Shortwaveservice (ドイツ)
将来がないと言われていた短波界に、新しいビジネスモデルでニューフェースとして登場したのがドイツの
Shortwaveserviceで
ある。ドイツ西部、オランダとベルギーに接するノルトライン・ヴァストファーレン(Nordrhein-Westfalen)州Eifelに
在住していた Christian
Milling氏(現社長)は度重なる大出力送信所の閉鎖に危機感を抱き、仲間の短波ファンとともにドイツ政府に対して短波局免許を申請していたが、なか
なか認められなかった。ところが2007年に当時6005kHzを使用していたDeuscheland
RadioのBerlin-Pritz送信所が火災で焼失して6005kHzの免許が失効したため、空き周波数となった6005kHzが割り当てられるこ
とになった。そこでMilling氏らが立ち上げたのが送信・仲介を行う会社Shortwaveserviceである。
Milling氏らはインターネットで適切な空き送信所を検索したところ、送信機メーカーRohde
Schwalz社の管理するKall-Krekel送信所がEifel近郊(約40km)にあることを発見、交渉の上使用できることになった。この
Kall-Krekel送信所は1965年に警察の情報交換用短波送信所として建設されたもので、1990年代半ばまで使用された後空き
状態 となっていた。
2007年~2008年にMedia Broadcast社の送信所より3回の試験送信を行った後2008年よりKall
Krekel送信所から6005k(1kW)にて送信を開始した。最初に送信したのは「Radio700」の番組であった。
Kall Krekel送信所には1960年代製のRhode
Schwartz社製短波送信機6基(1kW×5+600W×1)と各方面向のビームアンテナが設置されている。送信需要の増加に伴い31/41
/75mbの波も追加され、現在は6005/7310/6085/3985kHzで送信を行っている。
アマチュア無線局並のQRP設備であるため維持費や運用費が安くつくため、送信費用が大出力送信所に比較して割安となっている。そのた
め現 在ではRadio Mi Amigo(スペイン)のような「面白放送局」の他に、Voice of
Mongolia等の国営の海外向放送までがユーザーとなっている。特筆すべきは自国の設備からの海外向放送を廃止したRadio
Slovakia International、Radio Canada International、Polskie
Radio、Radio Bulgaria、Radio
BelarusがKall-Krekel送信所から短波放送を再開していることである。海外向短波放送の廃止は「短波が遅れた技術である」、「放送の意義
がなくなった」、「リスナーがいなくなった」からではなく単にカネの問題であったことがよくわかる。
残念ながらKall
Krekel送信所からの短波放送は出力わずか1kWであるため欧州以外では受信が難しい。そこでアジア・太平洋方面でも受信できるように2016年より
はアルメニアのGavar送信所からも定期送信を行うようになった。さらに2017年1月にはタジキスタンのDushanbe送信所から
も試 験送信を行った。今後アジア向送信の拡大が期待される。同局によるとドイツのRadio. Menschen &
Geschichtenの中継を2017年3月6日よりGavar送信所より04:00-05:00
6145kHz、Dushanbe送信所より03:00-04:00 7465kHzで欧州向に開始したそうである。
掲載のQSLカードは1月22日の21:00より9900kHzにてDushanbeから行われたアジア向試験放送に対するもので、 E-
mailによる受信報告に対して34日後に届いたものである。
国営の大規模短波放送が国家予算の関係で縮小・廃止されて行くのは時代の流れかも知れないが、短波を聞きたい人、短波で放送したい団体
や個人は沢山ある(要するにシーズもニーズの存在する)。また国家が短波を利権として重視しなくなったため民間に短波の免許が下り易く
なってい る。今後短波界にこの種の局が増加することが予想されるので楽しみなことだ。
受信報告の宛先: Kuchenheimer Straße 155, 53881 Euskirchen, Germany
E-mail: info @ shortwaveservice.com
URL: http://www.shortwaveservice.com (ドイツ語)
(左) 2017年1月22日のDushanbe送信所からの試験送信に対して発行されたQSLカード 表 Kall
Krekel送信所のビームアンテナと鳥(この地方で良く見られる鷹の仲間姫灰色沢鵟【チョ
ウヒ】らしい)の木像 下 には局のロゴ 大きさ 97×210mm
(右)同裏面 発行者(多分Christian Milling氏)の署名はないが、ゴムの局印が押されている
(左)Kall Krekel送信所のRhode Schwaltz製SK-1型短波送信機群
(中)同送信所の垂直アンテナ
(右)VOA Capで計算した6005kHzの伝搬パターン図 ほぼ欧州全域+北アフリカをカバーできる
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