海の刺青

先日。友人に誘われて、伊豆七島の新島へ、釣りに出掛けた。

特一等客室とはいえ、数十年前の神津島行きの時と、

あまり変わらない船旅だった。・・・海は荒れて、辛かったけれど、

何か昔とは違う、心持ちが続いていた。 ・・・風がつよく、波の寄せる海岸線には、

誰もいなかった。  新島の木々だけが、愉快そうに風に舞っていた。 

・・・私は、忘れ物をした子供のように、叙情を探し続けたけれど・・・。

そこは、21世紀。現在の伊豆七島の新島だった。


夜明け前。風が収まったので、防波堤で囲まれた、係留場に出掛けた。

〜★その時、幻を見た。 風に揺れる街路灯の下に、消せない思い出が・・・。

「〜♪夜明けのコーヒー〜二人で飲もうと〜あの人が言った〜♪〜♪」

あれから、三十年。・・・あの時。自分を探すことで、一生懸命だった。

他人のマネをしながら、自分自身を探し続けたけれど・・・

私は、相変わらず怠け者で、夢をなかなか形にできなかった。

そして、今も。自分を探し続けている。涙と海水は、同じ成分だとか。・・・。 

シーズン・オフの伊豆七島はいい。