Lesotho National Broadcasting Service (レソト)


 レソトという国名を聞いても知らない人の方が多いと思われる。南アフリカの東部に位置し、周囲をすべて南アフリカに囲まれた九州より少し小さい面積の国 である。周囲を同じ国に囲まれ海にも面していない国は特異で、他にはイタリアに囲まれたサンマリノ、バチカン(何れも特殊な小国である)位しかない。19 世紀にはソト族 (Sotho族の国なのでLesothoという)による王国であったが、後に英国領南アフリカの一部(バストランドと呼ばれていた)となった。南アフリカ は1931年に独立して極端な人種差別政策(アパルトヘイ ト)をとったが、ここは元々黒人の王国であったため、併合することができず独立まで英国の保護領に差し置かれた。実際には白人優位の(当時の)南アフリカ で 邪魔な黒人を追い払う場所として使うために利用されたと言われている。1966年にソト族の王国として元の独立を取り戻した。近くのスワジランド (1968年独立)もスワジ族による同様の国だがこちらはモザンビークとも国境を接している。

 独立後は国内の抗争が続き、またHIVウィルスによる後天性免疫不全症候群の蔓延の影響で、2015年の平均寿命は世界194ヵ国中193位の50歳 (少し前は35歳であった)、人口は一時200万人を割るほど減少が続いた(現在は少し回復)。1人当たりGDPは1302ドルと隣の南アフリカの 1/10の状態で発展の見られない国であ る。

 この国の放送は、独立前の1963年に首都MaseruよりRadio Station ZRE41が3824kHz(100W)にて短波送信を開始した時に始まる。 この放送は独立時にはカトリック系のRadio Station ZNF4V(その後7PA22に変更、1970年まで存在)となり、国営のRadio Lesothoが一時借用していた。その後中波の899kHz、1196kHz(何れも2kW、1196kHzは後に660Wに減力)の送信機が整備され たため一時Radio Lesothoは短波の使用を中止した。独立後の翌年である1967年にはLance's Gap短波送信所の建設に着手し、Marconi社製の10kW短波送信機BD268を設置して1970年頃(周波数は4800kHz)より全国で放送が 聞こえるようにした。それでもまだ受信困難なDX局であったが、1979年英国BBCがLance's Gap短波送信所にContinental社製100kW短波送信機418D-1を一挙に3基導入しここをBBC Lesotho中継局として運用を開始した。この時BBCは2基を中継用に使用し、もう1基はLesotho National Broadcasting Service(LNBS)の国内向放送用に使用されることになった。最新の設備からの100kW送信の電波は非常に良く届き(周波数は 4800kHz、05:30終了)同局はロッドアンテナを伸ばせば受信出来る朝の常連アフリカ局となった。折からのBCLブームと重なり入門アフリカ局と しても知られるようになった。当時LNBCは世界各国からの受信報告に気を良くして、50kW送信機をもう1基購入して国際放送を実施する計画だったと言われるが実現しなかった。

 60mbは現在でも夏の早朝はアフリカ方面に開いているが、折角電波は伝わるのに送信しているアフリカ局がほとんどなくなってし まい閑散としている状態は残念である。

 BBC Lesotho中継は1996年に廃止(南アフリカに新設されたSENTECH社のMeyerton送信所に代替)となり、2基の100kW送信機は撤去 された。残った1基がLNBSに引き継がれた。LNBSはそれを使用して以後も短波放送を継続していたが老朽化で徐々に出力が下がり、2002年初めに故 障・停波した。局では代替部品を発注中としていたが、結局短波送信は休止状態のままとなり、代わりにFM放送化が進められた。Lance's Gap送信所の設備は現存するが事実上短波放送の復活は厳しい状況である。

 外国のリスナーには比較的親切な局であり、IRC同封の受信報告にはQSLカードが発行された。QSLカードは同国の旗を描いたものである。1984年 に取得したカードを掲載する。同国は本来王国であるが、政変が続き、独立後国旗が2回変更されている。掲載のカードの描かれた国旗は1966年の独立から 1987年まで使用されていたもので、青地に描かれているのソト族のかぶる帽子である。帽子の白色を含めて4色の色が使われており、緑は国土、赤は誠実、 青は空・雨、白は平和を表す。クーデターにより代わった政権により1987年にはデザインが変更され、白色の地に茶色で帽子の先端・槍・棍棒を描いた戦闘 的なデザイ ンとなった。これはQSLカードにも即時に反映され同年以降のQSLカードにはこのデザインの旗が描かれている。1993年には軍政から民政に移管したも のの国旗はそのままであったが、2006年の独立40周年をを迎えデザイン変更が行われて現在の国旗(縦に青・白・緑、中央に黒色でソト族の帽子)となっ た。但し短波放送が行われていないことからこの国旗をデザインしたQSLカードはまだ発行されていない。

 現在LNBCの放送は国内各地のFM中継所(1~5kW程度)から行われている他、第一放送に当たる「Radio Lesotho」が中波639kHz(100kW)、第二放送に当たる「Ultimate Radio」(2006年開始)が中波891、1197kHz(各50kW)で行われている。中波送信機は短波と同じLance's Gap送信所にある。南アフリカを訪れる機会のある方は受信を試みると良いであろう。

 受信報告の宛先: P.O.Box 522, Maseru 100, Lesotho
                          または Lerotholi street, opposite King’s palace, Maseru, Lesotho

  FAX:  +266 22323808

  URL:  http://www.lnbs.org.ls








(左)1984年発行のQSLカード表面 独立当初からのレソト国旗(三色+白色の帽子)が描かれている 副名として「Voice of Lesotho」の名称もある  大きさ 152×102mm
(右)同裏面 出力が10kWから100kWに訂正されているので1970年代から使われてきたカードであることがわかる 送信所・住所・中波の周波数も 現在と同じである 切手に描かれている蝶はヒメアカタテハ レソトは1000m程度の高原で蝶の宝庫である 切手右上の人物は独立後の初代国王モショエショエ2世

 



(左)1989年のQSLカード国旗が変更されている 白色(平和)、水色(雨)、緑(繁栄)の三色にソト族の帽子の先端・槍・棍棒のデザイン
(中)2006年以降の国旗 独立当時の国旗に近くなった この国旗がデザインされたQSLカードは発行されていない

(右)ソト族の帽子
         



(左)現在のRadio Lesothoのロゴ 送信塔に槍!
(中)2006年開始のUltimate Radioのロゴ
(右)2015年現在のラジオ送信所配置図 Ultimate Radioの送信所はまだ少なく首都Maseru付近のみである (何れも同局のHPより)

      

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