Transnistria Radiotelecenter (モルドバ)
Приднестровский Радиотелецентр

 一般に「モルドバ送信所」、「Grigoriopol送信所」(Grigoriopolはこの地方の主都)とも呼ばれるモルドバの大短波送信所を管理するロシアの会社である。実際の送信所はモルドバとウクライナの境にある沿ドニエストル地域のMaiac(ロシア語ではМаяк:灯台)にある。モルドバの一部であるが、後述のようにモルドバ政府の支配が及んでいない地域である。

 この送信所はソ連時代の1968-1975年に対外宣伝の一大拠点として建設された。1986-87年には更なる強化が行われモスクワ放送や在外ロシア 人向「祖国の声」放送の南北アメリカ・欧州西部・アフリカ向送信に活用された。ソ連末期の1990年時点では950haの広大な敷地に高さ60-160m の短波用アンテナ4基、中波用350/250mアンテナ、短波送信機20基、220名の従業員を要する巨大な送信拠点となり、1ヵ月の電力消費量が 1000万kWと湯水のようにエネルギーを使っていた。また現在も使用されている回転式短波アンテナは1基で世界のどの地域にもビームを向けることが出来 る優れものである。当時のソ連ではプロパガンダが最優先であったことが分かる。

  1991年にソ連が崩壊した後モルドバは独立国となったが、18世紀から移り住んだロシア人が多い沿ドニエストル地域 (Transnistria)はモルドバからの分離とロシアへの編入を求めた。そして1992年には独立戦争を起こして多数の死傷者を出した。モルドバ独 立後この送信所はモルドバ政府の管理下に入り国営Teleradio Moldovaの国内向放送やRadio Moldovaの海外放送に一時使用されたが、1992年の独立戦争以降はモルドバ政府はこの地域を支配しなくなった(「沿
ドニエストル共和国」と称している、ロシア編入をロシア政府に求めている) ために、同年で中止されRadio Moldovaは隣国ルーマニアの送信所から送信せざるを得なくなった(その後2004年に廃止された)。

 20基あった短波送信機は現在5基が運用されているが、すべて1974~76年旧ソ連のコミテルン工場(在St.Petersburg、現在RIMR:Россий Инстнтут Мощного Радиостроения)製造のRV(РВ) シリーズの500kW送信機(RV-938/939/941/942/943各1基)でかなり老朽化している筈である。また1997年には大寒波でアンテ ナに付着した氷の重さで中波用の350m及び250mの送信鉄塔が相次いで倒壊するという大事故に見舞われている。Grigoriopol送信所からの大 電力中波放送もかっては欧州に行けば数波が普通に受信出来たが、2016年現在は621kHz(150kW)の国内向放送のみである。

 沿ドニエストル地域が半独立状態になった後は独自の海外放送Radio PMRがこの送信所から放送され日本でも受信されたが、2013年8月に廃止された。その後は主としてVoice of Russiaの送信所として使われていたが、ロシアが短波放送を全廃した2014年4月以降は秘密放送等の中継ビジネスで送信所を維持している。

 日本ではクルド向秘密放送Denge Kurdistan(本拠地ベルギー)の中継送信が比較的受信しやすい。Denge Kurdistanの送信はこのところ冬期9400kHz、夏期11600kHzと分り易い周波数で行われているが、同一周波数で送信所が瞬時に切替わるので、送信スケジュールに注意しながら受信する必要がある。

 この送信所からの送信に対する受信報告にはQSLが発行されている。この地域にはモルドバ経由で郵便は届く筈だが実際には困難であるらしく、E-mailに よる受信報告にeQSLが発行される。言語は英語で良い。eQSLには送信所の写真が使用されているが、同時期に発行されたものでもいくつかのパターンがある。

 受信報告の宛先: ul. Mira 19, MD-4006,Maiac, Moldova 
 E-mail:  prtc @ idknet.com
 電話: +373  210 66315


(左) 2015年2月 Denge Kurdisutanの受信に対して発行されたeQSL 左下部にSergey氏のサインがある
(右) 発行者のSergey Omelchenko氏(Technical Director)より同時に送られた来たメール

 
(左)回転式アンテナ -  現在は欧州東部向送信に使用  (
沿ドニエストル共和国State Customs CommitteeのHPより)
(右)遠方から望んだ短波ビームアンテナ群 (同上)
  

(左)放熱ケースに入った送信管 ロシア製のスペアは多数保有されている模様 
沿ドニエストル共和国State Customs CommitteeのHPより)
(右)送信棟の建物 (同上)
    



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