第65回

 内服薬のシ−トを誤飲し、縦隔洞炎で死亡した49歳男性

00.9.13


内服薬のシ−トを誤飲し、縦隔洞炎で死亡した49歳男性

49歳の男性が、風邪をひき病院を受診しました。
総合感冒薬および抗生物質の内服を処方してもらいました。
ところがこの抗生物質の内服を慌ててシ−トごと飲み込んでしまったようです。
かなり喉のむせ込みがあったようですが、本人はシ−トを飲み込んだことに気づかず、
何度も水を飲むことで喉の違和感がなくなってしまったのでそのまま放置してしまったようです。
3日後に高熱が出て激しい胸痛が出てきました。
本人は風邪の悪化か心筋梗塞でも起こしたんじゃないかと思い再度外来を受診しました。
40℃近い発熱があり入院を勧めました。
入院後喉の違和感と胸痛の原因精査のため上部消化管内視鏡(胃カメラ)を施行しました。
すると何と食道に3日前に処方されていた抗生物質のシ−トが刺さっていたのです。
すでに3日経過しておりかなり深い潰瘍を形成していました。
胃カメラの異物鉗子でこのシ−トを取りだしました
本人はこのシ−トを見て3日前の喉のむせについて納得したようでした。
胸部CTで確認しますと食道周囲に炎症が認められました。
縦隔洞炎という状態で難治性になる恐れがありました。
すぐに外科(食道などの消化器外科)のある病院に転床しました。
しかし、その2ヶ月後残念ながら縦隔洞炎から敗血症を起こし、亡くなりました
たかが、薬のシ−トで命を失ってしまいました。
シ−ト誤飲は目の不自由な方や痴呆の老人だけでなく、
普通の人がちょっと慌てて誤飲してしまうこともあるんです。
誤飲予防のためにはシ−トを切らないことです。
最近は製薬メ−カ-もシ−トの割線のいれ方を工夫しているようです。
しかし、ハサミで細かく切ってしまう方が多く、なかなか事故が減らないようです。
飲みやすく、間違いにくくするために小分けするのであれば
シ−トから出して小分けする習慣をつけるべきでしょう。
シ−トを切るのは大変危険であることを知っておくべきです。

シ−トが刺さって潰瘍を形成した食道周囲の炎症

CTスキャンで確認された


縦隔から胸腔内への炎症の波及

胸水(食道内容物のもれ)が確認された

刺さった部位が穿孔し内容物がもれている

これは実際に飲んだ薬とは異なります

ほぼ同じ大きさのシ−トです。

この2錠は分離されないように割線が付けられていません。

メ−カ−側の工夫です


しかし、現実にはこのように患者さんが

ハサミで切ってしまうケ−スが多いのです

この大きさは危険です

何とか飲めて食道にひっかかる大きさです

角が尖っており粘膜への損傷が強いでしょう

絶対この大きさに切るべきではありません

診療日記ホ−ムへ