RTM Sarawak (Malaysia)
マレーシアには13の州がある。その内ボルネオ島にあるのがサラワク州とサバ州である。サラワク州はボルネオ島の西部を占めるマレーシア最
大の州である。19世紀には独立した王国であったこともあり、現在も高度な自治が認められており、マレーシア国民であっても入州にはパスポートが必要であ
る。文化的にも本土と異なるため放送も本土の放送の中継の他に独自のチャンネルを多数有している。
サラワクで放送が開始されたのは比較的新しく、1954年6月7日に「Sarawak Broadcasting
Service」として初めて放送が開始された。周波数は850kW(5kW)と短波4860kHz(5kW)で、広大なボルネオ島を奥地までカバーする
ために当然のことながら当初から短波放送が行われた。放送は英語、マレー語、中国語の他現地のイバン語が使用された。当時現地の人々には文盲が多かったため放送によってリテラシーを高める目的があったとされている。
1958年には7.5kWの短波送信機が増設され、4950kHz、9565kHzでも放送が行われるようになった他、本土との放送ネットワークも完成した。特に4950kHzの放送(マレー語、英語)は日本を含む世界各地で良好に受信された。
短波送信所はStapok送信所より行われてきた。1963年にマレーシアが成立・独立すると、国営RTM(Radio Television
Malaysia)の支局となり、同時に10kW送信機が増設された。更に1969年には日本のNEC製HFB-215型10kW送信機が導入された。ま
た1973年には州内のMiriとSibuにも短波送信所が増設され、何れの送信所にもNEC製HFB-215型送信機(10kW)が導入された。
その後1990年代になるとRTMは中波・短波放送を廃止してFM化する方針となり、国内向短波放送は次々と廃止されて行った。しかし広大なボルネオ島
をFM放送だけではカバー仕切れないためRTM Sarawakの短波放送は継続された。特にStapok送信所にはBBCのTebrau中継局(マレー
シア領内にあり一時Eastern中継局として使われていた)で使用されていたABB社製の100kW送信機が1994年に移転されたため、周波数
5030kHzで短波放送が20世紀中は継続された。
21世紀初頭になるとマレーシア本土にあるKajan短波送信所の送信能力が余ってきたため、サラワク国内向の短波放送はKajan送信所から行うことが決定され、RTM Sarawakのローカル放送「Sarawak FM」が9835kHzで、「Wai
FM」が11665kHzで本土から中継されるようになった。5030kHzも同時に出ていたがついに2011年11月に廃止され、サラワク現地からの送信はFM放送のみとなり、短波放送はKajanからの送信となった。
現在RTM Sarawakは20のFM放送局を持ち、本土と同じ5系統の番組に加え、州のローカル番組としてSarawak
FM(マレー語)、Wai FM(各種ローカル語)、Red FM(英語・中国語)、省・市レベルのローカル番組としてSada
FM(イバン語)を放送している、首都Kuchingではそれぞれ88.9、106.1、107.8、101.3MHzで出ている。この内Sarawak
FMは9835kHzで、Wai
FMは11665kHzで何れも07:00-01:00に、出力100kWにてKajan送信所から短波中継されている。またBintulu、Limang、Miri、Sibu、Sri Amanの各局からは独自のローカル放送も出ている。
独立性の強い局であるため、以前より独自のQSLカードを発行していた。掲載したQSLカードは48年前の1967年2月に取得したもので、局舎(局舎中央の上部には「Radio
Sarawak」とある)のモノクロ写真である。証明事項が記載されていない不完全ベリであるが、周波数は4950kHz、受信時間は
23:00-23:30(英語放送)でIRC同封(当時90円であった)で報告後16日と比較的早く送られて来た。
今世紀に入ってからサラワク局としてのQSLカードの印刷は行われなくなった模様で、PFCによる返信だけになった。代わってKajan送信所からQSLカードが発行されるようになった。それが次に掲載したカードで、「Sarawak
FM」(9835kHz)の受信して昨年末に送付したIRC1枚同封の受信報告に対して1ヵ月後に送られて来た。2009年に完成した新州会議事堂「New
Sarawak State Legislative Assembly Building」(Bangunan Dewan Undangan
Negeri Sarawak
Baru)の写真に、空を飛ぶ州鳥「オオサイチョウ」(Hornbill、現地では「神の使い」として崇められている)、下には現在の局舎の写真が配置さ
れている。なおKajan送信所のQSL発行担当者は決まっておりTechnical Network SectionのChief Assistant Director(Ketua Penolong
Pengarah)、Shariman Bintiabu Bakar女史宛に受信報告を送る必要がある。
本欄を見た石川県の茶木直之氏より、Sarawakの本局でもQSLカードを
発行しているという情報をいただいた。氏は今年2月に直接QSLカードを受領した。その画像を送っていただいたので合わせて掲載する。本局のQSLカード
は表面の写真はKajan発行のものと同じだが、裏面は異なっておりまた、サイズも小さくなっている。なお氏によれば2012年迄は独自のQSLカードを
発行していたとのことであるので、久しぶりに新しいQSLカードを印刷したものと思われる。
受信報告の宛先: RTM Sarawak: Broadcasting House, Jalan P.Ramlee, 93614 Kuching, Sarawak, Malaysia
Kajan送信所: Technical Network Section, Dept. of Broadcasting (RTM), Kajang, Malaysia
電話: +60 82 248422
FAX: +60 82 24653
URL: http://www.rtmsarawak.gov.my/ (オンライン放送あり、メール可能)
1967年のQSLカード 大きさ148×91mm
(左)表面 局舎の写真 正面上に「Radio Sarawak」の局名標がある 背後にビルはない
(右)裏面 受信データやサインのない不完全ベリである
2015年のSarawak FM QSLカード 大きさ175×115mmの大型カード
(左)表面 左に州会議事堂、中央にRTMのロゴ、右にサラワクの地図と州鳥オオサイチョウ、下部には現在の局舎の写真
(右)裏面 QSL発行番号が記載されている 発行者はChief Assistant DirectorのShariman Bintiabu Bakar女史 切手は東南アジアに生息する「シロハラカンムリヒヨドリ」(Ocharaceous Bulbul)
(左)茶屋直之氏がRTM Sarawakから直接受領したQSLカード表面 デザインは上記と同じだが印刷がきれいで色調も若干異なる サイズは139×89mmで上記より小さい
(右)同裏面 文言が全く異なる 「RTM SARAWAK」の文字が入っている サインはない Kajan送信所から11665kHzで中継されている「Wai FM」の受信に対するもの
(左)新州会議事堂 (中)オオサイチョウ (何れもWikipediaより)
(右)Sarawak FMのロゴ オオサイチョウの羽の模様を図案化したものらしい
現在の局舎
48年前の局舎と似た2階建てだが「RADIO TELEVISION MALAYSIA」となっている、また背後に高層ビルの新館がそびえている
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