Radio Malta / Voice of Mediterranean (マルタ)


   地中海の島国Maltaは現在ではBCLには全く疎遠な国になってしまったが、かっては大規模な短波送信所を持ち、21世紀になっても日本語放送も行って いた。マルタはマルタ本島とゴゾ島からなる典型的な島嶼国家で、マルタ本島の面積は淡路島の半分程度、丁度隠岐の島(島後)と同じ位である。日本からは結 構時間がかかり、エミレーツ航空で夜に関空を飛び立ち翌朝ドバイで飛行機を乗り換え、キプロスを経てエーゲ海上を飛ぶ7時間のフライトの後夕方にやっと到 着 する。孤島ながら 欧州で最も早く文明が芽生えた場所で今でも当時の遺構が世界遺産として残っている。住民は欧州人で熱心なカトリック教徒だが、町並みはアラブ風、言葉 はアラビア語とイタリア語が混じったマルタ語(国内の放送は大半がマルタ語)で、アラブと欧州の接点であるこの国の複雑な歴史が感じられる。バカンスの時 期には多くの欧州人が訪れ、日焼けして真っ赤や真っ黒になった欧州人を見ることができる。
 周囲を海に囲まれた(ほぼどこでも地中海が見える!)海洋国家だけあって携帯電話の着メロにモールス符号を使っている人が結構いるので驚く。島中を 走る名物の黄色いバス (Yellow Bus)の中で「SOS」とのような呼び出し音が急に響くことがある!

 かっては英国領(その前はフランス領)であったが1964年にミニ 国家として独立した。第一次大戦でドイツと戦って戦死した日本軍人(第二次大戦ではド イツは同盟国であったが、第一次大戦では日本は英国の同盟国としてドイツと戦った)の墓が首都Valettaにあるなど日本とは親しい国の一つである。
 マルタで放送が始まったのは1935年でこの時現在まで続くRadio Maltaが創設されたが、狭い島をカバーするのに無線放送は不要とされ、英国Rediffusion社に委託した有線放送として出発した。放送が無線化 されたのは独立後の1973年で、この時運営団体Broadcasting Authority(現在のPublic Broadcasting Services)が創設され、Delimaraに設置された送信所より初めて中波の998kHzで無線放送を開始した。
 1971年にDuetche Welleがマルタ島西部のCyclopsに中継局を建設して当初75kW中波送信機により運用を開始した。そして1974年には250kW短波送信機 (テレフンケン社SV2540)3基、600kW中波送信機1基(1575kHz)を設置した。以後マルタは地中海の大規模な短波送信拠点の一つとなり、 北米・ 中近東・極東向けに電波を発射した。同年Broadcasting AuthorityはXandir Maltaと名称を変え、観光客誘致等を目的とした初めての海外向短波放送をCyclops送信所の設備を借用して実施した。しかし1983年にはドイツ との関係が悪化してDWとの協力関係が破棄され、DWはCyclops中継局の運用を停止した。マルタ政府は残された施設の運用費用捻出に苦慮し、翌 1984年に地中海を隔てて対岸にあるリビアと相互協定を締結し、同送信所をリビアとの共同事業として運営してゆくことになった。そして名称も 「Voice of Mediterranean」(VOM)となり放送時間も拡大されたが、それでも送信能力が余るために
IBRA RadioやAWR等のキリスト教局の送信にも一部使用された。この時期リビア側の放送はRadio Jumhuriyaという名称で1日1.5時間放送されていた。Radio Jumhuriyaの欧州事務所がMaltaのHamrunに設置され、そこからQSLカードも発行されていた。
 1990年にはXandir Maltaは現在のPublic Broadcasting Services(PBS)に改組された。ところが資金事情等からCyclops送信所は1996年に閉鎖(施設はドイツ政府との話し合いで撤去が決まっ た1999年まで残ってい た)されてしまい、その後VOMはロシアの送信所か らの送信となった。1997年2月9日からは日本 語放送も開始された。ロシア中継であったため非常に良好に受信され人気もあった。ところが1998年になると2010年までの長期契約を結んでいたリビ アから 送金が突然 途絶え、VOM放送は国家予算を圧迫するようになった。それでもその後5年間放送は継続されたが、ついに政府の決定で2003年12月31日に全面的に短 波 放送は中止となって しまった。通常は短波放送が廃止されてもwebだけは残るものだが、同局の場合は異例で放送の廃止に先立ちwebサイトが先に廃止された! Radio Jumhuriyaの廃止年は判然としないが送金が途絶えた翌年1999年までは放送していた。

 短波廃止後のPBSは国内向のみとなり、ラジオ放送では 999kHzの93.7MHzのRadio Malta、議会開催中だけ放送するRadio Parlament(106.6MHz)、音楽専門のMagic FM(91.7MHz)を運営している。TV放送も行っており、最近中国のCCTVと番組交換契約を結び注目された。但し欧州(マルタはEU加盟 国で通貨はユーロ)もここまで来るとあまり中国人は見かけず、街で見かけるアジア人は大半が日本人の旅行者である。
 国土が狭い事を逆に利用して放送のDRM化を推進しており、来年にはPBSのRadio Malta、MagicFMも含めてFM局の多くがDRM化され40チャンネルの新たなデジタル放送が開始されることになっている。同国ではDRM対応受 信機が 8000台も売れ、これは世界一だそうである。

 短波時代は非常にサービスの良い局で、返信率も良かったが、その後 は国内サービスのみとなり受信報告には興味を示さなくなった。マルタを訪れた折FMの93.7MHz(送信所は中波とは別のGharghurにある)を受信して報告を送ったがフォローアップを出しても返信はなかった。幸い今年の夏イタリアのシチリア島を訪問する機会があっ たため、今度は中波の受信を試みた。現在の中波送信所は中部Bezbzija(古都Rabatの山 の下)にあるが、出力が低く(5kW)マルタ島内でもうまく受信できないという難物で ある。三角 形のシチリア島でも島の西側、東側では受信 できず(モルドバのGrigoripol局が入ってしまう)、三角形の底辺に当たる南側のAgrigentoでやっと999kHzの波が受信できた。欧州 各国の混信 が 強くなる夜間を避け、昼間の直接波を狙うのがコツである。帰国後早速受信報告を出したが今度もなしのつぶて、技術部マネージャーのCostanino Abela氏にメールで問い合わせた ところ、「郵便は届いていない」(どの局でも最近こういう事が多い)とのこと、でも受信証明は発行するとの事なので、再度受信報告とPFCをメールで送 付、同氏はPFC をプリントアウトし、データを記入、サインしてモノクロスキャナー(多分カラースキャナーがなくコピー機のpdf作成機能を利用したものと思われる)で pdf化したものをメールで送付してくれた。郵便事情が世界的に悪化して行く中でこういう形でのQSL発行が今後増えて行くのであろう。放送局は首都 Valettaのある半島の付け根にある聖ロカ病院(St.Luke's Hospital)の南側Gwardamangiaにあるので直接行って見るのも一法であろう(実際に行って来た人もあるそうだ!)。忙しい中で対応して いただいたAbela氏には大いに感謝したい。
 過去のQSLとして、1974年DWマルタ中継局による短波試験電波送信時、1975年Xindir Maltaの短波放送開始時、Voice of
Mediterranean時代のものも参考に掲げた。

 Cyclops送信所は首都Valettaから バスで30分ほどの漁村で観光地(冷戦終結の際に「マルタ会談」の行われた地である)のMarsaxlokkの湾に向かって左の半島にあった。現在は送信 所 の鉄塔が立っていたところに清掃工場の煙突が 立っている。


  受信報告の宛先:  75 St.Luke's Road, Gwardamangia, MSD 09, Malta

  URL :  http://www.pbs.com.mt (マルタ語)

 E-mail:  info @ pbs.com.mt  (上記URL上より利用登録必要)


(左)Xandir  Maltaの放送開始直後1975年のQSLレター ”Malta Calling"という外国向番組が放送されていた 放送局の場所は変わっていないが現在私書箱はない
   当時のTelemalta Corporationの一部門であったため中波(当時は998kHzと755kHz)、FM(当時は89.7MHz) の表示 もある
(右)DW Malta中継局の運用開始前短波試験電波受信に対する1974年のDWからの受信証 DETSCHE WELLE TEST MALTAの局印が押してある 裏は当時の通常のDWカード
  


1988年 Voice of Mediterranean 時代のQSLカード
表面はCyclops送信所に近い
Marsaxlokkの港を海から見たところ   
裏面にはマルタ・リビア共同事業と明記してある VOMは廃止まで首都Valettaに私書箱を持って いた(と言っても首都に一つしかない小さな郵便局だが)
    


(左)2009年 シチリア島での受信(999kHz)に対してE-mailで送付されたPBSのPFC利用QSLカード 発行者は Costatino Abela氏 ギリシア文字で記入してある!
(中)Radio Maltaを統括するPBSのロゴ 上部の十字は1530-1798年までマルタを統治していた聖ヨハネ騎士団のマーク(1798年にナポレオンに占領さ れ、1800年以降はナポレオンを追い払った英国の領土となった)
(右)Radio Maltaのロゴ FM周波数しか表示されていない
  

(左)現在のBezbzija中波送信所の鉄塔 (右)現在のMarsaxlokk 左側の半島にCyclops送信所があった
  


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