Radio PMR (モルドバ  沿ドニエストル)

  Radio PMRは「モルドバからの分離派の秘密局」ということになっているが、モルドバを代表するGrigoriopol送信所の500kW送信機から堂々と出て いるので不思議に思う人も多い筈だ。これにはモルドバと沿ドニエストルとの深い因縁が関係する。モルドバ共和国はソ連時代の自治共和国で、ソ連の崩壊を受 けて1991年9月に独立した。この国は東側をウクライナ、西側をルーマニアに囲まれた内陸国で、民族的にはルーマニアに近く、独立に際して地名はルーマ ニア風のものに変えてしまった。国土の東側を南北にドニエストル川が流れているが、この川とウクライナに挟まれてた細長い地域を沿ドニエストル (Transnistria)と言い、ソ 連時代にロシア人が移住しロシアとの一体感が強い地域である。この地域の住民はモルドバの独立を快く思わず、独立後すぐにロシアとの併合を求めて内戦を起 こした。これがモルドバ・ドニエストル紛争で、当時まだモルドバに駐留していたロシア軍部隊は反乱軍を支援し、モルドバとロシアの全面戦争に発展しそうに なったため、ウクライナとルーマニアが仲介に入り、沿ドニストル地域の自治権をモルドバが認める替わりに、ロシア軍がモルドバ領内から撤退するということ で1992年に休戦協定が成立し現在に至っている。この間沿ドニストル地域では2006年9月に一方的な住民投票を実施、その結果ロシア編入(ロシアから 見れば「飛び地」になる)賛成が大多数になった として、その前段階として「沿ドニストル共和国」(PMR:Pridnestrovian Moldavian Republic、 РМН:Република Молдовеняскэ Нистрянэの 独立を宣言したが、当然のことながらロシア以外の国はこれを認めておらず。日本も未承認である。ソマリアとソマリランドの関係に似ているが、ソマリアのよ うに本国が無政府状態ではないため郵便は届くし、往来も可能となっている。

 ソ連時代の1974年に当時のソ連政府はRadio Moscow等の送信所として、沿ドニストル地域の中央にあるGriogoripolの郊外13kmのウクライナとの国境付近に高出力の短波・中波送信所 Griogoripol送信所を建設した。またモルドバの首都Chisinau(ソ連時代はKishinev)にも短波・中波の送信所が設立されたが、そ の後の事態をソ連側が予測したのか、ソ 連時代末期に短波 は廃止され、この地域の短波送信所はGriogoripolに集約された。モルドバの独立後国営のRadio Moldova、国際放送におRadio Moldova Internationalが設立され双方ともにGriogoripol送信所から送信していたが、内戦の結果1992年にモルドバは Griogoripol送信所の管轄権を失ってしまい、使用することができなくなってしまった。そのため国内向中波放送、国外向短波放送ともに隣国のルー マニアのGalbeni送信所を借用せざるを得なくなってしまった。Radio Moldova Internationalは2000年9月に送信料金が払えなくなって短波放送の中止に追い込まれたが、組織は残存しており現在はインターネットで細々 と放送している。中波の方はChisinau送信所の残存中波送信機(75kW)から出ている。

 モルドバを追い出したGriogoripol送信所は沿ドニストル自治政府の管轄(所有はロシアの送信管理会社RTRN)となり、すぐにRadio Pridnestrovye(Радио Приднестровья) の放送が短波・中波・FMで開始された。そして共和国の独立宣言の後は局名をRadio PMR(Радио РМН)と改め、国際放送を強化して現在に 至っている。未承認国にとっては国際短波放送を行うことは国際的な認識を高めてもらうという大きな意義があると言 えそうである。現にBCL界ではRadio PMRがモルドバを代表する短波放送だと思われている。

   Griogoripol送信所には1974-76に設置された旧ソ連製の500kW短波送信機が10基もある。送信機能はRadio PMRだけでは余るため、時間貸しで送信する管理会社Pridnestrovskiy Radiotsentr(Приднестровcкий Радиоцентр)が設立され、世界の 色々な放送局の送信所としても機能して外貨を稼いでいる。そのためか古い送信機な がら整備は行われている模様である。
 Radio PMRの国際放送は2004年より強化され、英語、フランス語、ドイツ語の放送が15分づつ2回日本時間の早朝〜午前(現在は6240kHz)に行われて いる。 500kW送信であるため、冬の時 期を中心に受信状態は良好な事が多い。また999kHzではロシア語放送が行われている。

  元秘密局ということもありサービスは今一つの局であったが、今年の冬に受信報告を送ったところ、何とE-mailでword形式のQSLが送られてきた。 同局の最近のwebページからロゴや地図を利用して作ったものである。webページに中にあるGriogoripol送信所の写真が入っているバージョン と入っていないバージョンの2種類があるが、小生には入っていないバージョンが送られてきた。

 受信報告の宛先:  ul.Pravdy 31,MD-3330, Tiraspol, Moldova

 E-mail: radiopmr @ inbox.ru

  FAX: +373 533 777 58

  URL:  http://radiopmr.org


(左)E-mailで送られてきたQSLレター 発行者は局長のKirsa Anatoly Alekseyevich氏  左上のロゴと右の地図は同局のwebからとったもの 周波数の74kHzは国内向FM放送74MHz(ロシアのFMバンド)の間違い
(右)局長のKirsa Anatoly Alekseyevich
(Кирса Анатолий Алексеевич )
  



(左)上空から見たGrigoriopol送信所(panoramioより) (右)Grigoriopol送信所の短波用アンテナ(同局webサイトよ り)

  


TopPage