IBB Philippines Transmitting Station (フィリピン)


 IBB Phlippines Transmitting Station(旧VOAフィリピン中継局)は主としてアジア向短波・中波放送拠点として戦後米国によって整備された中継局である。現在送信拠点はルソン 島中部の西海岸にあるPoro(San Fernand)送信所と、首都マニラ北郊にあるTinang送信所に分かれている。

 最初に建設・整備されたのはマニラの北約300kmに位置するPoro送信所で、1953年に15kW短波送信機3台、翌1954年に35kW短波送信 機2台、更に当時としては世界最大 級の1000kW中波送信機1台を導入して、主として中国南部・東南アジア・アフリカ東部をターゲットとしたVOA放送の中継を同1954年に開始した。 冷戦の激化で送信所は強化され、1957年には100kW短波送信機2台、1964年には50kW短波送信機2台を導入して大規模な短波送信拠点に発展し た。ベトナム戦争・冷戦の更なる激化で、Poro送信所の機能だけでは不足となったため、1965年にはマニラ北郊約130kmにあるTinangのサト ウキビ畑や田んぼに囲まれた約2300エーカーの土地にもう一つの短波送信拠 点がHughes社に委託して建設され、翌1966年より50kW短波送信機3台で運用を開始した。更にパワーゲームの進展に合わせ1969年には 250kW短波送信機10台が一括導入され、更に1982台に250kW短波送信機が2台追加されて、Tinang送信所が当時のソ連(現ロシア)、中 国、東南アジア向短波送信拠点となり、ここに両送信所を合わせてアジア最大規模の送信体制が実現された。

 Tinangが短波送信の拠点になるに従い、老朽化したPoroの短波送信施設はその後撤去され、現在Poro送信所は1000kW中波送信機1台(周 波数1170kHz、1954年当時は1140kHz、設備は2005年に更新)のみの運用、Tinang送信所では導入された短波送信機すべて (50kW3台、250kW12台−内7台は200kWに減力運用)が稼働している。またPoro送信所はTinang送信所より遠隔操作で運用されるよ うになった。Tinang送信所は日本でVOAを聴く場合米国本土のDelano送信所と並び最もポピュラーな送信所であった。極東向 英語放送は長らく夜間に9760kHzで送信され、NSB(現ラジオNikkei)専用チューナーでも受信できたこともあり、 VOAの定番周波数として人気があった。

  IBB管理となってからはVOA放送でけでなく、RFAの中継にも使用されるようになった。またTinang送信所はRNW等他の局の中継も請け負うよう になっ た。しかしVOAの中国向放送の中止等大幅な縮小を受けてこの中継局も米国にとっての必要性が減少してきている。特にTinang送信所は1960年代に 導入した送信機 が老朽化しており、廃止のおそれも十分ある。既に2007年のIBB内部文書では廃止が適当との結論が出されている。日本では昼間も安定して受信できるの で残念な話 である。 米国はフィリピン政府との間で、送信所設置の見返りとしてPhlippines Broadcasting Service(PBS)の短波放送にTinang送信所の設備を提供する(他にMalolosの920kHz 50kWの中波送信機も供与されている) 契約を結んでおり、単純には行かないであろうが、もしTinang送信所が消滅 するとPBSの短波放送も一挙消滅という最悪の事態も起こりうる。なお2006年には
IBB Philippines Transmitting Station全体で8億5000万ドルの予算で運用されていた。このところ米国議会の反対でVOAの中国向放送が維持されることになったので一筋の光明 が見えてきた感もあるが。

 この送信所は周囲との連携が重視され、貧しい農民に土地を開放するなどの施策を行っている。そのためか、かなり早い時期からManilaの米国大使館内 に連絡事務所が開設されており、他の中継局や送信所と同様に独自のQSLも発行されたきた。2007年以降は連絡機能もManilaから米国に移転された が、機能自体は残っており独自の連絡先を有している。PC出力の独自QSLを発行していたこともあったが、最近はVOAのQSLカードを使用したものに換 わっている。しかし独自発行だけは続いている。是非継続希望の手紙とともに受信報告を送ろう。返信料として1〜2ドルの同封が必要である。
 ここに掲げたQSLカードは朝09:30-10:00の17820kHzの英語放送(この放送は混信もなく広帯域にして十分な音質で安定して受信でき る)に対する最近のものである。

  受信報告の宛先:  IBB Philipinnes Transmitting Station, Unit 8600 Box 1490, DPO AP 96515-1490, U.S.A.




(左)VOAの送信所写真シリーズQSL利用のQSLカード表面 多分Tinang送信所の写真であろう 大きさ178×127mmの大型 カード Philippines中継局から送られてきたが消印は米海軍軍事郵便局(FPO)であった
(右)同裏面 送信所名も記入されている

     


Tinang送信所の航空写真 (Phlippines Flight Simmers GroupのHP http://www.philskies.netより)




(左)Poro送信所のContinental社製1000kW中波送信機(導入当初の写真、1140kHzで放送されていた)  (Cathode Press誌1965年版より)
(右)同送信機の当時の送信管ML-5682を点検する技術者 (同上)

  


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