Madagascar World Voice (マダガスカル)


 「最後の大型短波局」と言われたMadagascar World Voice(MWV)が漸く2016年3月28日より短波放送を開始した。この局を運営するのは米国のキリスト教団体World Christian Broadcasting(WCB)である。同団体は短波放送によるキリスト教の伝道を目指して1976年に創立され、まずアラスカのAnchor PointにKNLS局を設立、1983年より短波放送を開始した。アラスカの地からの電波では全世界のカバーが難しいために更なる送信拠点を模索し、2006年よりマダガスカルMahajangaの近郊に送信拠点の建設を開始した。マダガスカルには当時Radio Netherlandsの中継局もあり全世界を効率良くカバーするには適したロケーションであることが証明されていた。2008年頃には送信棟やアンテナの基礎が完成し、2010年に3台の短波送信機を搬入して、同年末に本放送を開始する予定であった。

 しかし同国では2009年にクーデターが起き、クーデターで出来たAndry Nirina Rajoelma政権は同局に送信免許を与えることを渋った。そのため米国テキサス州の港で船積み状態にあった3基Continental社製100kW 短波送信機はマダガスカルに向けて出航することができず、本放送の開始は年々先送りとなった。2014年に政権が変って漸く正式送信許可が下り、建設開始 以来実に10年振りに本放送が実施されるに至った。その辺の困難と悔しさが「ローマの信徒への手紙」の文言を借りてQSLカードの文面にも反映されている。設置された送信機はContinental 418Gで、出力は25-100kW間可変、周波数は 3.9-22MHz間可変、DRM送信もできるという優れた性能を有している。

  短波放送はロシア、中東、南米、アフリカ、中国向だが、大半の番組はテネシー州のWCBスタジオで制作された、KNLSと共通に送信されているものである。但 し「African Pathways Radio」と称する特にアフリカ向に制作された番組が1日2時間送信されている。

 日本で受信しやすいのは朝の中国向中国語放送である。この番組は従来からKNLSで行われてきている中国語番組と同内容である。中国は広大であるためKNLS(主として中国北部・極東向)ではカバー仕切れない中国南部・東南アジアをカバーすることが目的となっている。

 送信所のある
Mahajangaはフランス領時代Majungaと呼ばれた、マダガスカル北西部に位置する港町で、人口は約22万人、一年中平均気温が30度C以上という熱帯の地である。送信所はこの町の中心部から約10km内陸の国道4号線沿いにある。

 同局の短波放送に対する姿勢は明確で「短波放送こそ必死に助けを求めている世界の人々にイエスキリストの教えを広める最良の手段である。だから我々は媒 体として短波を使う。放送を出せば世界中の人々が聞いているのだ。」としている。同局に限らず米国の宗教局では短波活用の動きが盛んであるし、FCCにも 多くの宗教団体から短波放送免許の申請が出ている。短波を「時代遅れのメディア」として見限ってしまった英国系宗教局と対照的である。国土の広さの差がこ の感覚に影響を与えているのも知れない。広大な地域の場合、FM放送や携帯電話では点しかカバーできず、面をカバーするには短波放送が必須である。

  同局のQTHとしてWRTH2016には7éme etage, 101 Antananarivo, Madagascarと記載されているが、現地建設連絡事務所のようなものらしく、受信報告は米国の本部に送った方が良い。言語別にセクションが分かれて いるので、そこの担当者に送るのが最適である。中国語放送の場合は中国語放送のMWV専用E-mailアドレスがあったため、そちらにE-mailで受信報告を送ったところ中国語放送のSenior ProducerのEdward Short(中国名 謝徳華)氏より2週間後に手紙とQSLカードが送られて来た。氏は過去3回日本を訪れたことがあり、その時覚えた「義」(人として正しく生きること)という漢字を自分の息子さんの名前に使ったという。


 受信報告の宛先: 605 Bradley Court, Franklin, TN 37067, U.S.A.

 E-mail:  mwvradio @ gmail.com (中国語放送の場合)

 URL:  http://www.worldchristian.org/ (KNLSと共通)


(左)MWVのQSLカード表面 マダガスカルの代表的樹木バオバブAdansonia grandidieri の木 右下には新約聖書「ローマの信徒への手紙12:12」の言葉「希望を持って喜び、苦難を耐え忍び、たゆまず祈りなさい」---カードに記載されている「Romans 12:21」の内容は「悪に負けることなく、善をもって悪に勝ちなさい」なのだが、本当はこちらを言いたかったところをぐっと押さえて開局時の苦労を表現したとも思われる! 大きさ152×102mm
(右)同 裏面 発行者はSenior ProducerのEdward Short氏、「謝徳」の署名もある

  



(左)Mahanja送信所の入口、「MWV」の文字が見える、背後には4基の鉄塔が (WCBのHPより)
(右)Continental社製418G 100kW送信機 (Continental社のHPより)

     

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