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| 関節リウマチの新しい治療 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 1. はじめに 関節リウマチの治療の進歩は最近めざましく、あと数年もすればさらに優れた治療法が臨床の場でも使えるようになると思われます。最終的には発症を防ぐワクチンの開発を完成させなければなりませんが、早晩遺伝子治療が安全に行われるようになるものと思われます。現在使われている治療体系は関節リウマチの病態を是正するもので、それらをまとめて疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)といいます。メソトレキセート(MTX)は1980年代半ばにFDAが認可して以来、治療の要となり、現在アメリカの専門医に最も多く処方されているDMARDです。他のDMARD(シオゾール、アザルフィジンEN、リマチル、メタルカプターゼ、リドーラ、カルフェニール、モーバー、オークル(以上は日本での保険適用)、イムラン、サンディミュン)と比較して有効率が高く副作用が少ないために長期にわたる関節リウマチの治療には適していることがわかってきました。MTX単独で効果が不十分な場合は他のDMARDと組み合わせて治療を行います。1998年頃から関節リウマチの治療薬は開発ラッシュでなかでも 1)抗TNF療法剤 @Etanercept(TNF-αと結合する蛋白、年間費用$6000、AInfliximab(人-マウスキメラ抗TNFモノクローナル抗体、1999年11月FDA認可。年間費用$7000-11000)、BD2E7(人抗TNFモノクローナル抗体、現在治験中)、CPEG sTNF RI(pegylated soluble TNF typeT receptor) 2)新しいDMARD:Leflunomide(経口dihydro-orotate dehydrogenのpirimidine合成阻害剤) 3)選択的Cox-2阻害性非ステロイド系抗炎症剤 @Celecoxib、ARofecoxib は最も注目されているものです。日本では未だ認可されていませんが、多くはFDAが認可しており、日本以外の国々ではすでに使われているものです。それらについて関節リウマチの病態のどこにはたらくのか、治療成績などを中心にご紹介いたします。 2. 関節リウマチにおけるTNF @ TNFはマクロファージが産生するサイトカインです。TNFはcachexinとも呼ばれ、慢性炎症を伴う個体で悪液質を招来(lipoprotein lipaseを阻害するため)します。プログラムされた細胞死、すなわちアポトーシスを誘導します。また、炎症性サイトカイン(IL-6,IL-8,IL-1)を誘導します。線維芽細胞、軟骨細胞、白血球から基質metalloproteinase(MMPs)を遊離させます。接着分子産生を促し、白血球が血管外へ遊走させます。これらの作用は炎症反応を増大させますので、関節リウマチ、多発性硬化症、全身性血管炎、移植後拒否反応、GVH病などの慢性炎症性疾患では主要な役割を果たしているものとして注目されてきました。 A TNFはTNF-α変換酵素(TACE)でTNFに変換されます。 B 3つの分子が凝集して、線維芽細胞、白血球、内皮細胞のTNF受容体(p55(typeT)、p75(typeU)の2種あり)に結合します。 C TACEはTNF前駆蛋白に作用するだけでなく、受容体に作用して可溶性TNF受容体を作ります。可溶性TNF受容体の半減期は極めて短くせいぜい数分です。 D 可溶性TNF受容体はTNFを介した炎症反応を抑えます。 E 関節リウマチではTNFは関節液中で増加しています。関節液中のTNF濃度は血中の4、5倍に達します(健康な状態では等濃度)。また、可溶性TNF受容体も血中、関節液中いずれでも増加しています。これらの知見からTNFだけを標的とする治療法方法が考えられだされることとなりました。 3. 抗TNF療法 抗TNF療法は関節リウマチや関連疾患の方と医師に新しくて胸躍らせる治療法です。サイトカインの生物活性や機能が解明され今後も新しい抗TNF療法が開発されつづけることと思います。例えば、選択的にTACE阻害することや、TNFやTNF受容体の機能を調整する遺伝子治療などが研究されていくものと考えられます。また、他のサイトカインやmetalloproteinases、接着分子を制御することによりTNFを鎮静化することができるわけです。抗TNF療法で最も懸念すべきものは感染症の罹患率の増加ですがおよそ3年間の使用成績では有意に増加することはないとされています。また、他の治療法と同様に治療によく反応する人と反応しない人がいることを念頭に置く必要があるかと存じます。抗TNF療法は高価ですので、今後の高齢化社会においては費用対効果についても社会のコンセンサスが得られなければならないでしょう。現在、実用段階にあるいくつかの抗TNF療法についてお話します。 1) Etanercept @ Etanerceptは人工的に作り出された可溶性TNFp75受容体をIgGのFc部分につけたものです。このため半減期を3-4日まで延長させることが可能になり、3分子凝集したTNFに対する親和性を高めることができました。 A Etanerceptが血中から消失するとTNFがふたたび増加してきますので、週2回注射する必要があります。しかし、一方でTNFは感染症のコントロールに必要なものですのでTNFを完全に無くすことはできません。 B Etanerceptの効果は強力なDMARDに匹敵しますが、副作用はDMARDより少ない結果が出ています。第U相:用量決定試験では16人の関節リウマチの方に投与して、関節scoreを45%改善(Placeboは22%)し、感染症などの副作用は認められませんでした。Etanerceptに対する抗体の出現も認めませんでした。 C 第V相二重盲検試験(Morelandら)では180人の関節リウマチの方に3ヶ月間投与して、16mg/uが0.25mg/u、2mg/u、placeboより優れた効果でました。16mg/u投与された75%の人がACR core setの20%改善を認めましたが、注射部位の発赤以外の副作用は認めませんでした。ACR20というのは元の状態を100とすると50まで改善したことを示します。また、ACR70というのは30まで改善したことを示します。 D 長期第V相二重盲検試験では6ヶ月間、10mgまたは25mgを週2回投与しましたが、25mg投与した59%の人がACR20(40%の人はACR50)を認めました。QOLの改善をHAQでみるとplacebo2に対し39の改善を認めました。注射部位の発赤はplaceboでは10%でしたが、Etanerceptoでは37%でした。 E 長期投与試験では713人に投与し、75%は30ヶ月後も投与しており、感染症、悪性腫瘍の発生は増加せず、薬物誘発性エリテマトーデス、抗燐脂質抗体症候群は認められませんでした。 F MTXとの併用療法の成績 平均週18.3mgのMTX投与を受けているMTXに対して反応が悪い関節リウマチで25mgのEtanerceptを併用投与すると71%はACR20の改善を認めましたが、placebo投与群(MTX単独投与群)では27%の人がACR20の改善を認めました。併用群ではMTXやPSLの投与量を減らすことが可能となりました。 G 早期関節リウマチにおける成績 632人の発症3年以内の関節リウマチが参加しました。(1)Etanercept25mgとplaceboの錠剤、(2)Etanercept25mgとplaceboの錠剤、(3)MTX週7.5mgから20mgとplaceboの注射の3群に割り付けました。MTX投与群では投与開始8週以内にMTX投与量は週平均18.3mgとなりました。1年後骨びらんを認めないのはEtanercept25mgでは75%で、MTXでは57%(P<.001)。関節裂隙の狭小化は両群で有意差を認めませんでした。ACR20改善はEtanercept群では2週目から16週目までは有意にMTX群より高くその後は有意差はありませんが常に高くなっていました。副作用のため投与中止を余儀なくされたのは217人のMTX群では10人でしたが、207人のEtanercept群では5人でした。無効のため中止を余儀なくされたのは両群で有意差を認めませんでした。感染症の発生はEtanercept群が有意に低く、検査値異常は肝機能検査(SGOT(MTX32% vs Etanercept16%)、SGPT(MTX44% vs Etenercept23%))を除き有意差がありませんでした。 2)Infliximab @ Infliximabは人の免疫グロブリンとマウスの免疫グロブリンのキメラでモノクローナル抗TNF抗体です。 A 第U相試験 対象は平均罹病期間10.5年の20人の関節リウマチ。いくつかのDMARDs(中央値4)に反応しない方々。20mg/kgを12-14日間静注。6週後にはAMS中央値180分→5分、疼痛点数7.1→1.9(73%改善)、腫脹関節数18→5、CRP39.5mg/dl→8mg/dl、HAQ2.0→1.1と改善を認めました。注目すべきは最終投与後8週から25週(中央値14週)に渡り効果が持続した事です。 B 第U相単回投与試験 対象は73名のDMARD不応性関節リウマチ。投与量は1mg/kgまたは10mg/kg。4週目10mg/kg投与群の79%がPaulus基準で20%改善、50%が50%改善。A,Bいずれの治験でも臨床的な副作用は認めず、抗キメラ抗体も認めませんでした。 C Infliximab-MTX併用二重盲検治験成績 対象:101名の関節リウマチ 投与方法:Infliximab(1,3,10mg/kg)。またはInfliximabのplaceboとMTX週7.5mgまたはMTXのplaceboを併用投与。結果:Infliximab投与群では60%がPaulus基準で20%改善。MTXを併用投与することによりInfliximab投与間隔を伸ばすことが可能となり、抗キメラ抗体の発生率は3分の1に低下。薬物誘発性エリテマトーデスは認めなかったが、Infliximab投与群の8%に抗二本鎖DNA抗体を認めた。抗キメラ抗体の発生率はInfliximab群全体では17%で、MTX非投与Infliximab1mg/kg投与群では50%、MTX投与Infliximab10mg/kg投与群では7%であった。副作用は頭痛が最も多かった。 D 長期Infliximab-MTX併用二重盲検治験成績 期間:54週。投与方法:Infliximab3mg/kgまたは10mg/kg またはplacebo4-8週毎、静注とMTX。結果:3mg/kg投与群の42%、10mg/kg投与群の59%がACR20改善を獲得しました。Placeboと比較して副作用は有意差を認めませんでした。X線所見は併用投与群ではMTX単独投与群に比べ有意に進行が抑えられていました。 3) D2E7:人抗TNF抗体。 @ 用量決定試験 対象:283名の関節リウマチ。方法:D2E7を20mg、40mg、80mg、placeboを3ヶ月間投与。結果:ACR20の改善が認められたのは20mg投与群では49%、40mg投与群では57%、80mg投与群では56%でplacebo群では10%であった。 A 単独投与試験 対象:66名の関節リウマチに対し1年間2週間に1度投与。結果:66名中22名では1年後もX線所見の進行を認めませんでした。現在第V相試験進行中。 4) PEG sTNF-RI:ペギル化可溶性TNF受容体で、第T相試験で免疫原性は認めず、現在第V相試験進行中。有用性が示されている。 4. Leflunomide Leflunomideは経口のdihydro-orotate dehydrogenaseのpirimidine合成阻害剤です。 @ Smolen,らの投与成績 1年目、leflunomideとSulfasalazineがplaceboに比べ有意にX線所見の進行を遅らせることと2年後のfollow upでもLarsen scoreによるX線所見の評価をしてLeflunomideはX線所見の進行を遅延させることを確認しました。 A Tugwellらの投与成績 QOLがHAQで評価して1年後にはplaceboに比較して有意に改善していることと、2年後のfollow upでも同様であることを確認しました。 B 第V相二重盲検試験(CohenらのULTRA治験) MXT週7.5-20mg投与群、Lefluromide1日20mg投与群、placebo投与群の3群について1年目は482名を対象に行われ、安全性と有効性が確認されました。2年目は235名を対象に追跡しましたが、最終的にはplacebo投与群は検討可能な例数を維持できませんでしたのでMTXとLefluronomideの比較成績を得られました。
Sharp scoreを用いてX線所見の比較検討をすると1年目より2年目のほうが改善していました。重篤な副作用はLefluronomide群で2%、MTX群で4%に認めました。Lefluronomide群で最も多かったのは下痢(37%)で、可逆性の脱毛11%、感染症6.4%と続いていました。 C Kaldenらの多国籍Lefluronomide治験成績 LefluronomideとSulfasalazineの比較検討を行っていますが有用性が示されています。 5. Cox-2選択的阻害薬 アメリカでは非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)使用中の関節リウマチ1000人につき13名の重篤な胃腸障害を認めます。また、年間死亡率は0.22%に達し、NSAIDsを使わない人に比べ4.21倍となることが知られています。NSAIDs使用に伴う死亡数は16500人でAIDSによる死亡数16685人に匹敵しているのです。そこで胃腸障害のないNSAIDsが望まれていました。Cox-2阻害薬は大幅に胃腸障害を減少させます。Cox-1は胃粘膜や腎組織に常に存在する酵素ですが、Cox-2は炎症や細胞分裂により誘導される酵素です。Cox-2阻害薬はCox-1に比べCox-2を100倍抑制します。Cox-2阻害薬は大腸がんやArzheimer病の発生を抑える可能性が示唆されていますが、腎障害や、排卵抑制を来すことも考慮に入れる必要があります。 @ SimonらのCelecoxib12週間投与成績 対象:250名の関節リウマチ。方法: Naproxen、placeboを対照薬として抗炎症効果と胃腸障害の発生率を検討。結果:Celecoxibの抗炎症効果はplaceboより有意に優れ(P=.008)、200mg、400mgのCelecoxibの抗炎症効果はNaproxenと同等。胃潰瘍発生率はplacebo4%、Celecoxib6%,Naproxen26%. A LangmanらのRofecoxibに関するmeta-analysis結果 NSAID投与を受けた5435人中10%に胃潰瘍が発生。5435人中3357人がRofecoxib投与を受けていました。胃潰瘍の発生率はRofecoxib1.3%で他のNSAIDの半分でした。 6.このほかの新しい治療法 Prosorbaカラム すべての薬物が効かない場合、この血液濾過装置を用いることにより、Placeboに比較して有意に効果があり、30%の有効率が確認されています。なお、新しい方法ではありませんが、ミノサイクリン療法は1940年代から関節リウマチに対し投与され、1971年にマサチューセッツ総合病院から否定的な論文が発表されましたが、1990年以降に有用性を示す論文が立て続けに発表されています。 |
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