IBB Tinian Transmitting Station (テニアン島)

  IBB Tinian Transmitting Stationは5月号で紹介したRobert E. Kamosa Transmitting Station(REKTS)の支所的存在であり、RETKSのあるサイパン島の南8kmに位置するテニアン(Tinian)島にある。位置は同島の西部海岸Hilo岬の南方から少し陸地に入った標高70m地点にある。第二次大戦中米軍が上陸したUnai Chuluはこの少し北側の海岸である。
 この送信所の歴史は比較的新しく、元々あったサイパン中継局の機能を補完するために1999年に開設された。欧州で冷戦が終結したのに伴い1994年に閉鎖されたポルトガルのMaxoquiera中継局(RFE/RL用であった)より6基のABB社製(1991年製)500kW短波送信機SK55C3-2Pを1997年に移設し、1999年よりVOA、RFAの中国・インドシナ向送信拠点として運用が開始された。現在上述の6基の500kW短波送信機の他、2基の250kW短波送信機、11基のカーテンアンテナ(295度を中心方向として267-333度間で5段階の方向切換が可能)を備えた大送信所となっている。最盛時には1日89時間、週623時間の送信を行っていた。また一時はRadio Australiaの中継を請け負っていたこともあった。大送信所ながら運用は外注会社による最小限の保守作業のみとなっており、夜間の中継・運用はすべてフィリピン中継局より遠隔操作で行いコストを抑えている。
 1944年の米軍上陸直後には米軍局が設けられていたが、サイパン島が近いためこの中継局以外のラジオ局は現在テニアン島には存在しない。

 テニアン島は17世紀にはスペイン領、19世紀にはドイツ領、20世紀には日本領そして現在の米国領と目まぐるしく宗主国が変わった。第二次大戦時には激戦地となった。1944年7月24日に米軍は北西部の海岸Unai Chuluから上陸し、日本軍守備隊9162人と激しい戦闘となったが、日本軍守備隊は同年8月3日には司令官が自決し玉砕した。8月中に米軍は北部に4本の2600m滑走路を建設し、11月24日よりB29戦略爆撃機による日本本土空襲を開始した。テニアン島には1000機のB29が常駐し、終戦までに19000回に及ぶ日本出撃を行った。1945年7月20日重巡洋艦インディアナポリス(その後フィリピンに向けて出航し7月26日日本の潜水艦に撃沈された)はサンフランシスコから当時開発されたばかりの原子爆弾を同島に運搬してきた。原子爆弾は8月6日(丁度70年前に当たる)同島から飛び立ったB29「Enola Gay」によって広島に、8月9日には同じく同島を飛び立ったB29「Bock's Car」より長崎(当初小倉に投下する予定であったが小倉上空が曇っていた為に変更された)に投下された。そして8月15日の玉音放送では「敵は新(あらた)に残虐なる爆弾を使用して頻(しきり)に無辜(むこ)を殺傷し惨害の及ぶ所真(しん)に測るべからざるに至る而(しか)も尚交戦を継続せむが終に我が民族の滅亡を招来するのみならず延(ひい)て人類の文明をも破却すべし」と言及された。なお玉砕後も生き残っていた守備隊120名は(多分南洋向に短波で行われた)玉音放送を傍受し8月中に全員が投降した。米国は8月3日以降6回の「特殊爆弾投下予告」を日本向けに短波放送で行った模様で、陸軍北多摩受信所で傍受されていたが、「特殊爆弾」の意味が分からず上層部に報告されなかったと言われている。

 IBB Tinian Transmitting Stationには送信スタッフは常駐していないため、送信所のQSLを直接受領することはできず、VOAまたはRFAに受信報告を送り、その際に送信所を明記してくれるように依頼して送信所を証明してもらう事が必要である。掲載したQSLカードはそれぞれの局より発行されたTinian送信所を描いたQSLカードである。
 B15スケジュールではVOAは朝鮮語放送の一部のみ、RFAはビルマ語、広東語、中国語、朝鮮語、ラオ語、チベット語、ウィグル語、ベトナム語の各言語の放送で同送信所が使用されている。

 受信報告の宛先:

  VOAの場合 Audience Mail Unit, Voice of America, 330 Independence Avenue SW, Washington, D.C..20237, U.S.A.
          E-mailでは letters @ VOA.gov

  RFAの場合 2025 M.Street NW, Suite 300, Washington, D.C.20036, U.S.A.
          E-mailでは qsl @ rfa.org
                      URLでは http://techweb.rfa.org/上から直接入力


VOAより2008年に発行されたTinian送信所のQSLカード カーテンアンテナの検査を行う技術者  大きさ 152×102mm
  


RFAより2012年に限定発行されたTinian送信所のQSLカード カーテンアテナ305L用第16鉄塔の上から見た送信所風景 前方(北方)に見えるのはサイパン島 右の白い建物が送信棟 海はフィリピン海
大きさ 141×108mm
  


(左)送信所の空景 遠方にサイパン島が見える (The Use of Tinian Island during World War 2より)
(中)送信所の入口 「IBB」の看板が見える (Hanson Engineering社のHPより)
(右)送信所近くのHilo岬の絶壁

  


   
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