アジア放送研究会設立30周年記念特別放送
Asian Broadcasting Institute 30th Anniversary Special Broadcast (Japan)



 短波受信者の集まりであるDXクラブでは自分たちで短波送信所から放送して見たいという気持ちが昔からあったが、ソ連が崩壊して余剰短波送信施設が発生 した1990年代以降、各施設が割安で送信時間を切り売りするようになり、1 回限りの短波放送でも実施できるようになったため、欧州のDXクラブでは時々記念放送を実施するようになった。最近ではドイツRhein-Main Radio Club (RMRC)の「セントヘレナデー特別支援放送」がリトアニアのSitkunai送信所から行われた。

  1979年に発足し活動を続けているアジア放送研究会は、DXクラブというよりもむしろ専門研究団体で、「アジアにおける放送の研究を通じて世界の放送受 信界の水準向上に貢献する」ことを目的としており、その研究対象は、日本、韓国、北朝鮮、中国、香港、マカオ、台湾、モンゴルの放送と、それらの国と地域 で使われている言語による世界の国際放送となっている。伝説によれば当時最高水準と言われた「短波」誌では到底飽き足らないDXerらによって設立された と言われている。設立当初より会誌「アジア放送研究月報」を発行しており、当初からその内容は高い水準を保っていたが、その水準を維持しつつ今日に至って いる。出版物、録音集も数多く発行しており、 WRTHの東アジア地域情報も毎年担当している。また北朝鮮の放送事情等についてマスコミにも多くの情報を提供している。
 クローズド会員制(現在会員数31名)となっており、会員の一般募集を行っていないが、毎年8月には一般参加可能な「近隣諸国放送研究フォーラム」を開 催、また会報「アジア放送研究月報」の一般購読も可能となっている。

 2009年は同研究会の創立30周年に当たるために、記念放送の実施が計画され、そのために特別会費が徴収された。日本のDXクラブによる創立記念特別 放送は2002年に日本短波クラブが創立50周年記念で実施したが、これは当時閉鎖間近だったIBB Delano送信所からの「VOA特別放送」という形態をとっており、番組もVOA制作であった(勿論送信所貸切形態の特別放送も他に例がなく間違いなく こ れも「金字塔」といえる)。 アジア放送研究会では、日本のDXクラブとしては初めて自主的に番組を制作して短波送信所から番組を送信する形式をとることになり、同年4月より海外の送 信仲介ブローカーに 打診したが、内米国の会社から同会のみ特別の条件で引き受けるとの回答があった。この会社が請け負っている北朝鮮向放送の前後が候補時間・周波数にあげら れた。同年8月に3時間帯、 3周波数で行われている北朝鮮向放送の受信調査を全国レベルで実施した結果、21:30-22:00に12085kHzで行われていた「自由北韓放送」の 後が最適という結論に達し、放送期日・周波数を以下のように決定した。

 2009年10月8日・9日(再放送) 22:00-22:30 12085kHz

 送信所等は明確にされていないが、ウズベキスタンのTashkent送信所より100kW、65度で送信されたとの見方が正確である。期日と周波数が決 まった上で放送開 始時の ISとテーマ音楽の制作が行われた。「アジアホウソウケンキュウカイ」という言葉を音に置き換えたものを中心に作曲・編曲され、実際に短波放送上で流 して見て識別できる音域であることを確かめた。演奏は赤門前電子楽団が担当した。番組全体の録音は目黒区にあるス タジオで行いmp3ファイルにしてインターネット回線利用で送信所に送られた。当日の開始・終了アナウンス(日本語、朝鮮語、中国語、英語)は山下透氏、 番組内のアナウンスは、山下透氏と近藤哲也氏が担当した。放送内容は「アジア放送研究会30年の歩み」(近藤哲也、山田充郎氏制作)、「台湾海峡の電波戦 を振り返る」(近藤哲 也、山田充郎氏制作)、「朝鮮半島の電波戦この30年」(山下透氏制作)の3つで、後者2つの番組内でそれぞれ6本の歴史的録音が使用された。
 「絶対聞こえる」と言うことがないのが短波放送の世界だが、両日の放送はほぼ満足に受信でき成功裡に終わった。電波戦の録音を聴いて涙が出て来 るのは実におかしいが、30年以上前のことを思い出してそんな感情が湧いてきてしまった。

 この放送の受信報告は10月30日まで限定で設けられた特別のE-mailアドレスで受付けられた。アジア放送研究会によれば受信報告総数は161通 で内国内からは136通、海外からは25通(韓国、中国、フィリピン、インドネシア、カザフスタン、米国、メキシコ、英国、スウェーデン、ロシア、フィン ランド、ノルウェー)であった。最遠からの受信報告は送信所から12000km離れていると推測されるメキシコからのものであった。国内からの報告の内 10通は無効で、21世紀の今日でも昔のBCLブームの頃を彷彿とさせる「物乞いレポート」(「聴いたベリ送れ」式)や「丸写しレポート」(全く同一文面 で複数から来る)もあったとういうから驚きである。会では有効な受信報告が確定した後、2010年に入ってからQSL カードのデザインを開始し長野県の印刷会社に発注して2月に完成させた。同時に葉書で151通が発送された。QSLカードは見本も含めて200枚印刷され たが、発行番号、受信事項の記入があり、更に同会の朱印が押してあるもののみが有効である。 小生は発行番号第26号のものを受け取った。
 
  QSLカードのデザインは東京を中心に情報が伝わってゆくことを表象した地図で、同会によれば送信所が東京ではないため、あくまで情報の伝播を示した 図 であるとのことである。また左下には2009年10月初めに行われたスタジオでの番組収録風景の写真が配置されている。
 なおこの時の放送内容はCD化され、送料とも\2,500で最近同会から発売された(詳細・見本・申込方法はhttp: //www.abiweb.jp/abi30.htm参照)。次回(40周年記念?)にまた凄い放送を期待したいものだ。なお本 記事の執筆に当たり情報を提供していただいた同会の近藤哲也氏に謝意を表したい。

 問い合わせ先:  〒100-8698  郵便事業株式会社銀座支店 郵便私書箱 2334号 アジア放送研究会
 E-mail:   info @ abiweb.jp
  :URL:    http://www.abiweb.jp



(左)特別放送QSLカード(表) 同会の研究対象範囲が地図に描かれている 左下は録音風景 (右)裏 日本語と英語
  大きさ 148×100mm
     


(左)QSLカードに記入 (中)朱印を押して記入済カードを整理 (右)夜の街で投函する (何れもアジア放送研究会提供)

     


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