Malagasy Global Business S.A. (MGLOB, Madagascar)
Malagasy Global Bunsiness
S.A.(略称MGLOB)はマダガスカルで短波送信、放送設備、電力供給、ITシステムを手掛ける総合通信IT企業である。主業務は短波送信で、
2012年にRadio
Netherlands Worldwide(RNW)のMadagascar中継局の機材と従業員を引き継いで設立された。従って同社を語るには旧中継局(RNW Madagascar
Relay Station)についての記述から始めなければならない。
アフリカ大陸の東側、インド洋に浮かぶ世界第4位の面積を(59.2万キロ平米)を持つ島であるマダガスカルは固有な動植物を有することで有名である
が、通信の上ではアフリカは勿論のこと、赤道を挟んで2ホイップで信号が効率的にアジア方面に年中安定して行き渡るという非常に好都合な場所でもある。
「短波放送を制するものが世界を制する」と言われ、世界各国が「Power
Game」と言われる短波放送強化合戦を行っていた1960年代後半、オランダの国際放送RNWも本国のLopik送信所だけではカバーが不十分なため、
アフリカ、中東、インドネシアを含む東南
アジアを1カ所で強力にカバーできる中継局の建設を模索していた。そこで目をつけたのがマダガスカルの地である。1960年に独立したばからりのマダガス
カル政府と交渉を開始し、1967年にはほぼ合意
に達し、翌1968年オランダ政府は正式に建設の予算措置をとり工事が開始された。送信所の場所として選定されたのは首都Antaananarivoの北
東20kmに位置するTalata Volonondryであった。工事は1971年に完成し試験送信を行い、1972年からはRadio
Netherlandsの各方面向中継送信が開始された。当初設置されたのはオランダPhiliips社製のの300kW短波送信機
(8FZ521)2基であった。この送信機はデジタル技術を応用した当時最新鋭のもので、2基を結合して600kWの高出力でも送信できるようになってい
た(実際には600kWで運用されたことはなかった)。そして
Hilversumにあった本局との間は専用衛星回線で結ばれた(現在は衛星回線とインターネット回線を併用)。送信の最初に「Madagascar中継
局からの中継である」旨のアナウンスが行われたので容易に識別できた。なおMadagascar中継局より一足先の1969年には中南米をカバーするためのBonaire中継局も完成しており、RNWは全世界を良好にカバーできる大国際放送局に成長した。
当時の短波放送の主要ターゲットエリアは旧オランダ領であったインドネシアであり、インドネシアには1ホイップで極めて効率的に電波が到達した。マダガ
スカル中継局からの放送には通常2波(300kW送信機が2基あったため)が使用され、どちらかは必ず受信出来るようになっていた。日本はマダガスカルか
ら見てインドネシアと同じ方向にあり、距離は丁度倍離れているため、信号はインドネシアで跳ね返って2ホイップで日本にも極めて良好に届いた。特に夜間
23:30からの英語放送は年中安定に受信でき、太陽活動の活発期には13mbの21480kHzが使用され、混信もなく「中波ローカル局並の音質」と賞
賛され、当時の日本のBCLの間で絶大な人気を誇っていた。最盛期の送信時間は1日17時間に及んでいた。
アンテナはBrown
Boveri(現Ampegon)社製垂直ダイポールアレーが13基設置され、その内の11基は隣接する3放送バンド(例えば31、25、21mb)の波
を発射可能である、またそれぞれの固定ビームから±15度送信方向を調節することも可能である。
1990年代以降短波放送は衰退期を迎え、経費節減のためRNWは専用送信所や中継局の利用を減らし旧ソ連等の価格の安い中継所から中継する方針となっ
た。それに伴い本土に増設されたFlevo送信所は2001年に廃止、Bonaire、Madagascarの両中継局は他局の中継をビジネスとして開始
するようになった。RNWの放送自体は縮小されたものの継続されてきたが、2011年に至りオランダ政府はRNWを事実上解体する方針を打ち出した。その
ためRNWは2012年6月で大半の放送を廃止、組織は残っているものの事実上の消滅状態となった。それに伴いBonaire中継局は廃止された。
Madagascar中継局は当初オランダ人の技術スタッフによって運用されていたが、運用の現地化の方針が打ち出され21世紀にはほぼすべての業務が
現地人スタッフによって行われ、約50人の技術スタッフが働いていた。現地の雇用維持も含めて2012年、現地の雇用維持も含めて別会社により中継局を維
持する方針が打ち出されMalagasy Global Business
S.A.(MGLOB)が設立され、翌年より専門の中継ビジネスを開始した。それに伴い2010年に廃止されたスウェーデンHörby送信所より
Brown
Boveri(現Ampegon)社製500kW送信機SK55C3-P5(1993年製)が2基、同じく廃止されたRNW
Bonaire中継局よりBrown
Boveri(現Ampegon)社製250kW送信機SK53C3-2Pが1基、Thomson社製500kW送信機TSW2500Dが2基、更に
Seimens社製50kW送信機1基が導入され短波送信施設の大幅増強が行われた。現在送信出力は250kWまたは50kWとなっている。当初からある
Phillips社製300kW送信機は現在は予備用となり通常は使用されていない。RNWの中継がなくなった後は世界各国の国際放送、秘密放送の中継ビ
ジネスを行っている。Radio
Japanも250kWで中継を行っている。A15スケジュールは以下の通りである。
23:30-00:25 15475 南東アジア向ヒンズー語
14:30-15:00 13840 アフリカ中部向フランス語
05:30-06:00 11985 アフリカ西部向フランス語
12:15-13:00 9395 アフリカ東部向スワヒリ語
02:29-03:00 13730 アフリカ東部向スワヒリ語
Madagascar中継局は当初独自のQSLカードを発行していなかったが、21世紀になってからは現地スタッフにより発行されるようになった。その
伝統はMGLOB社になってからも引き継がれており、当初は青色のQSLカード(ブルーカード)が発行されていた。2015年に至りデザインが改良された
新カードが発行されている。基本的にはマダガスカル島を描いたRNW時代のデザインを引き継いでいるが、現地名産のサイザル麻を貼り付けた手づくり感満点
のカードである。現在受信報告専用のメルアドが設定されている。2009年のクーデター以来現地では郵便事情が悪化している模様なので受信報告はこのメル
アドに送付した方が確実である。
受信報告の宛先: MGLOB S.A, Lotissement Bonnet nº88 Ivandry, 101 Antanarivo, Madagascar
E-mail: monitoring @ mglob.mg (推奨)
URL: http://www.mglob.mg
2006年にRNWの英語放送受信に対して発行された独自の大型QSLカード 大きさ140×210mm 表面の左下には「シーラカンス」が!
発行者は当時技術責任者であったRahamedy Eddy氏、氏はアマチュア無線家(5R8FT)としても有名であった。きれいにタイプ打ちした上にサインもしてある。
2015年Radio Japanの中継放送に対して発行されたQSLカード 大きさ107×147mm
表面左部にはサイザル麻がそのまま貼り付けてある。裏面の確認事項や宛先はRNWからそのまま引き継がれていることが分かる。
(左)現在使用中のBrown Boveri社製送信機 (中)アンテナ群と送信棟 (右)MGLOB社のロゴ 「Your ultimate engineering partner」と書いてある (何れも同社のHPより)
TopPage