Media Broadcast Gmbh （ドイツ/フランス）
ドイツの国際放送Deutsche
Welle(DW)は弱体化によりすっかり「死に体」状態となってしまったが、ドイツにはまだ往年の大出力短波送信所が残っている。短波送信所も含めてドイツに存在する中
波・長波・TVの送信所の大半を管理しているのがMedia Broadcast社である。
ドイツには放送の黎明期より送信施設の管理と放送局を分離するという考え方があり、早くも1919年に当時のドイツ郵電省は、1923
年に開始予定のラジオ放送局の送信設備を管理する組織を設立した。この組織は第二次大戦後まで引き継がれ、戦後は占領軍の米国AFN、英国BFBS、国営
ラジオ放送Dettschelandfunk、国営TV放送ZDFの送信所管理とともに、1954年にDeutche
Welleによる国際放送が再開されると、同局の短波放送施設も管理するようになった。1990年に東西ドイツが統一された後は旧東ドイツの送信施設も管理下に置いた。こ
の中にはRadio Berlin
Internationalが使用していたLeipniz送信所（1990年10月よりDWが送信に使用、1993年廃止）も含まれていた。
郵電省の一部門であったが、1995年に郵政民営化が行われた時、Deutsche
Telecom(DT)社が設立され独立した民間企業となった。ラジオ放送施設管理部門は2001年に分社化されてT-Systems社となった。短波事
業はJuelich送信所を主力としてDWによる送信で保たれていたが、DWの送信時間が減少して行く中でT-Systemsの経営は苦 しく な
り、事業をフランスのTDF(Télédiffusion de France)に売却することになり、2007年にその準備会社T-System
Media & Broadcast社を設立して業務を移行し、2008年には完全に売却して同年2月15よりTDF配下のMedia
Broadcast社として再出発した。
この時DWの送信時間減少でお荷物となっていたJuelich送信所を英国のChristian
Visionに売却し、短波事業は残ったドイツ国内のWertachal、Nauen両送信所とTDFのフランスIssoudun送信所を主力に、他の外国送信所も併用し
て行われることになり現在に至っている。ユーザーはDWだけでなくAWR、IBB等多岐に渡っている。
なおかって名声を馳せたJuelich送信所はその後Christian
Visionによる短波撤退のため2010年に廃止・解体され、広大な敷地はキャンプ場とリゾートホテルに転用された。
Media
Broadcast社自体は施設管理会社であるため、通常はQSLカードの発行を行わないが、独自の試験送信を行った場合や大規模なスケジュール変更（季
節の変わり目等）等の場合は独自QSLカードが発行されることがある。これはDT社やT-Systems社の時代から行われてきた。
掲載したQSLカードは昨年年8月に開始されたBrother
Stairの新サービス（Issoudun送信所）についての受信報告をE-mailで送付したものに対して今年5月になってHead of
Shortwave Senior Expert SalesのWalter
Brodowsky氏よりE-mailで送られきたものである。QSL発行は同氏を中心とした少人数により、マーケティングや営業の余り時間に行われている。また1999
年、まだ20世紀、DT社時代にJuelich送信所からGood World Newsの送信に対するQSLレター（発行者は同じWalter
Brodowsky氏！）と、同時に送られてきた今はなきJuelich送信所の焼き付け写真も掲載する。
なお主力のNauen、Wertachal、Issoudun三送信所の能力は合計すると現在の短波放送需要に対して過剰な状態であり、今後送信所の整
理が懸念されている。Wertachal送信所がやり玉に上がる可能性があるとされている。ちなみに5月14日に発表されたスケジュールでは
Wertachal送信所は使用されていない。
受信報告の宛先： Media Broadcast Gmbh, Erna-Scheffler-Straße 1, 51103 Cologne,
Germany
E-mail： qsl-shortwave ＠ media-broadcast.com
URL： http://www.media-broadcast.com
Media Broadcast社のE-QSL 写真はWertachal送信所、左下は同送信所のALISSアンテナ
発行者 Walter Brodowsky氏
(左）Media
Broadcast社のロゴ 親会社TDFと基本的には同じ (右）世界最古1906年開設のNauen送信所、現在は短波専用（Media
Broadcast社webサイトより）
（左）1999年の受信報告に対して当時DTだったWalter Brodowsky氏より送られてきたQSLレター
（右）40万平米に及ぶ当時のJuelich送信所全景
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