Radio Verdad (グアテマラ)

 メキシコのすぐ南に位置し世界遺産となっているマヤの遺跡もあるグアテマラにはかって結構多くの短波放送局があったが、現在はほとんど全滅状態である。 そんな中で一局だけ気を吐いて 短波放送を続けているのがキリスト教系の教育局Radio Verdad("verdad"は「真実」の意味)である。

 Radio Verdadは他のグアテマラ局と違い放送開始は2000年2月25日と比較的新しい。この局の創設者はグアテマラ国立大学(Universidad Estatal de Guatemala)で神学博士(Doctor en Filosofia Teológica)の学位を取得したEdgar Amilcar Madrid氏であり、現在も局長である。実は氏が同名の放送局を設立し無免許で自分が制作した宗教番組「イエスに戻れ」をわずか25Wの短波送信機 から放送したのは1967年に遡る。氏はこの局を正式な放送局にしようとキリスト教団体に掛け合った。そして1970年には米国の篤志家から1kW短波送 信機の寄付を得たが、結局話し合いがつかず実現しなかった。氏は自らグアテマラ政府に申請書を提出して正式免許を得ようとしたが、当初は受取に賄賂を要求 される始末で失敗、その後何度も申請を出すがグアテマラ政府からは多額のカネを要求されこれを支払わなかったためにすべて却下された。1996年には通信 大臣が署名すれば認可というところまで行ったが署名を拒否された。1997年にやっと中継用短波回線の認可だけ下りたが、放送用に短波を使用することは許 されなかった。短波放送の免許が正式に下りたのは2000年になってからのことであった。Ominitrónix社製1kW送信機を使用して 4052.5kHzという特異な周波数で放送を行っていたが、 2008年9月21日に落雷で送信機が被害を受け以後2年間送信不能となった。破損した部品を入替て漸く2010年9月21日に再び50Wの出力でオンエ アーできた。更にカナダからRalph Wayne Borthwick氏がボランティアで修理調整に訪れ、同年10月26日に500Wまで出力を回復、その後さらに700Wに増力した。今年3月初めに周 波数を4055kHzに変更し、さらにアンテナはダブルダイポールアンテナ(高さ6〜12m。全長88m)を使用しビームを日本・米国西部向にした。その ため日本での受信状態は急激に良くなり20:00頃を中心に多くの DXerが受信している。Madrid局長は周波数変更直後に起きた東日本大震災を大変気遣っており、復興の支援も兼ねて日本語のアナウンスが出たことも あった。短波では小出力でも調整しさえすれば良好に受信できると いう良い見本であり、大震災に打ちひしがれた日本のDXerを大いに元気づけたのは記憶に新しい。同局は現在短波だけでなくFM放送を実施すべく、当局に 申請中だが、またしても政府の嫌がらせに遭って難航しているという。

 4055kHzに周波数を変更した今年(2011年)3月3日から7月28日までの約5ヵ月間で同局に届いた受信報告は世界59カ国から573通に達し た。米国からが35通で一番多く、続いてメキシコの13通、カナダの5通などであった。アジアでは日本、中国、インドから受信報告が届いている。

 局のあるChiquimulaは首都Guatemala から東に170kmほど行ったところにあるホンジュラスとの国境に近い町であり、周囲には自然豊かな火山地帯がある。Chiquimulaは日本語では 「地球村」(Pueblo de Tierra)と教えたら局長Madrid氏は大いに喜んでいた。

 海外DXerに対するサービスは開局以来非常に良く、発行したQSLカードの種類も10を数えるようになった。周波数変更後はこれをを記念した No.10のカードが発行されている。
 今年3月末に同局に対してスペイン語による受信報告を送付したが、届いていないようなので局長のMadrid氏に直接E-mailを送ったところ数週間 後にQSLカード(No.10)やペナント等が届けられた。中には「永遠の生命銀行」の小切手まで同封されていた。こんなものまでいただけるとは実に有り 難い事である。
 同局はキリスト教局とはいえ特定のキリスト教団体から資金が出ている訳ではなく、全くの「手作り」局であり、リスナーや篤志家からの直接寄付が主な財源 となっているため、同局では少額でも良いから可能な人は寄付をするように呼びかけている。寄付はPaypalを利用してradio.verdad.em @ gmail.comにクレジットカード引き落としで送金すれば安全である。小生はキリスト教徒ではないが寄付を行った。それに対しても丁重な感謝状が送ら れてきた。

 国家の威信を示す目的の短波放送局は財政上の理由から次々と廃止されて行く傾向にあり、今後はこの種の利益や威信を求めずにローコストで運用される民間 局が主流となってゆくものと思われ、困難な状況でも放送を続けているこの局は短波の未来を先取りした局ともいえる。

 受信報告の宛先:  4a Ave.2-24, zona 1, Apartad No.5, Chiquimula, Guatemala, C.A.

 TEL/FAX: +502 79 420 362   または +502 79 425 689

  E-mail:  radioverdad5 @ yahoo.com

  URL:  http://www.radioverdad.org


(左)Radio Verdadの周波数変更後最新(No.10)QSLカード 創立11周年記念「新ステージ」との記述がある 周囲には送信機の修理風景の写真 大きさ 88×144mm
(右)QSLカード裏面 こちらにも「QSL 10」の記述がある。英語とスペイン語で記述されている

  


(左)送られてきたペナント かっては中南米局からは必ず送られてきたものだ 左下のアンテナとマイクロホンの図が同局のマークである
(右)「永遠の生命銀行」の小切手 有効期間は無制限 発行者はイエスキリスト 中央にはヨハネによる福音書から「永遠の命を得る」の言葉、左下には赤字 で使徒行伝から「イエスを信じなさいそうすれば救われる」の言葉が。

   

(左)同局のパンフレット 「質の良い放送を聞きたければ、短波ラジオを買って、Radio Verdadを聞こう」と書いてある
(右)逆境にもくじけないEdgar Amilcar Madrid局長とOminitrónix社製1kW送信機

   

Chuquimulaの町、中央に大聖堂がある(Wikipediaより)




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