時代の狂信を続けるようになります。教会に集い、朝から晩まで讃美歌を歌い続けるようなことを延々と繰り返します。幽界の下層には、このような狂信者たちの集まりが現実に存在します。

こうした霊たちが、地上で同じような集まりや行事に熱狂している信者に憑依することになります。何しろ同じ狂信他を一切排除し、自分たちだけが救われるという)によって強烈に結ばれているため、異常な憑依状況が展開することになります。集会や行事の熱狂的な雰囲気の中で、霊界からの働きかけが加速され、普段は霊通することがないような人にも憑依現象が生じるようになります。そして突如「神の声が聞こえてきた!」などというようなことになります。それは言うまでもなく、憑依した霊の声であったり、意図的にからかおうとする低級霊の声です。

地上での間違った信仰は死後もそのまま残り、憑依という形を通じて、引き続き地上に影響を与えることになります。こうした憑依霊たちは、自ら築き上げた信仰的・思想的牢獄を頑(かたくな)に守り続けようとするため、霊的覚醒までに長い時間を要することになります。彼らが霊的に目覚め、憑依状態を抜け出すのは並大抵のことではありません。

オーラの中で喧嘩(ケンカ)を続けている霊たち

一人の地上人のオーラに、しばしば複数の霊が憑依することがあります。とは言っても日本の霊能者がよく言うような、何十・何百という霊が集合的に憑くということは実際にはありません。多くてもせいぜい10体というところでしょうか。

同じオーラの中に閉じ込められた霊たちは、それぞれが暗くて狭い窮屈なところに押し込められたような状況に置かれ、同時に憑依している他の霊の存在にはほとんど気がつきません。しかし時に相手の存在に気がつくと、相手が自分の居場所を横取りしようとしていると思い、争いを引き起こすようになります。地上人にとっては憑依霊同士が、自分のオーラの中でケンカをするのですからたいへんです。精神錯乱のような状態に陥るのが普通です。

こうしたオーラの中での憑依霊同士の争いのケースで、きわめて興味深い事例が、ウィックランドの除霊治療の記録に残されています。一人の女性に3体の霊が憑依していました。1体は女性霊で、1体は男性霊(アメリカ人)で女性霊の求婚者、もう1体も男性霊(メキシコ人)でした。実は2人の男性霊は、地上にいたとき女性霊をめぐって恋敵だったのです。2人の男性は女性をめぐって争い憎み合っていました。そして一人が女性を射殺してしまいました。その後、男2人のケンカはエスカレートし、結局2人ともケンカによって死んでしまいました。

この3人の霊が偶然、一人の女性に憑依しオーラの中に閉じ込められたのです。2人の男性霊は、自分たちを閉じ込めているオーラの中で、依然すさまじい争いを続けていました。3人の霊たちは皆、自分たちが死んでいることを自覚せず、肉体が滅んだ後も、地上人のオーラの中で愛と憎しみと嫉妬の悲劇を演じ続けていたのです。そして霊に憑依された地上人は、激しい精神障害とひどい神経衰弱を引き起こし、異常な行為を繰り返すことになったのですその異常行為のすべては、霊の争いの反映です)

ウィックランド博士の除霊によって3霊は死を自覚し、憑依状態から抜け出し、霊に取り憑かれた患者の異常も治ることになりました。

地上人から妨害され、虐待されていると錯覚する霊

憑依霊は、大体において自分が地上人に害を及ぼしていることに気がつかず、何か変だと思いつつも、暗闇の中実際は地上人のオーラの中)で悶々とした時を過ごすことになります。当然その間、地上人にはさまざまな障害が現れます。憑依霊は、自分と地上人との区別がつかないために、地上人が霊を排除しようとすると、一方的に自分の住処を追い出されると思ってしまうのです。時には見知らぬ人間から邪魔されたり、攻撃されたり、痛めつけられると錯覚します。自分の方が憑依しているのに、反対に相手の地上人がしつこく自分に付きまとって離れないと思うようなこともあります。

憑依霊は自分に危害を加えたり追い出そうとする相手(地上人)に仕返しをしたり、懲らしめを与えようとします。その結果、地上人は自分で自分の身体を傷つけ痛めつけるような行為を繰り返すことになります。髪の毛を引っ張ったりむしったり、手足に噛みついたり、手足を周りの物体に叩きつけたりします。大暴れして絶叫したり、跳びはねたりするようなこともあります。

自殺しようと思い続ける霊

自殺が憑依によって引き起こされることは、よく知られています。実は憑依による自殺には二通りのケースがあります。1つは“邪悪霊”が意図的に自殺をそそのかしたり、意識を完全に奪って強引に自殺させてしまうものです。こうした自殺については、この後の章で取り上げます。

もう1つの自殺のケースは、自分が死んだことに気がつかない自殺者が、地上人に憑依し、何とか自殺を成し遂げようとして引き起こされるものです。すでに自殺して霊界にきていながら、その事実に気づかず、自殺に失敗したと思い込んでいるのです。自殺霊が霊媒体質の地上人に憑依しオーラの中に入り込むと、霊には自分と地上人の区別が全くつかなくなります。そしてもう一度自殺を図ろうとします。その結果、地上人を自殺させることになってしまいます。

最悪の場合、一人の地上人を自殺に追い込むだけでは終わらず、同じようなことを繰り返すことになります。霊はすでに死んでいるのに、自殺に失敗してまだ生き続けていると思い込み、次々と別の地上人を自殺に追いやっていくのです。

地上に再生しようとする霊

大半の憑依霊とは異なり、自分が死んだことに気がついていながら、間違った知識が屈折した憑依状況をつくり出すようなことがあります。その1つが地上に再生しようとして、地上人に憑依してしまうケースです。本人に悪意はないものの、結果的に地上人を苦しめることになります。

スピリチュアリズムでは、インディビジュアリティー(霊的意識の総体)としての再生は認めますが、一般に考えられている同一人格(パーソナリティー)としての再生は事実でないことを明らかにしています。こうした再生の複雑な状況については、スピリチュアリズムによって初めて明らかにされましたが、仏教やセオソフィー(神智学)などの間違った輪廻再生観を信じたまま他界した霊が、地上に生まれ変わりたいと願うことがあります。もとよりそうした再生などあるはずがないのですが、それを強引に実行しようとして、地上の人間に憑依してしまうことになります。

彼らはきわめて低俗で利己的な動機から、地上に再生したいと思うのです。もう一度、生まれ変わって金持になったり、高い地位や名誉を手にして他人を見下し自慢したいといった思いから再生を願うのです。本人は再生するつもりが、結果的には憑依することになってしまいます。そして異常な憑依によって地上人の自由を奪い、地上人を精神障害者や肢体不自由者にさせてしまうことになります。

5)邪悪霊(凶霊)による意図的な憑依

2種類の憑依――「無意識的憑依」と「意識的憑依」

これまで述べてきたのは、一般的な憑依のケースです。憑依霊の多くは死を自覚していないために無意識的に地上人に取り憑き、その結果、地上人を苦しめるようになります。

しかし幽界の下層には、こうした単純で無知な霊ばかりでなく、悪意を持って地上の霊媒体質者を付け狙っている邪悪な地縛霊もいます。彼らはいったん目をつけた霊媒体質者にしつこく付きまとい、巧妙に働きかけます。そして当人だけでなく、家族や親族をも巻き込んで翻弄(ほんろう)することになります。一般的な憑依が、死んだことを悟れない霊たちによって無意識・無自覚のうちに進行するのに対し、この“邪悪霊”のケースでは、初めから害やトラブルを引き起こすことを目的として意図的・作為的に行われます。

多くの憑依霊は、霊的真理に無知である点を除けば、それほど邪悪性はありませんし、死を自覚するようになれば憑依状態から解放され、それにともない現象は消滅します。しかし“邪悪霊”は性格が悪意そのものに染まっており、本人を説得してやめさせようとしても応じようとしません。高級霊の警告にも耳を貸さず無視し続けます。憑依されている地上人が、頑(がん)として憑依霊を寄せ付けないような状況をつくらないかぎり、いつまでも憑依は続きます。

また普通行われている除霊といった方法では、あまり効き目がありません。邪悪霊は、身の危険を感じれば地上人から離れ、安全になればまた取り憑くといった狡猾(こうかつ)なやり方をするからです。

巧妙に支配の範囲を広げる

地上の霊媒体質者がよからぬ見栄や願望を抱くと、邪悪霊はそれを見逃さず働きかけ、地上人の欲望をさらに煽るようにします。霊媒体質者は、そうした霊界での動きに全く気がつきません。

邪悪霊は最初から強引に地上人を支配しようとはせず、回を追うごとに支配の範囲を広げていきます。徐々に意識や思考をコントロールし、最終的に完璧に操ることができるように仕向けていきます。そして最後に、地上人を決定的な破局に陥れるように企てるのです。

邪悪霊たちの動機――憎しみ・嫉妬・からかい

邪悪霊の心には、善なるものへの憎しみ・嫉妬が燃えさかっています。彼らの中には、地上時代に自分を苦しめた相手に恨みつらみを持ち続け、復讐しようと企む者もいます。スピリチュアリズムを敵視し、やっきになってその普及を妨害しようとする者もいます。また誰でもいいから苛(いじ)めて、憂さ晴らしをしたいと思っている霊もいます。高級霊のようになれない嫉妬と、幸せそうな地上人への妬みから、悪事をしたいという欲求に駆られている霊もいます。彼らはこのような邪悪な思いから、きわめて活発に地上に働きかけるのです。

また悪意はそれほど強くないものの、地上人をからかって面白がっている霊もいます。イタズラをして地上人を困らせ、それを見て楽しみたいというような悪趣味を持った霊です。彼らも邪悪霊と同様に、意図的に地上人に働きかけ、イタズラをするチャンスを狙っています。こうした邪悪霊やイタズラ霊によって、意識的に憑依現象が引き起こされるのです。

邪悪霊に取り憑かれると、きわめて危険な状況が展開することになります。彼らは地上人を無理やり自殺に追い込んだり、酒乱に仕立てたり、残酷な殺傷事件を起こさせたりします。邪悪霊に強引に自殺させられる場合、憑依された地上人当然、強い霊媒体質者です)は、突然誰かにつかまれたようになって身動きできなくなり、同時に意識を失います。気がつくと“自分の死体を見る”ということになります。

ニセの前世を吹き込む

邪悪な憑依霊は、自分の地上体験の知識や、霊媒体質者の潜在意識内に存在する知識を利用して、もっともらしいドラマやニセの前世人格をつくり出します。それを前世の記憶であるかのごとく憑依の相手に吹き込むのです。霊媒体質者が前世に対するこだわりがあれば、邪悪霊は必ずこうした手を用いて翻弄するようになります。当然相手は、そのドラマを自分の前世と思い込むようになります。

例えば邪悪霊が、憑依の相手の前世はどこかの王族の王女で、戦争に巻き込まれて非業の死を遂げたといったストーリーをつくり出します。すると憑依された地上人は、フッと自分の前世は王女で不幸な死に方をしたのではないかと思うようになります。邪悪霊は、王女のイメージを次々と送り、時には霊的スクリーンにわざとこのドラマを見せつけたりします。このようにして前世のイメージが定着するようになり、地上人は“自分の前世は間違いなく王女であった”と強く思い込むようになります。

前世探しがブームとなっている現在、こうした形で低級霊によって翻弄されているケースが多いことは言うまでもありません。

“神の化身”に仕立てる

また低級霊は、霊媒体質者の潜在意識に直接働きかけ、幻影を見せたり、善悪の判断力を麻痺(まひ)させたりします。その結果、地上人は自分を“神の化身”であると思い込むようになり、それらしい勿体振った通信を口にすることになります。その通信は滑稽きわまりない内容で、誰が聞いてもウソ・ニセモノと分かるのですが、憑依された本人は判断力が麻痺しているため、少しもおかしいと思わずに大真面目で大言壮語するのです。

霊媒現象に異常に関心を持ち、見栄に駆られて自動書記を始めたりすると、こうした憑依に翻弄されることになります。憑依霊に思考を支配されると、どれほど馬鹿げたことでも頭から信じ込み、時に無分別・不名誉なことも平気でするようになります。当人はすでに正常な判断力が失われているため、低級霊がどのような思考を吹き込んでも、それをすべてまともに受け入れ、霊の思いどおりに操られることになります。

もし、そうした人間の周りに霊現象に関心を持った者たちが集まるならば、低級霊は、わざと慈悲心だの人類救済だの神の愛だのといった美辞麗句を吹き込みます。憑依されている当人はまるで自分が救世主にでもなったかのように思い込み、大真面目にそれらしく振る舞うようになるため、それを見ている人々は簡単に騙されることになります。見栄の強い霊能者や教祖には、この手の憑依のケースが多いのです。