第61回

診療裏話9(足がくさい)

00.9.4

うらばなし9

「足がくさい」

外来診察をするときは普通患者さんをベッドにねかせます。
心電図をとったり、胸部や腹部の聴診をしたりしますので
ベッドに上がってもらうわけです。
ベッドに上がるときもちろん靴を脱いでいただきます。
ところが、この時とんでもなく足がくさい患者さんがいます。
「患者さんの○○さんを休ませました。先生診察お願いします。」
と看護婦さんに言われてから、診察室に入るわけですが、
入った途端、「うっ・・・何だこのにおいは〜」と心の中で思うことがあります。
もちろんくさいなんて患者さんに言えません。
何食わぬ顔で診察をこなします。
しかし、なかにはちょとやそっとのくささではない患者さんがいます。
猛烈なくささといいますか、納豆が「おそれいりました」と降参しそうなくささです。
そんなとき私は息を止めます。
なるべく患者さんに話しかけないで黙々と聴診触診すすめます。
でも時々気の利かない(すみません!)看護婦さんが、息を止めて診察しているのに、
「先生、この患者さん足がむくんでいるそうです。」などと話しかけます。
「えっ、足がむくんでいるのですか。」とうかつに返事してしますと、
息継ぎしなければならなくなります。
しゃべった瞬間、「しまった!」と思いますが、しかたありません。
素直に息継ぎするしかありません。ところが、この息継ぎのくさいことくさいこと。
鼻がネジまがります。
鼻で吸わず、くちをあけて息吸うとあまりくさくないこともありますが、
酸欠の魚がぱくぱくしている感じになります。見苦しくてできません。
こういう状況になると、とにかく早く退散したいのです。
私はこんなとき看護婦さんに、「早く退散しましょうよ〜」と目で合図を送るのですが、そんなときにかぎって看護さんは患者さんの症状にこだわり
その場から逃がしてくれません。
気が利かないのか、こんなにおいに馴れているのか、
嗅覚が障害されているのかわかりませんが、
看護婦さんしだいでは私も辛い思いをします。
そんなときは、最後の手段で、
「はい、ベッドからおりてください。こちらで説明しましょう。」
と言って、早く靴をはかせようと試みるのです。
「頼むから早く靴をはいてくれ〜」
と思い誘導するのですが、こういう患者さんにかぎって、
「先生こちらの足がけっこうむくんでいます。」などと、
逃げるどころかますますこの足に近づかなくてはならない時もあります。
診察に来るときは足くらい洗ってきて欲しいものです。

壁紙はかふんさんに貸していただいたものです。

かふんさんの HPにはリンク集から行けます。

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