KNLS International (U.S.A.)
  
 米国テネシー州Franklinに本部を置くキリスト教伝道放送団体World Christian Broadcastingが(WCB)運営するキリスト教伝道放送局である。米国局では唯一アラスカから短波放送を行っている。WCBは1976年7月に 米国内でキリスト教伝道を世界中に行うために設立された放送団体である。その後設立者達は短波放送を行うための土地や設備の選定、調達に奔走することにな る。ところがアラスカで送信所用地調達を行っていた設立者のLowell Perry氏とKen Fargesson氏が翌年航空機事故で急逝するという不幸に見舞われた。それでもアラスカのAnchor Pointに28haの土地を取得し1980年より原野を切り開いて送信所を建設していたが、今度は建設途中の送信棟が火災で全焼するという不幸に見舞わ れた。まさに旧約聖書のヨブ記に見られる「義人の苦難」そのものであるが、元々キリスト教徒であるためこれらを乗り越えついに1983年7月23日に、 Technology International社製ダイポール・カーテンアンテナ(2面、一辺120m)とHarris社製SW-100A 100kW短波送信機を備えたAnchor Point短波送信所より「短波送信を開始した。

 送信所のあるAnchor Pointはアラスカの州都Anchorageの南方180km、ケナイ半島の突端に近い人口約2千人の海辺の町で、1787年の夏キャプテン・クックの船が停泊中速い潮の流れで錨を流されてしまったためにこの名称がある。

 極寒の地(北緯60度)にあるため冬には自動車1台分の重さに相当する氷雪がアンテナに付着してしまうため、氷雪の重さとバランスをとって倒壊を防止す る特別の仕組みが組み込まれている。このような不便な地域に短波送信所を立地した理由は、ターゲットが当時のソ連と中国であったためである。当時レーガン 政権が「悪の帝国」として徹底的に敵視 していたソ連(KNLSが送信開始した直後の1983年9月には大韓航空機撃墜事件を起こしている)では共産主義体制の元キリスト教が弾圧されていた。当 時の推計でソ連に1億2千万台、同じ共産主義体制をとる中国には6000千万台の短波受信機があるとされていたため、これらの地域に短波で伝道放送を行う 事が非常に効果的であると考えられたのである。下図に示した当時の送信エリアマップの通り、2面のアンテナの切換でソ連、中国全土を効率的にカバーでき る。

  当時から現在に至るまで、KNLS Internationalからの放送はロシア語(ロシア向、名称はНовая жизнь)、中国語(中国・東南アジア向、名称は生命之光廣播電台)、英語(日本、東南アジア、南アジア向)のみである。僻地の送信所を効率的に運用するために1992年には米国で制作された放送番組を自動的に送信所に送出するシステムが稼働した。また2003年には新たに Continental社製100kW送信機 418Fも追加されて今日に至っている。

 同局の放送は非キリスト教徒にも分かりやすいと定評がある。1991年、「悪の帝国」が崩壊した後ロシアになるまでのソ連ではKNLSのロシア語放送を国営第一放送で中継したいたという。日本では英語放送が良好に受信出来る。

 WCBはその後世界各地向の放送を目指し、今年(2016年)3月末からはMadagascarに設立された新たな送信所Madagascar World Voiceから他の地域向の放送も開始し、文字通り世界全体に向けて放送を行っている。

 QSLは放送開始直後1983年に取得したものと、2016年に取得したものである。



 受信報告の宛先: P.O.Box 473, Anchor Point, AK 99556, U.S.A.

  E-mail: knls @ aol.com

  URL:  英語 http://www.knls.org
              ロシア語 http://www.knls.net
              中国語 http://www.smzg.org



(左)開局当初1983年のレター形式のQSL アンテナ利得や方向も記入されている 時刻のGMTが懐かしい 発行者は当時の技術責任者で上述のアンテナ氷雪対策を生み出したFrancis M.Perry氏  大きさ 152✕101mm
(右)同時に送られてきた送信パターン図、現在も原則としては変わっていない

  


(左)2016年に送られてきたQSLカード表面 英語・ロシア語・中国語による局名に送信所の写真 大きさ
(右)同裏面 裏面もカーテンアンテナの写真 送信方向や送信角度の欄はあるが記入されていない サインもない

  


(左)送信塔の入口にあるKNLSの文字板 (中)送信棟全景 (右)カーテンアンテナ (同局のHGPより)
     



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