RTL Radio / Radio Luxemborg  (ルクセンブルグ) 
 

 



   欧州中部の小国ルクセンブルグで放送が開始されたのは1924年で、Froancois Anenという実業家が100Wの送信機を設置し、国内向に放送を開始した。ところが同国は西側諸国の中心にあるため、英国、フ ランス、ドイツ等の諸国に越境放送するには最適なローケーションであることがわかり、これらの諸国にコマーシャル放送を行うこと が企画され1931年欧州で初の国際商業放送局Compagne Luxemborgeoise de Radiodiffsion(略号CLR、その後テレビ放送の開始でCLTとなった)が設立され、英国・フランス向に商業放送を 行うことを目指した。公共放送(BBC)による放送の独占を旨としていた当時の英国は猛反対したが、1932年には Junglisten送信所の150kWの強力な長波送信機を設置し234kHzで英国・アイルランド向に英語による強力な商業 放送 Radio Luxembourgを開始した。英国企業をスポンサーとして放送費用を工面するビジネスモデルであり、商業放送が一般的でなかった欧州では画期的なもの であった。

 
放送開始の翌年の1933年オランダのEindhoven氏はJunglisten 送信所の234kHzにスイスのBeromunster送信所の電波が混信して聞こえることを発見した。これは両送信所電波が非 常に強力なため、電離層 (E層)で反射する時に非直線性を生じ、結果として混変調を起こす現象であることが後年解析され、「ルクセンブルグ効果」の名付 けられた。ルクセンブルグ 効果はその後高出力の送信機が増加するにつれて中波帯や短波帯でも観測されるようになった。
 
 放送開始当時は遠距離向には長波が最有利と見られていたが、短波の有用性が確立した1938年同局はJunglisten送信 所に6kW短波送信機を導 入して6090kHzで短波放送も開始した。
ルクセンブルグは第二次大戦中はド イツに占領 されたためRadio Luxembourgは1939年に放送を休止、1940年にはドイツ軍に接収され短波送信機は英国向謀略放送「Laod Haw-Haw」に使用された、1944年の戦争終結後は米軍に接収され、今度は共産圏向のブラックプロパガンダ放送に使用され た。元のRadio Luxembourgに戻ったのは1946年のことである。短波放送はその後1953年に CFS社製 THR775送信機を導入して50kWに増力、1971年には500kW(250kW×2)のTelefunken社製送信機 SV2550が導入された。 1973年には旧50kW送信機を使用して15350kHzでも放送を開始した。15350kHzの送信機は翌年新設のRIZ社 製10kW送信機に置き換 えられ、500kW+10kWによる2波放送がその後20年間続けられた。日本でも頻繁に受信され「コマーシャルの出る国際短波 放送」として有名であっ た。

 戦後は長波送信機の高出力化も進められ
Junglisten送信所では 1951年に250kW、1954年に500kW、1960年に750kW、1964年に1000kWと増力が行われた。長波は 1972年以降 は同年新設のBeidweiler送信所(ビームはフランスのパリ方向)より1400kW(2000kWまで増力 可)Thomson社製TRE2175より出ることになりJunglisten送信所の長波送信機は予備用となった(その後 1987年に1200kW出せるように改造された)。フランス語放送は 現在234kHzで24時間行われており、局名アナウンスはは1966年以来「RTL」となっている。

 また1952年には中波の1439kHz(後に1440kHz)用の150kW送信機がJunglisten送信所に初めて導 入され、欧州向国際中波放送も開始された。国際中波放送の機能はその後1955年に新設されたMarnach送信所に移され、同 送信所では200kW送信を行っていた。しかし各サービスエリアにFM局を設立したことから必要性が低下し、ついに今年 (2014年)10月に中波放送を終了しMarnach送信所を閉鎖することになっ た。 2014年1月現在1440kHzでは14:00-04:00にRTL Radioのドイツ向ドイツ語放送、16:00-21:00と04:00-09:00にCRIのドイツ語放送が行われている。
 
Junglisten送信所からの短波送信は1994年に廃止され、同局からの短波 放送はなくなった。しかしその後も臨時送信を行ったり最近は2009年に7295kHzで DRMの試験送信を行う等短波送信機自体は維持されている。定期運用から外れた短波送信機と長波送信機がいつまで維持されるかが 気になるところである。
 2000年に子会社Broadcasting Center Euroep(BCE)を設立し、送信所の運営・管理はそちらに移っている。AM放送の衰退からBeidweiler送信所の設 備も今後更新されるのか微妙なところである。


 Radio LuxembourgまたはCLRと呼ばれていた当初の局名は1992年にRTL Radioと改称(前述のようにフランス語放送ではもっと以前から使用されていた)された。RTLはRadio Televison Luxembourgの略である。現在は「RTL Group」として巨大な放送メディア集団となっており、ルクセンブルグの他、ドイツ、フランス、ベルギー、オランダ、スペイ ン、ハンガリー、クロアチ ア、インド、ロシアにTV局54局、ラジオ局29局を有している。ルクセンブルグは今でも欧州の放送メディアの中心なのである。

 短波時代のQSLカードは長年同じデザインが使用されておりDXerの間では人気があった。ここには1967年に 6090kHzの受信で取得したものを掲載する。現在では同局を聞く機会がなくなってしまったが、欧州に行けば聞くことができ る。そこで昨年(2013年)9月にスペインに行った折、 Madridで長波放送(234kHz、フランス語)を受信、フランス語で受信報告(IRC同封)を送ったところ2ヶ月後に送信 会社ぼBCEから下記の QSLカードが送られてきた。カードの受信モードの欄にはDRM、AM、FMしかなく短波がはないのが寂しい。DRM(以前に短 波でDRMの試験が行われ ていたため)が短波と見ることはできるが。
 長波放送も「風前の灯」であるため、欧州に行く機会があったら受信しておくことをお勧めする。


 受信報告の宛先:  45 blvd. Pierre Frieden, L-1543 Luxembourg

   URL:  http://radio.rtl.lu

 

(左)1967年の短波6090kHzの受信して取得したQSLカード表面 局名は略称 CLT(Compagnie  Luxembourgeoise de
Télédiffusion) とRadio Télé Luxembourgを併記 Junglisten 送信所にあったと思われる古い送信アンテナ郡にルクセンブルグの国章「リンブルクライオン」を配したデザイン 大き さ 150×105mm
(右)同QSLカード裏面 タイプ打ちと「GMT」の表記が時代を感じさせる 「Thanks for QSL」の文言は日本の民放のQSLカードに見られる「TNX FR UR QSL」を連想させる! 当時の局はLouvigny村にあった。

   


(左)Louvigny村にあった頃のRadio Luxembourgの建物 左の高層階部分にスタジオがあった
(右)
Junglisten 送信所にある現在の49mb用短波送信アンテナ − QSLカード記載の写真と形状が異なる  
  



(左)2013年取得の長波放送のQSLカード ロゴはBCEのもので 図柄は
Beidweiler 送信所の長波アンテナ群 大きさ 148×105mm
(右)同カード裏面 21世紀にはタイプライターがなくなったため手書き 送信会社BCEの名前で発行されてい る  出力2000kWは送信能力(実際は1400kW)

       


(左)現在のRTL本部  (右)Beidweiler送信所の長波専用アンテナ(QSLカードとは反対 方向から)
  


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