Cyprus Broadcasting Corporation (キプロス)

 
 中東にある国で唯一EUに加盟して通貨もユーロである国がキプロスであ る。今回それが災いして通貨危機を招き、「銀行預金の没収」という強行措置がとら れたが、国家財政が破綻した場合の実例を示した意義は大きい。それと関係があるとは思われないが今年(2013年)2月初め突然予告なしに短波放送を廃止 してしまったのが公営放送Cyprus Broadcasting Corporation(ギリシア名 Ραδιοφωνικό Ίδρυμα Κύπρου、ギリシア語略称ΡΊΚ 英語略称  CyBC)である。短波放送はVT Communications社のBBC東地中海中継局(在Zyigi)の設備から行われており、中継局が3月限りで廃止されたためのやむを得ない措置と はいえ残念なことである。

 キプロスには元々ギリシア人が住んでいたが、16世紀にオスマントルコに占領され、更に第一次大戦でトルコが英国に負けたため戦利品として英国領とな り、1960年までは英国の植民地であった。中東の軍事拠点として短波送信施設が戦後建設されたが、英国は国内向放送には力を入れず、英国政府により Cyprus Broadcasting Serviceが設立されて国内向放送を開始したのは1953年10月4日と比較的最近のことであった。当時は692kHz(10kW)一波のみで放送も 午後の時刻のみであった。Cyprus Broadcasting Serviceは1959年1月には改組され、公共放送Cyprus Broadcasting Corporationとなり現在に至っている。1960年には英国から独立したが、以前は共存していたギリシア系住民とトルコ系住民との対立が激しく なって内戦となり、ついに1974年Green Lineと呼ばれる停戦ラインが引かれてその北部(北キプロス)は政権支配が及ばない地域となり、放送局も別に設立された。戦争状態であるため相互の行き 来も 出来なかったが、2005年よりは自由に往来できるようになった。しかし外国人はパスポートが必要である。


 海外向短波放送は英国在住の自国人向ギリシア語放送が1969年に開始さ れた。日曜7時間、平日2時間の放送でBBC東地中海中継局より送信された。毎朝07:15-07:45の英語による海外向放送が開始されたのは1977 年であった。こ の放送は英国向ながら日本を含む世界中のDXerに受信された。放送開 始60周年に当たる今年(2013年)に短波放送が廃止されてしまったのは 実に皮肉な事である。

 短波放送開始時にはギリシア風の美しい図柄(キプロスは美の女神アフロディテの生まれた場所と言われる)のQSLカードが発行されていたが、この20年 ほどは下に掲載した局舎の写真のカードが発行されていた。掲載したQSLカードは1991年7月5日の受信に対するものである。昨年キプロスを訪れた折、 Limassolで全土向FM放送(第一放送 97.2MHz)を受信した際のカードも全く同じものであった。このカードはまだ残っていると思われるので 今後しばらくは現地受信で獲得できるであろう。

 日本からは遠い国と思われていたキプロスであるが、成田と関空からエミレーツ航空を利用してドバイに行き、そこでマルタ行きに乗り換えると比較的容易く 行けるようになった。ドバイを飛び立った飛行機は砂漠だらけのサウジアラビアから内戦の続くシリアの上空を約3時間飛行、真っ青な地中海の上に出るとすぐ に大きなキプロスの島影が 表れLarnaka空港に着陸する。キプロス島は四国の半分位の大きさで、島の中央にはギリシア本土と同じ名前の最高峰オリンポス山(1971m)が聳え ている。この山の頂上(車で登れる)からはキプロス全土に電波が届くためFM放送、TV放送のアンテナが集中して設置されている、天然の「スカイツリー」 である。そのため全土向放送の中継局は国内4ヵ所程度で済んでいる。またここは中東・アフリカ方面を見渡せる位置にあるため英軍のOTHレーダーも設置さ れている。

 キプロスはネコの原産地エジプトに近いことと、地中海の海の幸が豊富なことからかネコが多く、島中で沢山見かける、2004年には数百匹のネコが CyBC の局舎内で暴れ回り放送が一時停止したことさえある。宗教はギリシア正教であるため、同じ起源を持つロシア正教との関係が強く、「神様が同じ」なのでロシ ア人の観光客(日本人も含めてアジア人の観光客は殆ど見かけない)が大変多く、ロシアとの関係も深い。店の看板はギリシア語、英語、ロシア語で書いてあ る。金利が高かったためキプロスの銀行に大量の預金をし、「銀行預金の没収」で大損をしたロシア人も多いそうである。



 受信報告の宛先:  P.O.Box 4824, Nicosia, Cyprus

 E-mail: rik @ cybc.com.cy

  URL:  http://www.cybc.com.cy (ギリシア語)
   



(左)CyBCのQSLカード 表面 Nicosiaの同局局舎 後方に中波用アンテナが見える 大きさ173×124mm
(右)同カード 裏面 1991年夏の受信報告に対するもの
  
     


(左)2012年FM現地受信(97.2MHz)に対する受信証明 上記のカードと全く同じ
(中)門番のネコ キプロスは島中ネコだらけ ネコで放送が停止したこともある この猫は祖先のリビアヤマネコに近い柄のような感じもする! 
(右)放送開始60周年記念ロゴ 今年(2013年)は創立60周年に当たる
     



(左)CyBC放送局舎の入口とTV/FM中継用アンテナ
(中)最高峰オリンポス山山頂のアンテナ群 中央の英軍OTHレーダー用アンテナの周囲にTV/FM用アンテナが並ぶ
(右)CyBCのロゴ 「
ΡΊΚ」はΡαδιοφωνικό Ίδρυμα Κύπρουの頭文字
    




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