KTWR (グアム)

   1952年にPaul Freed氏によって設立されたプロテスタント系宗教局Trans World Radio(TWR)は当初はモロッコのTanger、1960年にはMonaco、1964年にはBonaire、1974年にはSwadilandに送信所を設置し全世界向の放送体制を整備して行った。1977年にTWRの5つ目の送信拠点として中国・東南アジア・当時のソ連極東向放送用に設置されたのがGuamの KTWRである。

  実はKTWRというコールサインは1958年に米本国のFM局に免許されている。この局は1964年にコールサインを変更しKTAC-FMとなって現在も継続している。TWRは1964年にGuamで中波放送KTWGを開始しているので、この時短波局として語呂の良いKTWRのコールサインを買い取ったものと思われる。

  Guam島のMerizoに建設された短波送信所よりKTWRが正式に放送を開始したのは1977年9月4日であった。1977年当時の設備はHarris社製SW-100短波送信機2基にカーテンアンテナであった。1982年には更にSW-100送信機2基が追加され、更に1995年にHCJB製の100kW送信機HC100が追加設置された。1977年導入の2基の送信機は2012年にThomson社製DRM対応可能250kW送信機2基と置き換えられた。現在は250kW2基、100kW3基、HRS型カーテンアンテナ18基の構成となっている。

 直営であった中波放送局はその後TWR系列ながら別の宗教局「Edward H Poppe Jr & Francees W Poppe」となり、同じKTWGのコールサインで現在801kHz(10kW)で放送している。
 同局はかって日本語放送を毎日行っていた。日本語放送は同局の放送開始時より毎日1.5時間実施され2時間まで拡張された時期もあった。番組制作は日本のキリスト教番組制作団体である太平洋放送協会で行われ「太平洋の声」のニックネームを持っていた。しかし放送費用の問題から2007年3月24日に中止された。その後実験放送の位置づけで2014年4月より日曜日のみDRM放送として一時復活したが同年9月末に終了した。スポンサー等との調整の結果2014年11月6日よりAM放送として正式復活(放送は日曜日21:15-21:45、A15では9975kHz)で復活した。現在の日本語放送は有線放送番組を得意としている「ビー・ジャパン」の制作によるもので「フレンドシップラジオ」の名称で放送している。

  現在Guamには番組制作拠点はなく、送信所のみである。TWRのアジア向放送の本拠地TWR-Asiaはシンガポールに設置されている。実際の番組制作は日本の他、オーストラリア、香港、フィリピン、シンガポール、インド、カンボジア、韓国、台湾、ネパール等で行われている。制作拠点の中で香港の「環球電台香港有限公司」は規模が大きく、中国語、広東語、客家語、彝語(四川省の言語)の四言語の番組を制作している。

 地球温暖化の影響かGuam島には超大型の台風が多数襲来するようになり、送信所は毎回大きな被害を受けている。今年(2015年)5月には台風7号の直撃で送信所のアンテナ柱を支えるステーがズタズタになった。TWR Newletterの最近号によると、Merizo送信所にはアンテナの他に多数の太陽光パネルが設置されていたが、これらは無事だったとのこと。KTWRでは電力コスト節減のため、送信所の電力を太陽光発電で賄う計画で、当初の目標23kWを達成したため、この夏には次の目標である60kWに挑んでいる。60kWが達成されると送信所の電力すべてを1日中賄うことができ、「地球に優しい」送信所が実現することになる。

 QSLの発行等はGuamで行っていたが、2014年末日本の拠点にも連絡なく突然Guamの宛先が変更され話題となった。「フレンドシップラジオ」は日本語放送に対してのみ独自のe-QSLを発行している(受信報告の郵送は不可でE-mailによるもののみ受付)。香港の「環球電台香港有限公司」は自局制作の番組への受信報告(IRC1枚必要)に対してGuamと同じQSLカードを発行している。Guamへの受信報告に対しては郵送料$2~3が必要。 TWR-Asiaはwebサイト上のオンラインフォームで受信報告を受付けている。
 掲載したQSLカードは1977年放送開始直後の発行されたアマチュア的なデザインのものと、2015年に環球電台香港有限公司より受領した最新のものである。

受信報告の宛先
 
 TWR-Asia  85 Playfair Road #04-01, Tong Yuan Industrial Building, Singapore 368000
         オンラインフォーム http://www.twr.asia/online-qsl-form
                    
 Guam送信所  P.O.Box 8780, Agat, Guam 96928, U.S.A.
            E-mail: ktwrfcd @ twr.org

 環球電台香港有限公司     香港九龍尖沙咀郵政信箱 98697號
                              URL: http://www.twr.org.hk または http://www.ktwr.net
                              E-mail:  info @ twr.org.hk                               

 フレンドシップラジオ(日本)    E-mail: ktwr @ friendshipradio.net
                                  URL: http://friendshipradio.net/ktwr.htm


(左)1977年放送開始直後のQSLカード表面 シンプルな2色刷 中波局KTWGのカードも兼ねている 大きさ140×90mm
(右)同裏面 当時の短波・中波の送信機・アンテナの詳細も記載されている

 


(左)2015年発行のQSLカード表面 Merizo短波送信所の裏に聳えるGuam島の最高峰Lamlam山(406m)の写真 聖なる山とされる Lamlam山とその麓の送信所にちなんで下部には旧約聖書イザヤ書52章7節の冒頭「いかに美しいことか、山々を行き巡り良い知らせを伝える者の足は」 の文言が記載されている 大きさ140×88mm
(右)同裏面 裏面は本来白紙で証明事項を書いた紙が張りつけてある 中国語で受信報告を書いたため宛名は漢字で記載されている

 


(左)Merizo送信所の送信棟 (中)送信棟内の送信機群 (以上http:www.flicker.comより、TWR撮影)
(右)Merizo送信所の全景とLamlam山 (KTWR発行「Signals」誌2012年1月号より)

   



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